デルタ株と二学期 国と学校には早くやるべき策がある(藤川大祐)

千葉大学教育学部教授 藤川 大祐

過去1カ月、感染状況は一変した

 全国的に新型コロナウイルス感染症の患者が増加し、「医療崩壊」と言われる状況が生じつつある中、本紙電子版8月18日付で報じられているように、群馬県では緊急事態宣言期間中の9月12日まで県立学校において分散登校やオンライン授業を実施し、部活動を休止することとなった。

 多くの地域で夏休みが始まった7月中旬、全国の新規感染者は1日あたり2000~3000人程度、重症者は400人程度だった。それが8月中旬になって新規感染者2万人以上、重症者は1500人以上と激増している。重篤な症状でも入院できない人が続出し、自宅療養中に病状が急変して亡くなる人も出てきている。

 このような感染爆発の背景には、インド由来とされる変異株の、デルタ株への置き換わりがある。デルタ株は感染力が強く、従来株とは異なり、子どもたちにも感染が広がりやすいと指摘されている。

 この1カ月の間に、感染を巡る状況は一変した。学校は、どのように夏休み明けを迎えればよいのだろうか。

国が取り組むべき4つの策

 萩生田光一文科相が8月20日の会見で語ったように、文科省は全国一斉休校を求めることはせず、従来の感染防止策を徹底した上で教育活動を可能な限り継続するという立場をとっている。だが、全国一斉休校を求めないのであれば、これまで以上に安全が確保されるような策を講じるべきではないか。具体的には、以下4点が必要と考えられる。

 第一に、教職員へのワクチン接種である。現状では、教職員について希望者への接種が完了していない地域が多い。学校での集団感染を防ぐためにも教職員が安心して働けるようにするためにも、教職員へのワクチン接種は夏休み明けに間に合うように完了させておくべきであった。萩生田大臣も会見で話していたが、教員へのワクチン接種を今後最優先で進める必要がある。

 第二に、児童生徒へのワクチン接種である。年度末時点で12歳となる小学校6年生以上はワクチン接種の対象となるが、現状では集団接種は行わず個別接種を行うこととなっている。保護者の同意を得ることを前提に、学校での集団接種を早期に実施するべきであろう。そうなれば、小学校6年生以上では、集団感染のリスクを大きく減ずることができる。

 第三に、PCR検査あるいは抗原検査の広範かつ高頻度の実施である。例えば2週間に1回程度、全児童生徒を対象に検査を実施することとし、感染者が出た学級・学年等ではさらに追加で実施することとすれば、児童生徒の感染を早期に把握して対応することが可能となる。文科省は高校等での発熱等の症状がある者への抗原検査キットの使用を進めようとしており、政府はこれを小中学校等でも行う方向だが、もっと徹底した取り組みが必要だ。

 第四に、児童生徒や家族が感染した際の家庭への支援の充実である。子どもに対応した病床や宿泊施設の確保、家族が感染して濃厚接触者となった子どもの居場所の確保など、児童生徒やその周囲で感染者が出ても一定の対応ができるようにする必要がある。

 こうした策を講じるには、時間が必要かもしれない。それまで1カ月程度は全国で休校措置をとる、ということも考えられてよい。

学校が講じるべき3つの策

 しかし、現実には、上記のような策が講じられないまま、夏休みは明け、学校再開となる見込みだ。このような状況で、学校はどうすればよいだろうか。文科省の「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル」に記されている感染防止策を徹底する。そしてさらに、以下の策を講じることが必要だと考えられる。

 第一に、使用するマスクを高性能のものとすることである。広く知られているようにウレタンマスクは感染防止効果が弱いのだが、文科省のマニュアルではマスクの種類による性能の違いについての言及がない。ウレタンマスクや手作りマスクの使用を禁止し、不織布マスクなど高性能のマスクの使用を求めるべきである。

 第二に、学級閉鎖、学年閉鎖等を迅速に実施できるようにすることである。保健所による濃厚接触者の追跡がすぐには行えない状況になっていることを踏まえれば、感染者が一人でも出た場合には、学校が設置者と相談して当日あるいは翌日から遅滞なく、まずは数日間学級閉鎖等を行うことを検討できるようにしておく必要がある。また、学級閉鎖等が長期化したり、感染者や濃厚接触者となった児童生徒が長期間登校できなくなったりすることに備え、いつでもGIGAスクール端末等を活用したオンライン学習に切り替えられるようにしておくことも必要だ。

 第三に、部活動について、必要な制限を行うことである。部活動では他の教育活動に比して教員による統制が徹底されにくく、集団感染例も多い。緊急事態宣言下で各種大会が実施されている例はあるが、本来は対外試合等は全て中止されるべきだ。そして、校内での活動を認める場合にも時間を限定し、教員の指導の下で感染防止策を講じることを条件に実施するようにすべきだ。

 夏休み前と現在とでは、感染状況は大きく異なっている。学校の在り方が夏休み前と同様でよいはずはない。医療機関にこれ以上の負担をかけず、子どもや家族や地域の人々を守るために、できることをもっと大胆に進めていく必要がある。

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