2021年 学校教育の再構築に「答え」が求められる年(藤川大祐)

千葉大学教育学部教授 藤川 大祐

コロナ禍が学校教育の在り方を問い直す

2020年の学校は、新型コロナ禍において、長期休業や感染防止対策に翻弄された一年であった。本来は、小学校で新学習指導要領が施行され、英語の教科化やプログラミング教育の導入といった新しい動きが話題を集めたはずであった。東京オリンピック・パラリンピックが行われるとともに訪日外国人がさらに増え、改めてスポーツ、多文化共生、社会的包摂といったテーマが注目され、こうした社会にふさわしい教育の在り方が問われたかもしれなかった。また、いじめ防止対策推進法の改正など、被害に苦しむ子供を守る策がこれまで以上に進むことも期待されていた。だが、このような筋書きは新型コロナ禍によって全て消されてしまった。

新型コロナ禍が突き付けたのは、これまでの学校教育の在り方を問い直すことであった。長期休業になってもオンライン教育が進められないデジタル化の遅れや、「密」を避けがたい学級人数の多さが突き付けられ、1人1台端末と高速ネットワークを配備する「GIGAスクール構想」が前倒しされたり、少人数学級の導入が議論されたりすることとなっている。学校行事や教員の会議・出張などを削減せざるを得なくなり、これまで慣行でなされてきた取り組みの見直しが迫られた。

20年は学校教育がこれまでの在り方の問い直しを迫られた年とすると、21年は問い直しへの答えを出すことが求められる年となろう。特に、以下の点に注目したい。

少人数学級の導入と「働き方改革」の前進

日本の学校において、教員の労働時間が異常に長いことや学級の人数が多いことは深刻な問題である。教員の仕事が「ブラック」であるというイメージは広く浸透してしまい、他の仕事が選びやすい都市部を中心に、教員養成系大学・学部の志願者の減少や教員採用試験の受験者の減少が進んでいる。小学校教員採用試験の倍率が2倍前後となる地域もあり、このまま教員離れが進めば募集人員の確保すらおぼつかない状況である。これまで給特法による「働かせ放題」の条件下で、大人数の子供について一人一人を丁寧に指導することを求めるなどの無理な要求が教員に課せられてきたが、このような無理が続くはずはない。まず行うべきは、教員の業務量を適正化し、必要な時間外労働には相応の報酬が支払われるようにすることである。

この意味で、少人数学級の導入は急務である。最大40人の子供たちに対して、授業をはじめ生徒指導面や教育相談面に関してきめ細かい指導をするのは無理がある。他の先進国並みに学級人数を縮小することが必要であるのは明白だ。

部活動指導の業務としての位置付けがまだまだ曖昧であることについても、早急に改善が必要である。部活動指導員の採用など、すでに改革の議論は進んでいるものの、まだ課題は大きい。部活動指導も含め、教員が勤務時間内で対応できるよう業務量を縮減する必要がある。

そして、学習指導員やスクール・サポート・スタッフといった教員以外のスタッフを増員するとともに、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーといった専門職員を常勤化したりスクールロイヤーを配置したりして、教員ばかりが課題を抱え込まないようにすることが必要だ。

さらに、NPO法人ティーチ・フォー・ジャパンが取り組んでいるように、優秀な学生や社会人などが研修を受けた上で、1年から数年に限り、課題を抱える学校で教員として勤務できるフェローシップ・プログラムについて、臨時免許状による対応を柔軟化するなどして推進を図ってはどうか。こうした取り組みによって、教育に意欲と関心のある多様な人材が学校現場に関わることができ、教員の質と量の不足を補えるようにすることが期待できる。

デジタル化に対応した学習指導要領一部改訂

「GIGAスクール構想」で小中学校に1人1台端末と高速ネットワークが配備されたとしても、学習指導要領はこの環境に対応しておらず、学習においてコンピューターの活用が求められる場面はほとんどない。コロナ禍で疲弊した学校現場で、特段求められてもいないコンピューター活動が進むとは考えにくい。このままではせっかくのデジタル環境が無駄になってしまう。

文科省は早急に、どの教科のどの内容でコンピューターを使用する必要があるかを検討し、学習指導要領を一部改訂してコンピューターの活用を学校に強く求めるべきである。また、ICT支援員の配置を強力に進め、教員が負担なくコンピューターを活用した授業に取り組めるようにすべきだ。こうした対応がなされなければ、「GIGAスクール構想」は壮大な予算の無駄遣いとして後世に汚点を残すことになるだろう。

いじめ等防止対策の抜本的改善

13年にいじめ防止対策推進法が施行されて以降、同法に従っていじめ防止対策が進んでいるものの、いじめの認知件数が増えるばかりで、有効にいじめ防止がなされているのか否かを評価する指標がない。また、教育委員会のいじめ対応に法令違反があっても、そうした教育委員会に対応を是正させることができていない。

また、「教員によるいじめ」とでも言うべき不適切な指導が問題になることが多いが、児童生徒間のいじめと異なり教員に指導によって深刻な被害が生じても、事実解明のための調査を行うことについて法的な定めがないため、調査がなかなか始まらないことがある。

いじめ防止対策推進法の改正が話題になってから数年が経過しているが、いまだ改正には至っておらず、21年にこそ必要な法改正や新たな法律の制定が求められる。特に、以下の点での改正に期待したい。

▽広すぎる「いじめ」の定義を修正して、他の児童などから苦痛を与えられ、その場で苦痛の解消が確認できていない事案を「いじめ」とする。そして、「他の児童等から苦痛を与えられた件数」と「(新たな定義での)いじめの件数」とを分けて確認し、後者をいじめの広がりを評価する指標とする。

▽教職員が児童などに苦痛を与えたことが確認される事案を「教職員によるいじめ」とし、一定の条件を満たした場合に調査を義務づけるなど、必要な対応策を法に明記する。

▽教育委員会や学校のいじめ対応において法令違反がある場合、被害者が文科省に通報し、文科省が教育委員会などに是正を指示できる制度を設ける。


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