コロナ禍、新指導要領、GIGAのポイントは「自己調整力」(斎藤剛史)

教育ジャーナリスト 斎藤 剛史

学校は、2021年度の新学期を迎え、早くも1カ月が過ぎた。依然として猛威を振るう新型コロナウイルス、新学習指導要領の実施、GIGAスクールの到来というかつてない状況の中で、今後、学校は何を目指せばよいのか。その答えの一つが、「学習の自己調整力」だ。

裏切られたコロナ禍収束の期待

教育界には、良くも悪くも、新年度になったらすべてがリセットされるという感覚が強くある。20年度の学校は、働き方改革に逆行する無理を重ねながらコロナ禍に耐えてきた。そんな無理ができたのも、新年度になればすべてがリセットされるはずという無意識の願望が背景にあったからだろう。

しかし、新型コロナウイルス感染症は現在、収束するどころか実質的な第4波が訪れており、願いは見事に裏切られた。若者や子供にも強い感染力を持つ変異型ウイルスも広がっており、恐らく、あと数年は現在のような状況が続くと覚悟しなければならない。一方、「GIGAスクール構想」が実質的な導入段階に入るほか、教員志望者減少の原因である教職員の過酷な労働状況を改善するための働き方改革も強く迫られるなど、学校現場を取り巻く環境は大きく変わりつつある。

21年度は、中学校で新学習指導要領が全面実施となるとともに、前年度から全面実施に入った小学校も実質的な仕切り直しを迫られている。そんな中で今年度から学校が注目すべき課題は、新学習指導要領における学力の3要素の一つである「学びに向かう力、人間性等」ではないか。

変化する「学びに向かう力」の意味

学力の3要素のうち「知識および技能」は、従来から学校が力を注いできた。加えて、新学習指導要領における「主体的・対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニング)の重視によって「思考力、判断力、表現力」の重要性も広く認知されつつある。一方、3番目の要素である「学びに向かう力、人間性等」は、ある意味、教育関係者にとっては当たり前すぎて、これまでほとんど注目されなかった。

ところが、コロナ禍による休校の可能性の高まり、「1人1台端末」のGIGAスクール構想の実現によって、状況は一変した。正直なところ、コロナ禍以前の学校では、「学びに向かう力」とは、教員による対面授業を効率的に受けられる力にすぎなかったと言っても過言ではないだろう。しかし、コロナ禍による休校での家庭学習、ICT活用によるオンライン授業では、本当の意味で、子供が自ら学習に取り組む力が必要になってくる。

教育関係者には経験的に周知の事実だが、アクティブ・ラーニングやオンライン学習では、学力の高い子供が有利となり、そうでない子供たちとの間で学力の二極化が発生しやすい。その理由は、学力の高い子供には、自ら学習を調整する力を身に付けている者が多いからだ。

コロナ禍、GIGAと学習の自己調整力

今年1月の中央教育審議会答申は、これからの教育のキーワードとして「個別最適な学び」を提言したが、これはアクティブ・ラーニングやICT活用なども含めた「自ら学習を調整する力」(学習の自己調整力)とも言い換えることができる。

今年度から本格的に始まるGIGAスクールに対して、ほとんどの学校は、恐らく、「1人1台端末」の活用をこれから試行錯誤する段階だろう。コロナ禍以前の学校では、「学びに向かう力」を、教員が効率よく授業するための予習・復習する力や、あるいは教員に指示された課題をこなす自習力としか捉えていなかった節がある。

だが、コロナ禍とGIGAスクールによって、事情は大きく変わった。にもかかわらず、オンラインで大量の課題を与えたり、教員の指示通りにICTを活用したりするだけに終始していては、「学習の自己調整力」の育成はできない。

今後、コロナ禍が収束したとしても、大学ではオンライン授業が一般化し、企業では在宅ワークがさらに広がるだろう。その時、子供たちに「学びに向かう力」「学習の自己調整力」が身に付いていなければどうなるか。

これまで学力の3要素と言われながら、コロナ禍以前には、なぜ「学習に向かう力、人間性等」がほとんど注目されてこなかったのか。GIGAスクールやコロナ禍により、子供たちに求められる「学び向かう力、人間性等」や「学習の自己調整力」の意味はどう変化したのか、どうしたらそれを子供たちに身に付けさせることができるのかを、GIGAスクールの試行錯誤を通して考えることが今年度の学校現場の課題といえよう。