進まぬ中学ベテラン教師の意識改革 高校入試から改善を(細谷美明)

教育新聞論説委員 細谷 美明

進まない50代教師の授業改善

4月から中学校も新学習指導要領のもと、新しい教育課程による教育活動が始まる。「社会に開かれた教育課程」「カリキュラム・マネジメント」「主体的・対話的で深い学び」など、社会と学校の緊密な連携を前提に子供たちの汎用(はんよう)的能力の育成を目指した教育の開始である。

それに先立ち、1月26日に中教審は「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して(答申)」を発表した。ここでは「令和の日本型学校教育」の一つとして「個別最適な学び」と「協働的な学び」の往還について提示している。これまでの全体の学力の向上でなく子供一人一人の学びと子供を取り巻くあらゆる人との協働的な学び合いを充実させていこうという、言い換えれば「主体的・対話的で深い学び」を推進する趣旨の提言である。

こうした状況の中、現在、中学校の管理職を悩ましているのが「主体的・対話的で深い学び」の授業改善である。移行期間の今年度までに全ての教員が順調にこの授業改善を進めていれば問題ないのだが、今の学校現場での授業の実態や管理職の声を聞くと現実は厳しい。「特に50代以上のベテラン教師の授業改善が進まない」という。「主体的・対話的で深い学び」の授業改善が進まないのはなぜなのだろうか。

教師一人一人の意識改革を

1998年の学習指導要領改訂の際に総合的な学習の時間が初めて登場した。実施に当たり学校現場からは戸惑いの声が聞かれ、学力低下問題も起こり次の学習指導要領改訂時では授業時数が削減された。それまで教師主導の授業形態が主流だった学校が年間100時間もある生徒主体の授業形態にシフトチェンジできる状況になかったことが要因である。

しかし、それから20年以上たち、言語活動を取り入れた現行の学習指導要領の改訂やさまざまな優れた実践も多く紹介され、さらに教員の世代交代も進むなど「主体的・対話的で深い学び」型授業に関する学校を取り巻く状況も大きく変化した。にも関わらず先ほどの管理職の声である。

おそらく授業改善に悩む教員の多くは中学・高校生の時に「主体的・対話的で深い学び」となる授業を受けてこなかったために授業のイメージを想起しづらく実現に至らないのではないだろうか。私自身、教員5年目ぐらいまではそうした経験を持つ。その後、全国各地の実践例を探し求めてはまねをし、改善し、自分なりの「主体的・対話的で深い学び」型授業を構築していった。やはり教員一人一人の意識改革しかないのであろう。

行政でしかできない方法で行うことも

今回はそれ以外の方法を考えてみた。ヒントは先日史上初めて行われた大学入学共通テスト(以下「共通テスト」)である。そもそも今回の大学入試改革は、高校の授業改善が進まないのは大学入試対策を強く意識していることが原因とする中教審答申の指摘から出発している。そして、入試そのものを改革し高校の授業改善を促すというものである。昨年4月1日のこの稿で紹介した中国の入試改革と同じ趣旨である。わが国の場合この成果が出るにはまだ少し時間がかかるだろうが、この考え方を中学校の高校入試に応用してみたらどうか。

もちろん、最近の高校入試問題にはかなり工夫が見られる。印刷技術の進歩により写真など多種多様な資料を掲載しているのも特徴である。また、共通テストでも話題となった、授業で扱わないであろう資料を使っての読み取り問題や簡単な記述問題もある。それ以外に、例えば読解力の低下が指摘される実態から、長文の文章題や読み間違いをしやすい問題文の提示も効果的だ。

共通テストの問題を参考にするのもよい。要は、学力面で課題とされる能力面にスポットを当て出題をすることである。公立高校の入試問題作成は都道府県教育委員会が行うのであろうが、中学校の授業改善を行政でしかできない方法で行うのも悪くはないと思うのだが。


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