教員のわいせつ行為 児童生徒守る包括的な対策を(藤川大祐)

千葉大学教育学部教授 藤川 大祐

長期にわたる深刻なケースも

本紙昨年12月25日付記事「わいせつ教員対策、法改正を見送り 官報に処分歴明記へ」で報じられているように、わいせつ行為で懲戒免職処分を受けた教員の欠格を実質的に無期限とする教育職員免許法改正が見送られた。

わいせつ行為などで処分を受けた公立学校の教員の数は増加傾向にあり、わいせつ行為の相手の4割以上が自校の児童生徒である。本来は児童生徒を守るはずの立場にある教員によるわいせつ行為は、被害者の長期にわたるPTSD(心的外傷後ストレス障害)につながるなど深刻な被害を生じさせうるものであり、被害者が自殺したケースや被害から20年以上経過した後に被害を訴えたケースなども報じられている。

教員によるわいせつ行為は「教員の不祥事」などとして問題になりがちであるが、まずは児童生徒の権利に対する深刻な侵害として捉えられるべきであり、児童生徒の被害を防ぐことが最優先で考えられねばならない。

教員の児童生徒へのわいせつ行為は、教員によるハラスメントであり虐待行為と言えるが、教員によるハラスメントや虐待行為の防止は、法的・制度的には「空白地帯」と言える状況である。学校における児童生徒間の行為については、いじめ防止対策推進法によって広く「いじめ」として捉えられ、対策が講じられている。家庭での児童虐待については、児童虐待防止法に基づき、児童相談所を中心とした対応が進んでいる。だが、教員によるわいせつ行為やセクシュアル・ハラスメント、さらには体罰や暴言を含む不適切な指導に関しては、包括的に対応する法律も制度もない。

文科省は当面の対応策として、わいせつ行為で懲戒免職処分を受けた教員の官報掲載を徹底するとともに検索対象期間を従来の3年間から40年間に延長することを進めている。

だが、こうした教員免許の扱いのみにとどまらず、本来は教員の行為による被害全般について、少なくとも教員によるわいせつ行為は、児童生徒を守るための包括的な対応策が検討されるべきである。以下、本稿では教員によるわいせつ行為に限定して、対応策を検討する。

不適格者の排除のみでは不十分

教員による児童生徒に対するわいせつ行為への対策としては、大きく分けて①不適格者を教員にしないこと②被害が生じにくい環境を構築・維持すること③被害に対する早期発見・早期対応を進めること――の3種類の策が求められる。

まず、①の不適格者の排除について考えよう。

わいせつ行為によって懲戒免職となった教員を再び教壇に立たせないことは、実現可能性が高く一定の効果も見込める策であるので、早急に実現し、徹底を図るべきである。萩生田文科相は、子供に関わる仕事に就く人に無犯罪証明書の提出を義務付ける日本版「DBS制度」の創設を検討すると表明しているが、男性ベビーシッターによるわいせつ行為が問題になったケースなどを踏まえれば、子供に関わる仕事に就く場合全般にこうした制度を適用することが必要であろう。

ただし、こうした策で排除できるのは、過去にわいせつ行為などを行ったことが確認できた者だけである。採用時などに不適格者を排除する実現可能な方法は今のところ存在していないのであり、不適格者排除のみの対策では不十分である。

被害を受けた児童生徒の支援を

そこで次に期待されるのが、②の被害が生じにくい環境の構築・維持である。以下2点について述べる。

第1に、学校内で教員の個々の児童生徒への指導を密室で行わないようにすることが必要である。教員による不適切な指導を防止する観点からも、個々の児童生徒が抱える問題については教員が組織として問題を共有した上で、複数の教員で対応することを原則とする。また、教員が一人で対応する場合には、職員室内の開放スペースを使用するなど、他の教員が気配を察知できる状況で行うことを必須とする。私的なSNSでの連絡は行わず、学校外での必要な連絡は業務用のメールなどで行うこととし、業務用のメールは他の教員にも共有できるようにする。

第2に、わいせつ行為につながり得る行為に、教員や児童生徒が敏感になることである。教員のセルフチェックや教員および児童生徒を対象としたハラスメント・アンケートの定期的な実施は、教員や児童生徒の問題意識を喚起することにつながる。また、子供が自らを守ることにつながる「CAPプログラム」などの実施も求められる。

その上で、③の早期発見・早期対応である。上記のアンケートやCAPプログラムは、わいせつ行為はもちろん、「くすぐり」など、わいせつ行為につながり得る行為の発見にもつながる。他にも、SNSなどによる相談窓口の設置なども、早期発見に効果が見込まれる。相談窓口は、いじめなどの相談窓口を兼ねたものでもよいだろう。被害を訴えても信じてもらえないなどの二次被害を受けることのないよう、わいせつ行為などの被害を受けた児童生徒を支援していくことが求められる。


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