コロナ第3波 「ノー・ブレーム・カルチャー」が必要だ(中原淳)

立教大学教授 中原 淳

コロナ禍は感染拡大の「第3波」が到来し、ますます先の見通せない状況に陥っている。こういう不確実な状況に置かれたときに、課題となるのはリーダーシップだ。事態にうまく対応して、企業で言えば成果を挙げる、学校で言えば学びを止めずにアップデートできる。その成否は、ほとんど人と組織の問題にかかってくる。

世界的な経営コンサルタントのラム・チャランは、危機を乗り越えるためにリーダーが必要とする資質として、以下の6点を挙げている。(1)誠実であり、信頼できること(2)メンバーを鼓舞し、勇気づけられること(3)現実とリアルな情報でつながっていること(4)楽観的な現実主義者であること(5)徹底的に細部まで踏み込むこと(6)未来に打って出る勇気をもつこと–。教育現場でのこれまでのコロナ対策を振り返ってみて、このうちの(3)(4)(6)に課題がみられたところが多いように感じている。

どうして悲観的になったり勇気を持てなかったりするかというと、答えがないからだ。こうやればいい、こういう時はこういうふうにするべき、といった前例もない。組織として自ら答えを作り出さなければならない。そういう場合、リーダーには、何を目指していくか、旗をどこに立てるかを示して、みんなを引っ張っていく役割が求められる。ただ、ここの山に登ると決めてそこに向かっても、その山で本当に良かったのかどうかは分からない。答えがないとはそういうことを意味している。こういう状況下では、その時々の状況に応じて、良き場所、良きものを目指していくほかはない。一歩一歩は小さくていい。旗を少しでも前に立てられるかどうかで成果は大きく変わってくる。

リーダーが全てのことに精通している必要はない。学校でいうなら、校長や副校長が、IT技術やオンライン授業のことを知り尽くしていなくてもいい。リーダーの仕事は、メンバーの得意不得意を見極めて、うまく組み合わせて組織が前に進むようにすることにある。例えばオンライン授業なら、ITに強い若い先生と、その先生を支えてくれそうな中堅の先生でチームを組ませて、権限を委譲してしまえばいい。

困るのは、決断できない人がリーダーの座にある場合だろう。また、全てを見通さなければ動かない計画主義にとらわれる人も、緊急時のリーダーとしては厳しい。なぜなら、文科省や教育委員会であっても、「答え」が分からないのである。だから、「それぞれの学校や地域に応じて、前例にとらわれず、やるべきことをやってください」と言っている。不確実な状況であればあるほど、現場で物事を前に進めていくほかない。覚悟を決めるしかない。今ある状況の中から、できることを前に進めるほかはないのだ。

逆にこういう時だからこそ、いままでやりたくてもやれなかったことや、いまだからやれることを、どんどん実験するのが正しいのではないか。コロナ禍の対応について企業の話を聞いていると、二つに分かれているように感じる。後追い後追いでコロナ禍になんとか対応していくことが仕事になっている人事や経営も少なくない一方で、どさくさに紛れて何でもやっちゃえみたいな気風の会社もある。コロナを理由にしたら役員会だって通っちゃうし、と実験的なことに取り組んでいたりする。厄災を前向きに捉えられるかどうか、態度の違いはいずれ結果として現れてくるだろう。教育のIT化に関しても、答えは誰も持っていないのだから、学校でもどんどん実験していけばいい。小さな実験の繰り返しが、明日のスタンダードを作っていくのだ。

ひとつ、声を大にして言っておきたいことがある。教育現場でも感染者が出ているが、気に掛かるのは、感染に対する集団的な圧力だ。教育関係者の中にも「感染者が出たらうちの学校は終わり」といったプレッシャーを感じている人が少なくない。しかし、対面で授業をするということは、すなわち感染リスクを負うということ。感染者が出る可能性は最初から想定されるべきなのだ。

もちろん感染者が出ないように対策はしっかりしなければならない。でも、やるべきことをやっても出てしまった時には責任は問わない。それをあらかじめ了解しておかなければ、物事は前に進まない。誰も好きで感染するわけではない。消毒は十分だったかとか、配慮は足りていたかとか、事実関係のチェックは必要だが、感染自体を責められると何もできなくなってしまう。

コロナ感染に関しては、叱らない、責めない。「ノー・ブレーム・カルチャー(No-blame culture)」を共通認識にしないといけない。日本では、感染者が出てしまったことを個人的な責任と考えがちだし、感染者を忌避したり排除したりする傾向が極めて強い。これは非常に危険だ。掛け違ってしまっている。うつったら責められるとなったら隠したくなる。例えば、子供が感染した疑いがあっても、隠したまま学校に行かせるかもしれない。特にこれからの季節、風邪などでくしゃみをしたり咳をしたりする人も増える。感染者を責めるカルチャーの怖さを理解してほしい。誰も責めてはいけない。


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