子供の自殺を防ぎたい 強靭な心が育つ教育を(細谷美明)

教育新聞論説委員 細谷 美明

コロナ禍で自殺増加

2月15日の文科省の発表によると、2020年に自殺した児童生徒(小・中学生および高校生)の数が昨年と比べ4割増となり、過去最多の数(479人)になったという。特に女子高校生は138人おり前年の倍近い数字となっている。

20年はコロナ禍の影響で新学期となった6月や短縮した夏休み明けの8月での自殺者がいずれも前年比の倍近くとなっている。教育関係者の間ではコロナ禍の影響が不登校や自殺にも及ぶのではないかという声がささやかれていたが、このように数字で見せられると改めてがくぜんとなる。文科省はこの原因を「進路に関する悩み」「学業不振」によるものが多いとしている。そのほかにうつ病などの精神疾患によるものが例年以上に目立っているようだ。

自殺の原因は「いじめ」「家庭不和」

今回の文科省の発表結果を受け、ある調査を思い出した。かつて自殺を考えた(自殺念慮)、あるいは自殺を図ったが未遂となった(自殺未遂)経験を持つ子供がどのような動機でそのようなことを考えたかを調査した日本財団「第3回自殺意識調査」(18年12月)である。調査対象は18~22歳の若者で、調査内容は(1)自殺念慮あるいは自殺未遂の経験の有無とその原因(2)自殺念慮あるいは自殺未遂のリスクの高い人間の特徴、自殺リスクを高める要因、自殺リスクを抑える要因――である。

同調査では回答者の3割は本気で自殺を考えたことがあり、女性の方が男性よりも多いこと、若者の自殺念慮・未遂の原因は学校問題と家庭問題が多く、さらにその中で最多を占めるのが学校問題では「いじめ」であり、家庭問題では「家庭不和」である。男女別で見れば多くは女性の方の割合が高い。学校問題に焦点を絞ると、過去学校に在籍したときに「学業不振者」の49%、「人間関係の不和経験」の51%が自殺念慮者であることも分かっている。また、過去不登校やいじめに遭った経験をもつ若者の2~3割が自殺未遂を経験しているという。調査を行った日本財団では、訪問看護師といった支援職の協力や自殺念慮・未遂者が「最も相談したい」と考える家族・友人などの身近な人間への相談ノウハウの伝授サポートなどきめ細かい相談体制の確立を提案している。

復興を遂げる精神を受け継いで

しかし、日本財団の提案や最近の識者の意見の多くも不安を抱えた子供の対処であって、子供が自殺を考えない心、言い換えれば自己肯定感や不撓不屈の心の育成には言及していない。一般的に自己肯定感の育成に効果的といわれるのが読書活動や体験活動である。そして、不撓不屈の心の育成で注目されているのがレジリエンス教育だ。20年4月22日付のこの稿で教員のストレス耐性を育てる指導法の一つとして紹介したが、最近は学校においても子供の指導に活用しているところが現れた。

前回紹介した(一社)日本ポジティブ教育協会のほかに日本SEL研究会(代表・宮﨑昭)でもシンポジウムの開催や講師派遣などを行っている(詳しくはウェブサイトまで)。同研究会では例えば中学校において、自己への気付きや対人関係などの基礎的社会的能力と生活上の問題防止のスキルや人生の重要事態に対処する能力などの応用的社会的能力を育てるための学習ユニットを、学校ごとに実施できるようさまざまなSELプログラムを提供し、その研修も行っている。現在、同研究会の指導のもと多くの学校で実施され成果を挙げている。今後も子供たちにレジリエンス・ダイナミズム(強靱(きょうじん)な心)が育つような教育が広がることを期待したいところである。

日本は有史以来、地震など多くの自然災害に見舞われてきたが、そのたびに復興を遂げ世界から称賛されてきた。つまり、日本人にはレジリエンスのDNAが脈々と受け継がれてきているのだ。そのDNAを次代の子供たちに伝えていく責任をわれわれ大人は強く認識したいものである。


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