「教師不足」 非正規への依存が限界を超えている(藤川大祐)

千葉大学教育学部教授 藤川 大祐

臨時的任用教員の学級担任は本来、例外的措置のはず

 本紙1月31日付で報じられているように、文科省が行った「教師不足」に関する実態調査で、公立小中学校のほぼ20校に1校で教員が不足している状態があることが明らかになったことが分かった。

 調査結果を詳しく見ると、学校現場の教員不足が深刻であることが分かる。今回の調査は、臨時的任用教員を含めても、教員の数が不足している学校を始業日時点と5月1日時点で調べたものである。この結果、始業日時点で5.8%、5月1日時点で4.8%の学校で教員が不足していることが分かったというもので、これが20校に1校として報じられている。

 まず、学校種別で見ると、特別支援学校で教員が不足している学校が5月1日時点でも11.0%と非常に多い。そもそも特別支援学校では正規教員の割合が81.43%と小学校87.38%、中学校87.45%、高校89.59%と比較してかなり低く、臨時的任用教員に頼った教員配置がなされていると言える。そもそも臨時的任用教員が多いために、教員が不足してもさらに臨時的任用教員を見つけるのが難しくなっているものと考えられる。

 また、今回の調査では小中学校について、学級担任の雇用形態別内訳が明らかになっているが、小学校では11.49%、中学校では9.27%の学級担任が臨時的任用教員である。臨時的任用教員の多くは、教員採用試験に合格しておらず、初任者研修等の研修も受けていない者だと考えられる。であれば、臨時的任用教員が学級担任となるのは、本来は例外的な措置であるべきであろう。

 さらに、特別支援学級の担任について見ると、小学校は23.69%、中学校が23.95%と、約4分の1を臨時的任用教員が占めていることが明らかになった。特別支援学校の教員に臨時的任用教員が多いことも踏まえれば、より高い専門性が求められるはずの特別支援教育担当教員に、特に臨時的任用教員が多いことが分かる。

 以上より、「教師不足」の背景には、教員の中に臨時的任用教員が占める割合が高く、学級担任の中での一定の割合を臨時的任用教員が占める割合が高くなっており、特に特別支援学級の担任や特別支援学校教員で臨時的任用教員の割合が高いことがある。

 限られた時間だけ担当する非常勤講師ならともかく、フルタイムでありながら1年契約が基本の臨時的任用教員を積極的に志望する人はあまりおらず、正規採用されないのであれば別の職業に就くという人が多いはずだ。現状では条件の合う人の多くがすでに臨時的任用教員となってしまっていて、新たに臨時的任用教員を探しても見つからないことが多いために、「教師不足」に陥っていると考えられる。

講師の数は20年間で1.7~2倍に増加

 では、臨時的任用教員の割合は以前からこれほど高かったのだろうか。本紙1月31日付の記事では、文科省の担当者の「正規教員が全体の9割弱を占めるという状態は、ここ数年、大きな変化はない。臨時的任用教員が相対的に増えているわけではない」という説明を載せている。

 確かに、数年では大きな変化はないのだが、20年くらいで見れば、大きな変化がある。文科省が毎年出している「学校基本調査」から、2001(平成13)年度以降の小中学校と養護学校の教諭(正規雇用)と講師(臨時的任用教員)の人数を抽出したものが、下の表だ(本務者のみ)。

 この20年間で見れば、講師の数はそれぞれ1.7~2倍に増加している。現状では、講師の数が高止まりしていると言える。この高止まりの状況を変えなければ、臨時的任用教員がいきなり学級担任を担わされたり、特別支援学級や特別支援学校の教員に臨時的任用教員が多かったりする状況は変わらず、「教師不足」から脱却することもできない。

非正規労働者への過度の依存

 今回の調査で浮かび上がった「教師不足」の問題は、正規の教員が不足しているという話ではなく、非正規の臨時的任用教員が見つからないという話である。教員の人気低下はそれ自体が問題であるが、ここでの「教師不足」とは別問題だ。ここで言う「教師不足」の問題は、非正規教員への依存を高めたために生じている。教員の退職者が多くなる中で新規採用を一気に増やすことが避けられたのかもしれないが、人件費を抑制する方向で少しずつ非正規依存が進んだのではないだろうか。

 「教師不足」を解決するためには、臨時的任用教員の数を段階的に抑え、正規採用の教員を増やすことが求められる。臨時的任用教員の数が20年前くらいの水準となれば、小中学校の学級担任のほとんど、そして特別支援学校教員の多くを正規採用の教員とすることができる。そうなれば、臨時的任用教員の条件に合う人に余裕ができ、臨時的任用教員の確保もしやすくなるだろう。

 本紙1月31日付の記事で指摘されているように、「教師不足」の大きな要因に「講師登録名簿登載希望者数の減少」があることは間違いない。しかし、その背景に非正規教員への依存があることが見逃されていないだろうか。他のさまざまな職種と同様に、教員という職種においても、非正規労働者への過度の依存が実質的な人手不足を生じさせていると考える必要があるはずである。

文科省 「教師不足」に関する実態調査(22年1月31日公表)

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