35人学級への期待 ブラック化の歯止めとなるか(細谷美明)

教育新聞論説委員 細谷 美明

昨年末、今年は暗いニュースばかりであったと暗たんたる気持ちであったが、昨年12月17日、萩生田光一文科相の口から小学校の全学年が2021年度から5カ年計画で35人学級となることが発表された。まずは安堵である。

本紙でも取り上げていたが、今回の麻生太郎財務相との大臣折衝による合意は萩生田文科相にとって不本意な部分もあった。しかし、義務標準法を改正し学級編制数の基準を変えたことで、小中学校の人事を行う地方自治体にとって国の動向に振り回される心配が減少し、より中長期的な視点で人員配置計画が行えるようになったことは事実だ。今後は、地方自治体も教員採用選考における低倍率とその先にある教育の質の低下の防止に本気になって取り組んでもらいたい。

教育の休職者増がもたらす負の連鎖

私は、今回の35人学級実現が教員の働き方改革の視点から教職のブラック化にある程度の歯止めがかかるのではないかと期待している。教育の質の低下に関し深刻なのが小学校だ。私が知っている東京都内のいくつかの小学校では教職1~3年未満の教員がこの3年間で最低1人は退職あるいは休職している。理由はさまざまだが、子供の指導が思ったようにできないことが共通している。

文科省が発表した「令和元年度人事行政状況調査」によれば、うつ病などの精神疾患で休職した教員は5478人にのぼり過去最高となっている。これに病気休職の8157人を加えれば1万3635人の教員が現職のまま学校を休んでいることになる。このうち20代の教員は病気休職と精神疾患を合わせ1802人いる。これは同年代の在職者数の1.27%にあたり、教員全体在職者数の0.21%にもなる。さらに、昨年度と比べても約100人増えている。

小学校の場合、初任者でも大部分が担任となり、その担任が休職すれば代替の教員が配属されるまで教頭が代わりの担任となることが多い。その代替の待機教員も採用選考の低倍率の影響でほとんど残っていない。学校で最も多忙と言われる教頭に担任業務が加わることで、教頭自身にも学校の業務・運営全体にも支障が出る。まさに負の連鎖だ。

元教員や指導主事経験者を若手の指導者に

そこで期待されるのが教育委員会である。若手教員は授業以外の校務分掌の仕事や学校徴収金の徴収・管理など慣れない業務が精神的にも肉体的にも負担となる。そのことが授業準備、とりわけ教材研究に影響する。国の政策である「チーム学校」の関係で教員以外の人材に関する国の予算はこれまで自治体に配分されてきた。これは今後も継続されることが予想されるため、若手教員が授業準備に集中できる体制が整えられる。

さらに、22年度から予定されている小学校の教科担任制により、算数や理科、外国語、プログラミング教育といった、それまで小学校の教員が苦手とした教科などの指導をより専門的な教員が担当してくれることも好材料だ。

あとは、現役時代に授業力に定評があった元教員や指導主事経験者らを若手教員の指導者として配置することである。

ここで私は、彼らの指導にポートフォリオ評価を活用することをお勧めしたい。校長は年に数回、自校の教員の授業観察を通し指導を行っているが、このときに使用する指導シートと同じような様式のシートを他の指導員も活用し、個人別のポートフォリオに蓄積し、若手教員と指導員、そして管理職も共有できるシステムにするのだ。そして、若手教員はシートに書かれたさまざまな指導者からの指導・助言を振り返り、それを再度指導者たちが助言することで、報告・連絡・相談が円滑となりやがて彼らにとって大きな自信となっていくことが考えられる。

また、このポートフォリオは異動後でも活用できるようにすれば、教員一人一人のキャリア形成にも役立てることができる。質の高さは多くの協働によって作り出されることを私は確信している。


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