コロナ禍の新年度 ストレス・マネジメントが重要課題(藤川大祐)

千葉大学教育学部教授 藤川 大祐

1年前とは異なる様相が

新型コロナウイルス感染症の影響が続く中、学校はコロナ禍で2度目となる新年度を迎える。1年前は先の見通しが立たないまま、多くの地域で休校措置がとられる中で新年度を迎えた。この1年間、全国の学校では感染防止策を講じつつ、分散登校、夏休みの短縮、学校行事の中止や縮小、部活動の制限などの取り組みを行ってきた。こうした過程を経て迎えるこの新年度の状況は、1年前と大きく異なっている。

新型コロナウイルス感染症の状況は、1年前と比較して決して楽観できる状況ではない。昨年末以降、新規感染者数がこれまでの最高水準となり、医療体制は逼迫(ひっぱく)し、首都圏などの地域では1月に緊急事態宣言が発令され、緊急事態宣言が解除されてもまだ油断できる状況ではない。だが、学校の日常の教育活動で児童生徒に感染が広がることはほとんどなく、ある程度の感染防止策を講じることができれば、学校生活を維持できることも分かってきた。

運動部の活動や寮生活などで集団感染が生じる例は見られたが、そうしたリスクの高い状況に特に注意して感染防止策を講じることも定着しつつあるように思われる。引き続き、給食、合唱、身体接触のある運動、調理実習などについては一定の制限が必要となるものの、学校生活は落ち着きつつあるように感じられる。1年前から小学校で、この春から中学校で、それぞれ新学習指導要領が全面実施となり、新たな教育課程での教育が本格化していくこととなる。

「コロナ疲れ」のストレスに対処を

このような状況で迎える新年度において、非常に重要な課題となるのが、児童生徒、教職員双方のストレス・マネジメントである。児童生徒にも教職員にも、これまでのコロナ禍での生活において相当なストレスが蓄積されているはずであり、今後ストレスに起因する問題が深刻化する可能性がある。

まず、そもそもの「コロナ疲れ」がある。大人も含め誰も経験したことのない世界規模の感染症拡大が先の見えない不安を喚起し、行動が大きく制限されることで各種イベントが中止となり、人と人とが直接関わり合う機会が激減している。大変な状況の中でこれまで我慢してきたとしても、年度が変わりまた春から季節をたどる中で、1年前にできなかったことの記憶が甦り、あらためてイベントなどができなかったことについての喪失感に襲われることが考えられる。

児童生徒の家庭環境の悪化が懸念される。飲食業や観光業を中心に多くの産業が打撃を受ける中で、保護者が仕事を失ったり収入が激減したりする家庭は多いはずだ。また、在宅勤務が増えたり残業が減ったりして保護者が家にいる時間が増え、子供と顔を合わせる時間が増える中で、保護者と子供との間で摩擦が生じる機会が増えやすくなっている。こうしたことから、家庭の状況が悪化し、子供たちがストレスを蓄積している可能性が高い。

実際、児童虐待相談件数や若年層の自殺者数などが増えていることも報じられており、保護者や子供のストレスが増大していることがうかがわれる。

さらに教員について言えば、コロナ禍での度重なる状況の変化に対応し続け、児童生徒の体調確認や換気、消毒などの感染防止策に尽力する期間が続いて疲労が蓄積しているものと考えられる。また、教職員集団において、歓迎会や送別会などの懇親の場を設けることが難しくなっていて、ざっくばらんな人間関係の構築が進まない状況も見られる。当初の予定通り教育活動が進まない中で、時間ばかりが経過していくように感じられ、新年度を迎えるタイミングでストレスの強さが実感されることが増えるのではないか。

教職員も児童生徒も自分や周囲に配慮

これまで、学校におけるストレス・マネジメントの取り組みは、一般企業などと比較すると遅れていた。一般企業などの職場においては、精神疾患などによる労災申請が増加していたことを受け、2015年より労働安全衛生法で労働者に対するストレスチェックが義務付けられている。1年に1回ストレスチェックテストを実施し、ストレスが認められ医師との面談を希望する労働者は医師と面談し、指導を受けることができる。学校においても、教職員に関しては、このストレスチェック制度が義務付けられている。

しかし、学校の児童生徒に関しては、こうしたストレスチェックが制度化されていない。児童生徒の精神疾患、不登校、自殺などの状況を見れば、労働者と比較しても児童生徒のメンタルヘルスはリスクが大きいものと言える。本来は、児童生徒に対してもストレスチェックなどの対応がなされるべきであろう。

とはいえ、ストレスはチェックすることで十分なのではなく、ストレスの予防やストレスへの対処などを含むストレス・マネジメントが必要だ。教職員がストレス・マネジメントについて学んで自らのストレスに対処できるようになるとともに、児童生徒にもストレス・マネジメント教育を実施できるようにすることが求められるはずである。

21年度の学校は、教職員も児童生徒も自分や周囲の人のストレスに配慮し、リラックスしたり楽しんだりする機会を意識的に作って、互いをいたわれるような場となってほしい。


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