オミクロン株 深刻化する教職員不足に3つの対策(妹尾昌俊)

教育研究家、学校業務改善アドバイザー 妹尾 昌俊

もともと綱渡りの学校現場

 各地でオミクロン株が猛威を振るっている。子どもたちへの感染も広がっており、学級閉鎖や休校(臨時休業)措置をとる学校も増えている。本紙電子版19日付記事(オミクロン株急拡大 学校現場が警戒する「教員の感染」)も報じるように、教職員や保育士らも感染リスクの高い状態にいる。いつだれが感染してもおかしくない。感染しなくても濃厚接触者となれば、10日間ほど出勤できない。

 そんな中、もともとギリギリの教職員数で支えていた学校の多くは、さらに苦しくなっている。本来、教育現場、教育活動は「回す」とか「こなす」という性格のものではないと思うが、とにかく学校が回らなくなってきている。

 背景には、コロナ以前から続く、脆弱(ぜいじゃく)な人員体制にある。ある程度、人がいるなら、誰かが休んでも、カバーすることは可能だ。だが、多くの小中学校にそんな余裕はない。

 次の図は、教員の1週間あたりの授業時間数(持ちコマ数)を示した。小学校では26コマ以上が約半数を占め、21~25コマも約4割である。学年や年間の教育課程にもよるが、1週間は30時間弱あるから、1日のうち、5時間か6時間授業に出ずっぱりの教員が大半ということだ。これでは、誰かが休んだときに、カバーしようにも、自分の担当クラスを自習にすることになる(複数クラス合同で授業するという手はあるが、コロナ禍で密を高めるわけにもいかない)。しかも、この調査は2016年時点。その後、新学習指導要領で外国語が増えたので、コマ数が増えている教員は多い。

教員の1週間の授業時間数(2016年)(出所)文科省「教員勤務実態調査」をもとに作成(0コマ、無回答は除く)

 中学校、高校は小学校ほどの授業数ではないものの、教科ごとの専門性が要求されるし、いまは高校入試などの直前であるから、おいそれと他の教科の先生が代打できるとは限らない。

 しかも、ご存じのとおり、授業をはじめ、教員免許が必要な業務については、他の部署などから応援に行こうにも行ける人は限られる。教育委員会職員(指導主事らで教員免許をもっている人材)だって学校以上に忙しい人もいる。

 さらに追い打ちをかけているのは講師不足の問題だ。地域差や学校種との違いはあるが、若手の教員が増えて、産休・育休を取得する人が急増している地域もある。とりわけそれは都市部で顕著で、感染リスクが高いのも都市部だ。産育休でさえ、代わりの講師が見つからないという悲鳴は、私は全国各地で聞く。

 病気休暇、休職となる人が出ると、さらに講師不足は深刻となる。年度途中で募集しても、民間などに就職済みの人も多いのだから、代わりの講師が見つからないのは当然だ。

 以上は主に授業をする教員についてだが、養護教諭や学校事務職員らも1校1人配置の小中学校が多く、その人が休んだとき、カバーできる人は限られる。

スタンバイまでできなくても

 論理的に考えると、対策は大きく3つある。

 第一に、最も素直な発想は、平時からもう少し教職員数を増やしておけないか、というものだ。講師を年度途中から募集することは最小限にして、年度当初から採用しておく。例えば、平時は特別支援や少人数指導などで活躍してもらい、感染症のように災害時には人員不足のところに応援に行ける、遊軍的な人を配置する。これは、ごく自然な発想だと思う。

 実際、航空機のパイロットやキャビンアテンダントには「スタンバイ」という制度がある。オフィスや自宅で待機しておき、体調不良なスタッフが出たとき、あるいは航空機の変更で追加人員が必要になったときなどに駆け付ける。スタンバイ中はある程度自由に過ごせるが、もちろん勤務としてカウントされる。フライトをおいそれと欠航にはできないので、こうした仕組みを整えている。

 日本全国で小学校だけでも2万校近くあるし、さすがに航空会社ほど手厚い制度を設けることは、現実的ではないとは思う。だが、多少近い発想で、平時からの人員体制を整えておくことはできないものか。

 来年度予算案を巡っても、小学校高学年の教科担任制を巡って、財務省と文科省との間では激しい論戦と調整が続いた。財務省の見立てからすれば、小規模の中学校などから応援に行けばいいじゃないか、ということらしいが、コロナ危機の現実を見てほしいと思う。

 第二に、授業負担を減らすことである。具体的には、学習指導要領の年間の標準時間数を何割か減らす。こうすると、教員一人当たり授業数も減るので、誰かが休んだときに臨時的に担当コマ数を増やすことである程度カバーできる。併せて、学習内容も精選する必要がある。

 この案だとあまり予算はかからないし、第一案よりもはるかに安上がりである。だが、文科省はやろうとしないだろう。昨年度の一斉休校で2、3カ月ブランクが出ても、指導要領には手を付けなかった。

 膨大な時間をかけて学習指導要領をつくったばかりなのに、ということなのか。だが、それはサンクコスト(埋没費用)である。あるいは学習内容の一部を減らすとなると、大反対する人たちがいるからなのか。

 第三に、教員がいなくても大丈夫な授業、学習を増やしていくことである。具体的には、1人1台端末を活用した自学自習など。教員の支援があまりない中で、小学生などはどこまで学びが進むのかなど、課題はあるが、一つの方策ではあると思う。

 これら3案以外もあるかもしれないが、文科省などでぜひ幅広くアイデアを出して、真剣に検討してほしい。あるいは少しずつ組み合わせるという手もある。危機のときに、従来通りの発想ではいけない。

あなたへのお薦め

 
特集