30人学級の実現 見通しと工程を示してほしい(寺崎千秋)

教育新聞論説委員 寺崎 千秋

放置されてきた学級の少人数化

宿願であった小学校全学年の35人学級がようやくスタートする。40人学級になってから40年がたつ。1年生は既に実施されているので学年進行で5年掛けての実施となる。完全実施になるのに45年かかるということだ。約半世紀もかかっている。先進国の中でも最も遅れていると言われ、全国連合小学校長会なども毎年繰り返し学級の少人数化を要望してきたのだが、少人数指導などでお茶を濁され、結果的に放置されてきた。

この間、社会の変化の中で学校教育に様々な課題が持ち込まれ学校は瀬戸際の状況に近いといっても過言ではないだろう。社会の激しい変化に素早く対応する時代に、40年間も据え置かれたことに憤りを覚え、政府の無策ぶりに改めてあきれるばかりである。

少人数学級を求める動きは昨年のコロナ禍の中で密を避けるため、学級の少人数化、30人学級が浮上した。与党は、少人数化を巡って昨年9月に公立小中学校の30人学級化を求める決議をまとめている。11月12日には、教育関係者23団体で構成される「子どもたちの豊かな育ちと学びを支援する教育関係団体連絡会」の全国集会において、萩生田光一文科相は少人数学級、30人学級の実現について「不退転の決意で取り組んでいきたい」と誓った。こうした流れからいよいよ30人学級が実現するかと大いに期待した。しかし「財務省の壁は高かった」と文科相が言うように30人学級とはならずに35人学級での合意となった。まことに残念である。今般のコロナ禍がなければ40人学級が更に続くことになったのだろうか。

人数の差はあらゆる教育活動の質に影響する

財務省は「少人数学級の実現が学力の向上に与える効果は限定的」とこれまでも今回も否定的な姿勢を示していた。学校教育は学力だけではなく、知育、徳育、健康・体育のバランスの良い教育が基本である。財務省は「今回の効果の検証」を求め、文科相も「今後5年間でしっかり検証した上で、必要に応じたさらなる改善、改革を進めていきたい」としている。5年間の検証は学力だけではなく、今般のコロナ禍で見直された、学校が子供たちの生活の安全安心な居場所、心の教育、徳育、体力や健康の維持増進などに果たす役割などの多角的な面から行うべきである。

昨年12月、ある日の4時間目に6年生36人の道徳の授業、5時間目に1年生23人の国語の授業を参観した。1年生は間をとって机の配置がしてあるが、6年生は限界がある。何よりも教師が一人一人に目を掛け、手を掛ける時間に差がある。1年生はより多くの子供の声を聞ける。6年生は全部には行きわたらない。経験則で言えば、人数の差は、1時間の指導での個に応じる差だけでなく、教材研究の際の一人一人の実態を考慮する時間差、評価にかける時間差、その他学級事務にかける時間差、あらゆる教育活動、職務行動の質に影響する。

中学校はいつまで待てばよいのか

昔、45人学級の時代に30人ぐらいだったらもっと一人一人をよく見られるだろうなと思ったものだ。もちろん教師の経験や力量の差もあるが、それでも児童数の差は影響する。しかも毎時、毎日のことだ。

新たに求められている「令和の日本型学校教育」は、西欧とは違った日本の教育の特色やよさを踏まえている。その上で一人一人を取り残さない教育、ICTの進展や働き方改革を踏まえた新しい時代の学校教育を実現するために、迅速に30人学級の実現を進めるべきである。35人学級になることは確かに喜ばしいことだ。しかし、本来求めていた30人学級への道筋はどうなるのか。まさかまた40年かけるのか。中学校はいつまで待てばよいのか。しっかりと見通しと計画、工程を示してもらいたい。文科相が言う「小さな一歩」を大きな一歩に一時も早く実現してもらいたい。子供たちは待っていられない。日本の未来がかかっているといっても過言ではない。


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