GIGAの山を登る 問われる管理職の資質・能力(松田孝)

合同会社MAZDA Incredible Lab CEO・東京都小金井市立前原小学校前校長 松田 孝

いざ、Mt.GIGAへAttack

いよいよGIGAスクール構想が、その実現に向けて動き出した。

前人未到のMt.GIGAの頂を目指して、全国の自治体、学校はほぼそのAttack準備を終え、今まさにその登頂ルートを選定し始めている。

この時、多くのメディアはAttack隊のメンバーである現場教員のICTリテラシーとスキル不足を指摘する。また筆者がGIGAスクール構想の実現に向けて話をする際にも、主催者からは「教員の不安を払拭(ふっしょく)して、できるところからその活用を始められるよう話をしてほしい」と依頼される。

Attack隊の不安はリーダーの不安

果たしてAttack隊のメンバーは、全員が不安なのではない。筆者が各自治体の推進リーダーと話をすれば、皆知識と技能を持ち合わせ活用に向けての意欲にあふれている。1994年を起点とすればその年に生まれた子供は現在27歳、その時小学校へ入学した子供は33歳で、現在45歳であれば大学に入学した年となる。

起点とした1994年は、ダイヤルアップによるIP接続によって一般家庭からインターネットに接続可能となった年である。十把ひとからげでAttack隊メンバーの技術や意欲を評価するのはやめよう。およそ40歳前後を境にしてAttack隊メンバーのICT活用の技術や意欲は大きく違う。

生まれた時から、小中学生のうちからインターネットが当たり前の世代は、Mt.GIGAのAttackに極めて意欲的だ。しかし40歳代後半から50歳代にかけて学校運営の中核を担う世代の不安は大きい。リーダーである管理職も同様で、自身の不安を年配メンバーの不安にかぶせて話をしているのだ。

ツール論による登頂ルート

Attack隊のリーダーである管理職が不安であれば、自身が安心できるルートを選定するのは当然の成り行きだ。

ICTをツールとして捉え、「必要なときに適切に活用する」という考え方をもとに拓(ひら)かれたルートは、従来のアナログ環境下で高度に築き上げられた教科教育研究による指導方法が前提となっている。戦後日本を復興、発展、繁栄へと導いた、その土台となった学校における授業は、完成度が高く完結性を有している。だからその指導法においてICTが「必要なとき」は原則生じない。

資料を拡大して提示することは、視覚情報を適切に活用して子供たちの理解を促すのに有効な手だてである。にもかかわらず「必要なとき」があだとなって、自身のコンピューターとモニターの接続がままならない。ミラーリングは日常当たり前に活用するからこそ、接続スキルが身に付く。

無線または有線で接続するのか。有線で接続するならその入出力端子は、HDMIか、VGAか、はたまたType-Cか。物理的につながってもミラーリングはできない。モニターやプロジェクターと最初に接続するときには、ミラーリング設定が必要だ。そして音声は出るのか。さらに子供たちのPC画面をミラーリングするときはどうすれば良いのか。

だから、ICT支援員が必要、なのではない。ミラーリングのスキルはGIGAスクール構想の具現化において教員が身に付けるべき必須のスキルだ。若い世代にとって、このスキル習得は全く造作無い。

Mt.GIGAをAttackする理由

Mt.GIGAをAttackするのは、GIGAスクール構想で子供たち一人一台の端末配備と高速通信回線が整備されたから、ではない。子供たちが生きる新しい世界であるSociety5.0を、しなやかに生きる資質・能力を育むための「学び」を創造するチャレンジだ。

現実のフィジカルな空間とコンピューターがインターネットとつながって創り出すサイバー空間が高度に融合した社会を子供たちは生きていく。そして既に子供たちはその社会で無邪気に遊んでいる。変化が激しく、しかも危険もいっぱいな社会で。

コンピューターを活用して、子供たちにそのリテラシーとインテリジェンスを育むことが、学校に課せられた喫緊の課題だ。「コンピューター操作、タイピング力、検索力、表現(プレゼンテーション)力、情報発信&共有、通信ネットワーク利用、IoTの仕組み」がそのリテラシーで、「情報真偽(見極める力)、情報モラル & セキュリティー、AIセンス、健康への影響」がインテリジェンスだ。

加えて変化が常態化する社会をしなやかに生きるには、「自己調整力」こそが何にもまして重要な資質・能力となる。知識・技能の習得に止まらず、自らの個性伸長、そしてキャリア形成に向かう「自己調整力」は、ICTを活用するからこそ育むことのできる資質・能力である。

従来の指導法とは共約不可能

従来のアナログ環境下で築き上げられた指導法は、Society3.0の現実空間(工業社会)を幸せに、安全に、楽しく生きるために日本においては素晴らしい成功を収めた。しかし子供たちが生きる社会はSociety5.0であって、現実のフィジカル空間とサイバー空間とが混然一体となっていることを肝に銘じなければならない。

となれば、Society3.0を生きるための資質・能力を育む指導法(ICT活用)と、Society5.0を生きるためのそれとは、意味が全く異なってくる。両者はパラダイムが全く異なっていて、同じICT活用といっても意味が異なる共約不可能な関係にある。

ここまで考えてくれば、Mt.GIGAの登頂ルートはインフラ論ルートが必然となる。使うことが当たり前の登頂ルートである。電気・ガス・水道の生活基盤が整備されたとき、生活は激変した。情報端末の配備と高速通信ネットワークの整備は、その日常化によって「学び」を激変させる。

大局観をもって方向性を指し示す

今、管理職に求められているのは、インフラ論ルートを選択して、前人未到のMt.GIGAへAttackする組織づくりであって、その機運を醸成することにある。

環境は整った。そして何より人材が所属校には多くいることを忘れてはならない。Attack直前において、まさに管理職の資質・能力が問われている。


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