授業時数配分の弾力化 教育実践の調査を踏まえて(工藤文三)

教育新聞論説委員 工藤 文三

中教審が打ち出した授業時数配分の弾力化

10月7日に示された中教審初等中等教育分科会の中間まとめ「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~すべての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現」では、カリキュラム・マネジメントに関わる学校裁量幅拡大の一環として、次の提言を行った。

総枠としての授業時数を確保した上で、教科等横断的な視点に立った資質・能力の育成や探究的な学習の充実等に資するよう、カリキュラム・マネジメントに係る学校裁量幅の拡大の一環として、教科等ごとの授業時数の配分について一定の弾力化が可能となる制度を設けるべきとしている。

この提言のポイントは、学校教育法施行規則で定めている教科等ごとに定めている標準時数の配分の弾力化を図るという点にある。

その狙いは、教科等横断的な視点に立った資質・能力の育成や探究的な学習の充実等のためのカリキュラム・マネジメントにある。

ここで教科等ごとの授業時数の配分の弾力化とは、教科等ごとに定めている標準時数を上回ったり、下回ったりすることを許容するという意味と考えられる。ただ、標準時数を上回って時数を配分することは、現在でも一定程度実施されていることから、ここでの提言は、下回ることを可能にするとの趣旨とも考えられる。すなわち、教科等横断的な視点に立った資質・能力の育成や探究的な学習の充実等のために、ある教科等の時数を削減し、当該教科等の時数に振り向けるとの意味と解される。

標準時数を設定する意味と運用

総則の解説では次のように授業時数について説明している。

「別表第1に定めている授業時数は、学習指導要領で示している各教科等の内容を指導するのに要する時数を基礎とし、学校運営の実態などの条件も十分考慮しながら定めたものであり」としている。小・中学校の場合、学習指導要領に示す事項は、いずれの学校においても取り扱うことが前提となっている。

その上で、標準時数は、「各教科等の内容を指導するのに要する時数」を基礎として計算したことを示している。また、総則の解説には、学習指導要領の狙いが十分実現されていないと判断される場合には、「標準を上回る適切な指導時間を確保」することを明記している。

各学校の授業時数の実績値(2017年度)を見ると、小学校第5学年では、年間総授業時数は平均値で1040.2単位時間となっており、標準時数980単位時間を60単位時間上回っている。各教科等の時数の実績の平均を見ても、標準時数を上回っている(18年度公立小・中学校等における教育課程の編成・実施状況調査)。このように総則の解説の記載からも、各学校の授業時数の実績から見ても、標準を上回る時数確保は一定程度可能であることが分かる。

新課程の取り組み状況を踏まえた調査が必要

今回弾力化の理由とされている教科等横断的な視点に立った教育課程の編成や探究的な学習の充実は、取り組みが開始されたばかりの内容である。この二つの取り組みを進める上で、教科等ごとの標準時数の枠がどの程度制約になっているかは、実践的にはいまだ検証されていない。少なくとも一定期間の教育実践を踏まえ、授業時数との関係を調査した後に提言すべき事柄であると考える。

また、カリキュラム・マネジメントには、前記の二つの取り組みだけではなく、学力の定着と向上等も含まれることを忘れてはならない。
翻って考えると、今回の提言は学習指導要領の改訂作業において、教科等横断的な視点に立った資質・能力の育成やカリキュラム・マネジメントについて書き込む際に、授業時数との関連についての検討が十分でなかったことを意味しているとも受け取れる。

一方、ICTを活用した教育という新しい状況への対応を説明理由とするとしても、上記二つの取り組みとICT教育との関連を精査することが必要である。

いずれにしても新課程の実施は始まったばかりであり、上記二つの取り組みやカリキュラム・マネジメントの状況を十分調査した上で検討していくことが適当と考える。


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