対面・オンライン授業の組み合わせ 必要な3つの配慮(中原淳)

立教大学教授 中原 淳
ハイフレックスは難易度が高い

緊急事態宣言の中で新学期が始まって、各地の小中学校、高校では、分散登校やオンライン授業など、それぞれの状況に対応した細やかな感染対策が必要になっている。オンラインと対面を組み合わせたハイフレックス(HyFlex:Hybrid-Flexible)型の授業に取り組んでいる学校もあるようだ(一部の自治体ではハイブリッド型授業とも呼ぶ)。つまり、学校に来られる人は教室にいて先生と対面で授業を受けて、来られない人は同じ授業をオンラインで受けるというスタイル。もちろん利点は多いのだが、実は最も難易度の高い授業形態といえる。

多くの大学では、昨年4月からオンライン授業が導入された。突然のことだったので当初は全員がオンラインだけ、全てオンデマンドで学ぶという形だった。そのうちに学生がキャンパスに来られるようになってハイフレックス型に移行していったが、かなりの試行錯誤があった。いや、今でも落ち着いていない。ハイフレックス授業は、簡単なようでいて、授業として成立させるのは難しい。行政担当者などは、いとも簡単にそれが可能だと考えているようだが、現場に来て、自分でやってみてほしいものだと思う。

いま、現場の先生方はかなり苦労しているはずで、本当に頭が下がる思いだ。お疲れさまです、と心から申し上げたい。昨年からハイフレックスを行ってきたものとして、せめて、いくつかのこつを共有させていただきたい。

オンライン側の子供を置き去りにしない

まずは、もっとも基本的なことだが、ネットワーク環境を整えることである。とりわけ重要なのはマイク、カメラの位置、そしてネットワークの帯域だ。音声が聞こえなければ、まったく授業にはならない。カメラの位置は、先生の姿もさることながら、黒板が見えることを優先した方がいい。カメラは三脚などを使って固定した方がいい。もし板書が見えないのなら、LMS(学習管理システム)やメールなどで、板書を画像で送信してもいい。学校内のネットワーク帯域は広く確保しよう。学校内の子供たちにタブレットを使わせたいと考えるかもしれないが、そうなると、校内の帯域は直ちに狭まる。授業配信専用に絞った方がいい。

次に授業を始める。まず、一番起こりやすい失敗は、オンライン側に子供がいることを忘れてしまうことだ。目の前にいる子供は見えているし反応もしてくれる。だからつい対面側に対して授業をやってしまって、オンライン側を「置き去り」にしてしまう。するとオンライン授業はただの「のぞき穴」になってしまう。これを避けるための方法は簡単だ。モニターを複数用意し、できるようであるならば、オンラインでつながっている子供の顔を、授業に使うのとは別の画面にずっと映しておくことである。相手の表情や反応が確かめられると、全然違ってくる。それが一番スマートな方法だろう。

ただ、先生の側に小さなモニターが一つしかなかったり、学校の情報環境が厳しかったりするところもあるだろう。その場合、忘れないためには「ルールを決めておく」しかない。対面側を当てたら必ず次にオンライン側を当てるとか、チームにオンライン側と対面側を交ぜるとか、原則を作っておけば取り残さないようにできる。オンラインで自分が忘れられた時のモチベーションの下がり方は半端じゃないので、気を付けた方がいい。

授業のレディネスを確保する

次に、オンライン授業においては、これまで以上に、授業と授業の間の「のりしろ」を意識することだ。例えば、授業の最初の5分は、前にやったことのおさらいをして、今日これからやることを話す。最後の5分は、今日やったことの振り返り・まとめと次回やることの提示。それをきちんと毎回やる。場合によっては、子供に「前回こういうことをやったけど、◯◯さんはどうでしたか?」と聞いてみてもいい。

特にオンライン側には、注意散漫になってしまっていたり、ついていけなかったりする子供がいるかもしれない。授業そのものに問題はなくても、子供たちが受けているネット環境によっては音声が安定しなかったりする。子供たちの理解が平準化されていない可能性を、対面授業のときよりも意識した方がいい。「のりしろ」を多めにするのは、子供たちを置いてきぼりにしないためだ。「導入、展開、まとめ」という考え方でいうなら、導入部を多めに工夫する。そこを意識するだけで、子供たちの理解を確かめられるし、よりインタラクティブにもなる。

オンラインで深刻な問題は「レディネス(学びのための準備)」である。心身を整えて学習に向かう構えができているかどうかを確認はできない。つまり教科書をきちんと開いているか、机に向かう姿勢はどうか、対面だと先生は子供たちの様子を自然に確認することができる。でも、オンラインでは、ノートが出ていなかったり、鉛筆を持っていなかったり、下半身がパジャマのままでも分からない。できることなら、これも導入のところで、「皆さん、教科書とノートは開いていますか」「鉛筆は持っていますか」「姿勢を正してください」「では始めましょう」などと確認するようにしたい。レディネスが確保できないと、特に小中学校のオンライン授業は厳しいことになる。

詰め込みすぎに注意しよう

最後のアドバイスは「詰め込まないこと」である。オンライン併用では、どうしても授業の進め方はゆっくりになってしまう。これまでの7割8割でも御の字だと考えること。レディネスを確かめたり、振り返りをやったり、理解度を確認する時間も取られる。例えば、問題の演習・練習はリアルタイムにやらなくても、個別の宿題にして、オンラインで提出させるようにしてもいい。うまく切り分けを考えなくてはいけない。むしろ実時間でやらなくてもいいことは、積極的に外に出していく。子供たちの自己学習に任せなければならない部分はどうしても増えるので、そちらをフォローする方法を考えていく。

いま、誰にも、コロナ禍のエグジット(出口)は見えていない。9月末まで緊急事態宣言が延長されたが、それが過ぎたら終わるとか思わない方がいい。子供が感染しやすく、重症化する可能性も高まったというデルタ株に不安を感じていない学校関係者はいないだろう。これから冬に向かって、いまのような感染状況が続くようなことも覚悟しなければいけない。もっと中長期に付き合わなければいけない可能性もある。そういう危機意識を持って、なるべく早く経験値をためていった方がいい。現場の先生方は大変だと思うが、この経験も長い目で見ればきっと役立つと信じて、なんとか乗り切ってもらいたい。

大学も秋学期は原則としてオンライン授業が決まった。今、まさにゼミの学生と、授業の準備をしている。「学びを止めない」ための「長い戦い」が始まろうとしている。私たちも頑張ります。共に頑張りましょう。

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