教員不足 非正規による人件費抑制が本当の原因だ(斎藤剛史)

教育ジャーナリスト 斎藤 剛史

全国的に教員不足の深刻化が指摘されている。これを受けて、文部科学省も全国的な実態調査に乗り出すことにしている。小学校35人学級実現を前に、いまや教員不足の解決は急務だ。しかし、文科省をはじめとする教育関係者は、大事なことを忘れていないだろうか。それは、教員不足の本当の原因は何かということだ。

そもそも「教員不足」って何?

一般社会では、教員の不人気化による志望者減少が、教員不足の原因とする見方がある。そのため、教員の勤務環境の改善や教職の魅力向上などが、対策として浮上している。だが、それは違う。なぜなら、公立学校教員採用試験の競争倍率は過去最低を更新しているものの、受験者数が募集人員を下回ったという話は、いまだないからだ。不人気化による採用試験志願者の減少は、教員全体の資質・能力の低下を意味するが、教員不足にはつながらない。

学校現場では周知の事実だが、そもそも「教員不足」で不足している教員とは、採用試験に合格した「正規教員」ではなく、臨時任用教員や非常勤講師などの「非正規教員」だ。以前は、教員採用試験の不合格者や退職教員のリストから希望者を募れば、必要な非正規教員の数を確保できた。しかし現在、それが困難になったことが、現在の教員不足の直接の原因だ。

ただ、一部の地域では、正規教員の数が足りず、それを非正規教員で埋めることもできないという事態も起こっている。非正規教員不足が、正規教員不足につながり始めており、それだけ教員不足が深刻化しているということだろう。

教職の魅力アピールは的外れ

これに対して文科省は、教師のやりがいや教職の魅力をPRするという対策をとっているが、これは的外れと言わざるを得ない。教職の魅力を訴えるために文科省が開始したツイッター「#教師のバトン」が、現職教員による職場の実態報告で炎上するのも当然だ。

もちろん、「ブラック職場」といわれる学校現場の勤務環境を改善することは重要だ。特に、長時間勤務の解消などの働き方改革は急務だ。しかし、それは現在の教員不足とは、あまり関係がないのではないだろうか。

教員不足の原因は、非正規教員の確保が困難になったことにある。その背景には、教員志願者の減少に伴い、非正規教員候補となる採用試験の不合格者が減少したことと同時に、非正規教員に対する若者の意識変化がある。

実際、非正規教員の労働環境・待遇は、まさに「ブラック」だ。給与水準は低レベルで、「会計年度職員」の制度化以前は、昇給も賞与もなかった。現在でも、任期は原則1年契約。身分は不安定なままなのに、仕事の内容や責任は正規教員と同じ。正規教員への採用というニンジンをぶら下げて、非正規教員になることを求めるやり方は、現在の若者たちにはもう通用しない。

教職の魅力PRより教員政策の改革を

誤解されると困るが、非正規教員の存在を否定しているわけではない。非正規教員は、正規教員より劣るというつもりもない。働き方の選択肢の一つとして、非正規教員という存在は重要だ。

しかし、現在の教員不足を招いた本当の原因は、正規教員の人数を抑制して、代わりに賃金が安く解雇も簡単な非正規教員を増やすという、都道府県教委の教員政策にある。本紙電子版5月17日付によると、教員定数に占める正規教員の割合は92.9%で、残りは非正規教員が充てられている。さらに、教員定数に占める正規教員の割合が9割を切っているのが、11府県4政令市にも上っているという。

はっきり言えば、教員不足が起きたのは、教職の魅力が低下したからでも、教員志願者が減少しただけでもない。人件費抑制のために、非正規教員の割合を増やし続けた都道府県の教員政策のツケが回ってきた結果で、いわば自業自得だ。

教職の魅力化に反対はしない。しかし、教員不足発生の構造を放置したまま、教職の魅力を訴えるだけでは、本質的な解決にはならない。仮に、教職の魅力化で教員志願者を増やすことができても、採用試験で本当に欲しいのは、優秀な合格者ではなく、低賃金で都合よく利用できる非正規教員の候補者となる「大量の不合格者」であるという本音を隠したままで、これからの時代に対応できるだろうか。

現在、「教員不足」という言葉のせいで、一般社会は、「正規教員」の不足だと勘違いしており、学校の働き方改革や教員の待遇改善にもおおむね理解を示している。しかし、教職の魅力化の狙いが、「非正規教員」の候補者確保にある、と知ったらどう思うか。

教員不足対策として、教師のやりがいや教職の魅力化を論じる前に、非正規教員がいないと成り立たない学校現場の実態、人件費抑制のため非正規教員を増やし続け、なおかつ彼らの待遇改善を怠ってきた都道府県教委の教員政策を改革していくべきだろう。

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