再論・教員の働き方(中)成長の実感が満足度につながる(中原淳)

立教大学教授 中原 淳

 急務になっている教員の働き方改革だが、現状では育成について問題が多いように感じている。今回は教員の学びについてである。

【3】教員の校内研修・校内研究をどのように実現するのか?

 いま最も重視されている教員教育の目標は「授業力をつける」ということである。そのために行われているのが校内研修・校内研究だ。学校内で数人の先生が授業をやって、それを他の先生や指導主事、管理職が観察して、授業終了後にフィードバックをもらう。これを校内研修・校内研究と呼び、これまで教員育成の根幹に位置付けられてきた。

 だが、長年続いている、この仕組みも、いろいろと形骸化してきているのではないか。「毎年やることになっているから、今年も、なんとなくやっている」になっていないだろうか。普段から、その先生の授業を観察しているわけでもない指導主事や管理職が、授業に対してフィードバックをするけれど、それは、本当に芯を食ったものになっているのだろうか。

 教員と話をしていると、やらされ校内研修、校内研究の話題は、事欠かない。本当にこれが機能しているのかを総点検していくべきだ。

【4】教員の「日々の学び」をどのように実現するのか?

 人材マネジメントの観点から見て、学校に足りていないと感じるのは、日々の学び、日々仕事をしていく中で生まれる学びを、組織的に生み出す仕組みがないことだ。

 企業では、1on1(ワン・オン・ワン:上司・先輩役と部下による振り返り面談)などが導入され、部下が「仕事のやり方」について振り返るような試みが、かなり導入されている。振り返り面談において、日々の仕事を振り返ることによる「成長の実感」が、仕事の上で必要不可欠だと理解されてきたからだ。

 教員にもしこうした仕組みが導入された場合、「授業のこと」だけでなく、「保護者のこと」「学級経営のこと」「対応が難しい子どもへの働き掛け」など、仕事の全てにおいて振り返りができる。そこで「成長を実感」することもできるだろう。

 端的に言ってしまえば、振り返りが必要なのは「授業のやり方」だけではない。いま、多くの先生が悩んでいるのは、保護者対応、学級経営、難しい子どもの対応など、授業以外のことだ。授業のやり方に悩んでメンタルダウンする人など、ほとんど聞かない。

 ややこしい保護者への対応を個人でやらされる、歩き回っちゃう子どもをどうするか、というようなことが悩みなのではないか。教師生活を通して、どんなことが課題になっていて、それをどういうふうに解決しようとしているのか、何ができていて、何ができなかったのか、これからどうしようと思っているか、それを日々確認していく。それが自分の成長を実感することにつながる。

 この成長の実感こそが、教員のウェルビーイングにつながる。対人関係職の場合、従業員のウェルビーイング実現は、顧客の満足度につながる。教員の場合でいえば、先生がウェルビーイングを実現できていなければ、子どものウェルビーイングもおぼつかない。

 しかし、誠に残念なことながら、この実現は、現在の学校には酷だろう。それは長時間労働が横行しているからだ。長時間労働は、このように学びを毀損(きそん)する。

 11月に了承された中央教育審議会(中教審)「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会の審議まとめでも「管理職などが積極的な対話によって成長を支援する」というような文言が追加されているが、いまの教育現場には、日々の学びという部分がごっそり欠けていることは理解しておいてほしい。また、対話によって振り返るのは「研修で何を受けるか」ということだけではないはずだ。必要なのは「教員の仕事をしていく中で課題に感じていることを意識し、目標を持ち、実践していくための準備」を進めてもらうことだ。

 急務なのは、中間管理職の能力開発だ。中間管理職は、こういう1on1的な人材育成をやったことがないわけだから、役割の再定義をすることから必要になる。

【5】教員の校外研修をどうすればいいのか?

 教員の校外研修についても改善が必要だろう。教育委員会でやっている研修は、もう少し工夫ができる。とりわけ研修転移を重視し、学んだことは現場でしっかり実践してもらえるようにするべきだ。量を徹底的にダイエットすることも重要だ。オンデマンド化、eラーニング化を進めて、負荷を減らす。

 それぞれの教育委員会が地域の課題に応じてつくる研修も重要だろうとは思う。しかし、一方で、どの教育委員会でも必要なコア科目に関しては、国が一括で開発してもよい。その分、教育センターのコストが減り、現場に人を回すことができる。独立行政法人教職員支援機構(NITS)などは、すでにタイムリーな講義をオンデマンドでやっている。これらを整備して、研修の高度化を図っていきながら、教育委員会と連携していけばいい。

 同時に、「研修は、自分の目標に照らして、必要なものを自分で選んで、決めて、受けてもらう」というふうに発想を変えることも必要だ。これを受けてこい、あれを受けてこいという、やらされ感があると、身が入らない。能力開発の考え方の大転換を図る。ただし、これは「仕事の責任」が伴うことは、言うまでもない。

 受ける研修は自分で選ぶ。それは個々の先生にとって厳しいことでもある。能力が伸びない、仕事ができない、というのは自己責任でもある、ということだ。「#教師のバトン」を見ていると、教育委員会にあれこれやらされるのがイヤだけれども、さして、自分で学ぶ気力もないような発言をしている人もいる。

 以上のような改革は、地道で派手さはない。当たり前のことを、当たり前にやり切るだけだ。人材マネジメントに「魔法のつえ」はない。

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