【免許更新制】履修至上主義を廃し、抜本的な負担軽減を(藤川大祐)

千葉大学教育学部教授 藤川 大祐

弊害が大きすぎる教員免許更新制

本紙電子版5月24日付記事などで報じられているように、文科相から諮問を受け、中教審では教員制度改革に関する議論が進められている。教員免許更新制の見直しを先行して検討することが求められており、特にこの点で注目を集めている。

現行の教員免許更新制は、2009年度から導入され、免許保持者は基本的に10年に1回更新講習を受けなければ、免許が更新されず、教員としての業務を行えないこととなるものだ。当初より、現職教員であっても自費で勤務時間外に30時間の講習を受けなければならないことから、教員に経済的にも時間的にも負担を強いるものという指摘はあった。

もちろん、免許更新講習を受けること自体に、一定の意義は認められる。10年に1回、教員が日頃の業務から離れ、自ら選択した講座を受講し、最新の知識・技能を学ぶことは、自らの仕事を見直すよい契機になりうる。教える立場でなく学ぶ立場を経験することは、貴重な機会であろう。

だが、教員免許更新制については、年を追うごとにその弊害が顕在化してきた。不注意で期限までに免許更新講習を受けなかった者が退職に追い込まれることも、珍しくない。そして、退職教員などの教員免許保持経験者の多くが免許更新講習を受けておらず、講師の補充もままならないことが深刻な問題となっている。学校現場の感覚からすれば、現職教員に免許更新の負担を強いる上に、教員免許保持経験者の免許を使えなくして人手不足を助長してしまうのは、あまりにも弊害が大きすぎる。

問題ある制度が維持されてきた2つの理由

当初から批判があったにもかかわらず、これほど問題ある教員免許更新制が導入され、10年以上も維持されてしまった背景には、制度を議論する人たちの多くが持つ、次の二つの考え方があったと考えられる。

第一に、履修至上主義とでも呼ばれるべき考え方である。これは、授業科目や講習等を履修することが教員の資質向上に強く寄与するという考え方だ。免許取得のために学ぶ内容を必要に応じて増やし厳格に規定することや、定期的に免許更新講習を受けさせることが、教員の資質向上に強く寄与すると考えられている。教員の業務において、反省的思考やチームでの協働や地域との連携が重要と考えられているにもかかわらず、なぜか、一定の内容の授業や講習を履修させることが、教員の資質向上に強く寄与すると考えられている。

第二に、教員人気信仰とでも呼ばれるべき考え方である。これは、理不尽な負担を強いても、その専門性への尊敬が感じられなくなっても、多くの人にとって教員という職業は魅力的であることが当然であり、教職の人気が下がることはないという信念だ。かつてのように教員採用試験の受験倍率が十数倍というような状況であれば、若い頃から「先生」としてやりがいがある仕事を任され、身分が安定している教員という仕事は十分に魅力的であり、何かがあるとたたかれたり労働時間が長かったりしても、教員の人気は簡単に落ちないと考えられても仕方がないだろう。

現状では、これらのうち教員人気信仰は打ち砕かれつつある。教員の負担を減らす努力をしなければ、教員の確保が難しいという認識は、広がっていると言えるだろう。今回、教員免許更新制の見直しが検討されるようになったのも、教員人気信仰が成立しないことが認識されているからだと言える。

とはいえ、文科省が「#教師のバトン」で教員の魅力を語ってもらおうとしたように、この状況でもまだまだ教員の仕事は十分に魅力的だと思われている面があるのかもしれない。処遇の抜本的な改善と教員の専門性への尊敬が回復しない限り教員の確保が決定的に難しくなるくらいに、状況は深刻ではないのだろうか。

研修履歴の管理よりも、教員の時間的な余裕が必要

素直に考えれば、教員免許更新制は単純に廃止し、教員免許を無期限とすべきである。教員の業務改善が必要だとしても、それは資質向上策でなく負担軽減策によって実現されるべきだ。

だが、中教審の議論では、教員免許更新制を廃止する代わりに、教員の研修履歴の管理によって教員の資質を確保しようという話が出ている。中教審のメンバーの間にも、履修至上主義が根強いのだろう。一定の内容の講習等を履修させることによって資質を向上させようという発想がここにも見られる。

仮に研修を充実させるとしても、用意された講習等を受けさせるのでなく、自主的に研修を企画し、実施できることが促されるべきだ。多様な業種の人から学んだり、学会で発表したり、地域の人と学習会を開いたりといった多様な自己研修がボトムアップでできるようにしていくことをしなければ、新たな時代の教育を担うことにはつながらない。

このためにこそ、教員に時間的な余裕を与え、自主的な研修計画を立てられるよう促していくことが必要だ。研修履歴の管理でなく、抜本的な負担軽減策が進められるべきである。

関連記事