小学校の英語 言語構造の違いを児童と学ぼう(喜名朝博)

東京都江東区立明治小学校統括校長、全国連合小学校長会顧問 喜名朝博

 「英語の勉強が好き」約7割

 今年度の全国学力・学習状況調査の児童質問紙調査に「英語の勉強は好きですか」という設問が新設された。「当てはまる」が38.3%、「どちらかといえば、当てはまる」が30.0%で、肯定的な回答は68.3%となる。7割近い子が「英語の勉強が好きだ」と答えていることになる。ちなみに、「算数の勉強が好きだ」と答えた子は67.8%、「国語の勉強が好きだ」は58.6%である。

 この数字だけでみると、小学校の英語教育がうまくいっていることが分かる。英語教育のスタートである小学校で「英語嫌い」を作らないことはとても重要なことである。

 小学校が英語教育に力を入れていることは、学校質問紙にも表れている。「学校として外国語教育の充実に取り組む上で、必要な情報や研修、自己研鑽の機会などを十分に設けていますか」という設問への肯定的な回答の合計は67.7%となっており、教育課程推進上の課題として重視していることが分かる。

 この背景には、コミュニケーションツールとしての英語の難しさがある。4技能をバランスよく指導するには、指導法の確立だけでなく、英語を教える教員にある程度の語学的センスが求められる。

 学校質問紙にはこんな設問もある。「調査対象学年の児童に対する英語の指導に当たって、前年度までに、英語で自分自身の考えや気持ちを伝え合う(対話的な)活動に取り組みましたか」。ここでは、実に93.5%の学校が肯定的な回答をしており、新学習指導要領の理念を果たすべく授業改善に臨んでいることが見える。

 学校の思いと子どもたちの実態との乖離

 児童質問紙の設問「これまで、学校の授業以外で、英語を使う機会がありましたか」(地域の人や外国にいる人と英語で話す、英語で手紙や電子メールを書く、英語のテレビやホームページを見る、英会話教室に通うなど)」での肯定的回答は44.7%である。半数近くの子どもたちが授業以外でも何らかの形で英語に触れている。

 我々が思っているより、英語は子どもたちの身近なものになっている。ここで気を付けなければならないのは、学校の思いと子どもたちの実態との乖離(かいり)である。子どもたちは、さまざまな形で英語に触れているという前提に立って指導に当たっているだろうか。指導法にばかり目が向き、英語と日本語の言語構造の違いの指導を忘れていないだろうか。

 英語4技能の学びは日本語の勉強法と異なる

 英語科の目標(1)は「知識・技能」に当たる。「外国語を通して、言語や文化について体験的に理解を深め、日本語と外国語との音声の違い等に気付くとともに、外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しむようにする(太字筆者)」。物事を理解するときに使われる思考法には、「比較」がある。

 英語を理解するときに、日本語と比較して考えることで双方の特徴が明確になる。音声を重視する表音文字の英語と、文字の意味を重視する表意文字の日本語とでは、発音の仕組が異なる。平仮名や片仮名は一つの読み方しかないが、アルファベットは前後の文字によって多様に変化する。

 さらに、英語は単語をつなげて発音することで音声変化が起こる。映画「アナと雪の女王」の主題歌「Let It Go」は「レリゴー」と発音していることを子どもたちは知っている。日本語の感覚だと「レット、イット、ゴー」と発音してしまうが、英語には聞こえないし、相手の発音も理解できない。フォニックスを習わず、ローマ字読みの呪縛から解けない我々には難しい語学的センスだ。

 教科としての国語は、書いてあるとおりに正しく読むことを強いてきた。英語は単語を区切らず、音声変化させることで英語らしくなる。英語における4技能の学び方は、日本語の勉強法と異なるという基本的な法則を伝えておくことが重要である。

 外来語や和製英語をきっかけに

 生活にすっかり入り込んでいる英語であるが、片仮名語は英語であるという誤概念も生んでいる。日本語化した英語は、そのまま発音しても通じない。「コロナウイルス」は「Coronavirus」と表記し、「コロナヴァイラス」と発音する。日本語化した英語と正しい英語の比較により、理解が深まっていく。

 さらに、ペットボトル(英語では「Plastic bottle」)や、コンセント(「Outlet」「Socket」)は和製英語で、英語圏では通じない。通じる英語に置き換えることで記憶が強化される。また、「Manga(漫画)」や「Emoji(絵文字)」のように、世界で通用する日本語があることも文化としての理解につながり、子どもたちの知的好奇心を刺激するだろう。

 日本語と英語の比較という視点で授業改善をすれば、教師も共に学ぶことができる。それが「英語が好き」と言える教師を増やしていくことにつながる。

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