新たな教員研修制度 せめて給特法を廃止してからだ(藤川大祐)

千葉大学教育学部教授 藤川 大祐

強調されなかった教員の負担軽減

 本紙電子版11月15日付で報じられているように、中教審の「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会、教員免許更新制小委員会の合同部会にて、教員免許更新制を事実上廃止し、代わりに教員の研修履歴のシステム管理等によって研修受講を奨励するとした審議まとめが了承された。来年の国会で必要な法改正が行われる見込みだとのことである。本紙電子版11月19日付で報じられているように、末松文科相は「来年度から更新講習は不要」と述べており、教員免許更新制の廃止は決定的となった。

 教員免許更新制の廃止について、私は本紙電子版6月22日付の本「オピニオン」欄で、「履修至上主義を廃し、抜本的な負担軽減を」という主張をさせていただいた。今回の審議まとめにおいて教員の負担軽減がもっと強く打ち出されることを期待していたのだが、残念なことにそこまで負担軽減が強調されることはなかった。

 今後懸念されるのは、新制度のもとで教員が研修する場が限定されてしまうことと、報告や記録のために教員の負担感が増してしまうことだ。

研修の計画や報告の負担に懸念

 中教審の審議まとめでは、目標設定や現状把握、管理職等との「対話」を通じて、「新たな教師の学びの姿」を実現することを目指し、研修受講履歴の管理システムの導入、学びの成果を可視化するための証明の仕組みの整備等を行うとしている。こうしたことが具体化された結果、教員が研修の計画をあらかじめ提出することや事後に報告書を作成して提出することを求められ、そうした作業が教員の負担になることが懸念される。

 教育を巡る課題は広範であり、社会の変化によって新たに学ぶべきことも出てくる。本来、教員が自分の専門性を高めたり、好きなことを深めたりするには、教育委員会等が実施する研修を受けるだけでなく、自ら情報を得て各地で行われるワークショップやイベントに参加したり、自分で計画を立てて学習したりすることが必要だろう。

 だが、あらかじめ計画を提出したり事後に報告書を提出したりすることが求められるのであれば、独自の研修を計画して管理職に説明するよりは無難に教育委員会等が実施する研修を受けようと考える教員が多くなるのではないか。

 もちろん、一定の知識やスキルを学ぶためには、教育委員会等の研修を受けることは効率的であろう。しかし、教員の研修が教育委員会等によるものに限定されてしまえば、教員の多様性は失われ、教員は受動的にしか学べなくなってしまう。

教員の時間的余裕が大前提

 では、どうするか。以下のようにすることを提案したい。

 第1に、教員の働き方改革を実効的に進め、教員が自由に研修を計画できる時間的余裕を設けることである。教員が主体的に学べるようにするためには、時間的余裕があることが大前提であるはずだ。教員の長時間労働はまだまだ改善されておらず、教員に研修の充実を求められる状況ではない。実効性ある働き方改革が進むまでは、新制度の実施を凍結するくらいの覚悟をもって、文科省は働き方改革を強力に進めるべきである。少なくとも、給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)を廃止することを、新制度開始の条件とすべきだ。公立学校の教員に、基本給の4%にあたる「教職調整額」を支給する代わりに時間外勤務手当や休日勤務手当を支給しない給特法は教員の長時間労働を助長するものと考えられており、本年10月には、さいたま地裁が給特法は「もはや教育現場の実情に適合していないのではないかとの思いを抱かざるを得ず」と指摘するまでに至っている。給特法を廃止して時間外労働に応じた手当が支給されるようになれば、教員の労働に必要な費用が可視化され、業務軽減や教員定数増が進むはずだ。

研修用の予算枠確保、電子化による記録の自動化を

 第2に、教員が研修に使用できる予算枠を設ける。教員が自主的に研修を行えるようにするためには、そのための予算が支給されることが望ましい。教員1人あたり年間5000円から1万円程度でも、出張旅費や書籍購入費として使用できる予算を設けることで、教員が創意工夫して研修を計画することが促されるであろう。

 第3に、申請や報告は電子化して自動的に履歴が記録されるようにし、記載内容を最小限とすることである。勤務時間中に受ける研修や公的予算を使用する研修については、申請や報告が必要であろうが、その内容は日時やテーマ等の最小限にとどめ、申請や報告で負担が増大しないようにしなければならない。研修の内容は記憶に残り教育実践で活用されるものであるはずなので、履歴に詳しく記載しておく必要はない。自費で休日に実施する研修については、申請や報告も不要であろう。

 文科省は、教員免許更新制を廃止する以上、教員の研修の充実を図りたいと考えるだろう。だが、教員免許更新制廃止の背景には、更新講習が教員の負担になることがあったことを忘れてはならない。研修には時間や予算が必要であることや研修履歴を残すために負担を増大させてはならないことを忘れずに、改革を進めてほしい。

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