次期学習指導要領 全連小、全日中、全高長の意見書全文

次期学習指導要領の「審議のまとめ」についての意見書を、全連小(大橋明会長)、全日中(榎本智司会長)、全高長(宮本久也会長)が、中教審教育課程企画特別部会に10月17日付で提出した。各意見書の全文を掲載する。

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これからの不透明な社会において、子供たちがよりよい人生と社会を築いていくために、教育基本法や学校教育法が目指す普遍的な教育の根幹を踏まえ、教育課程を通じて初等中等教育が果たすべき具体的な方向性を示していただいたことに対し敬意を表します。標記の件について、全国連合小学校長会(以下 全連小)としての意見等をとりまとめましたので、下記により提出いたします。

1 改訂の基本方針等について

(1)これからの社会において、自立的に生きるために必要な「生きる力」の育成を図るために、学習指導要領等の指導内容の見直しにとどまらず、学び方や育成すべき資質・能力にも視点を当てたことについては評価しているところである。今後の課題は、審議のまとめの内容が多面的・多角的に示されているので、この内容の実現を図るための周知及び研修等の工夫・充実が必要と考える。全連小としても、各都道府県の校長会と情報の連携を深めるとともに研修や研究等の充実を図っていきたい。

(2)子供たちの多様で質の高い学びを引き出すためには、学校のみならず、家庭・地域、民間企業等も含めた関係者が目標を共有し、連携・協働していくことは大切であるとの認識をもっている。現在、多くの地域で、学校と地域等が協働でいろいろな取組を行っている。しかし、学校を取り巻く地域等の状況は一律ではない。更なる推進を図るためには、取り組んでいるところの成果と課題をよく検証し、情報を提供するとともに、学校と地域等が協働できるその地域に応じた条件整備をしていただきたい。

(3)新しい時代に求められる資質・能力を育成していくためには、知識の量や質の両方が重要でその両方を充たす教育課程を編成していく必要があることから、中・高学年の授業時間数を一単位時間増やすとのことである。しかしながら、教員が今でも多忙化しており、また、人的配置やICTの整備も含めた環境整備状況は地区や学校において、かなりの差が生じている。審議のまとめを踏まえ期待している成果につなげるためには、人的配置と環境整備等は欠かせないと考える。

2 学習指導要領等の枠組みについて

(1)学校の教育活動を学校、家庭、地域等との連携・協働という視点を重要視し推進していくためには、学習指導要領や教育課程が学校だけのものではなく、教育に携わる人すべてが共有できるものであることが大切である。そうなるためにも学習指導要領がその指標となる「学びの地図」として作成されるよう期待している。ただ、カタカナ語を含め教育の専門用語が多くあり、教員をはじめ教育関係者でも用語の共通理解が必要なのが気になる。また、法的に大綱的基準としての性格を有する学習指導要領の示し方については、具体的な指導法等について画一化されることがないように、加えて、学校や教員の裁量に基づく多様で創意工夫ある取組ができるようにお願いしたい。

(2)全ての学習の基盤となる力や様々な諸課題に対応できる資質・能力を育成するためには、教科・領域等で育成できる資質・能力はもちろんのこと、教科・領域等を越えて教育課程全体を通じて育成していくことが必要である。その視点で効果ある取組がされるよう、教科・領域等間の関係及び教科横断的つながりを具体的に明示していただきたい。

(3) 教科等の枠を越えて、言語能力や情報能力を育成していくことがとても重要である。特に、言語能力については、多くの学校で研究を進め、成果を上げている。情報教育も同様ではあるが、プログラミング教育については、その教育の意義や具体的な取組等について、学校現場では情報が不足しており、不安が大きい。今後、まず、プログラミング教育の内容等について、だれもが理解できる十分な説明が必要と考える。

3 「カリキュラム・マネジメント」の確立について

(1)今までの学習指導要領は各教科・領域等の内容を中心にしながら作成されてきている。しかしながら、今般、学校教育において、いじめ防止対策の取組、虐待に関わる対応、食物アレルギーへの対応等も重要視されてきている。つまり、教育課程編成には、「リスク・マネジメント」の範囲まで求められている。この取組は、家庭・地域や関係機関との連携・協働の教育活動が多いので、「学びの地図」ということであれば、その点も明示にしておく必要があると考える。

(2)「カリキュラム・マネジメント」の三つの側面の一つとして示されている「各教科等の教育内容を相互の関係で捉え、学校教育目標を踏まえた教科横断的な視点で、その目標の達成に必要な教育の内容を組織的に配列していくこと」については、とても重要な視点である。学校において、実際に効果ある取組をするためには、学校や教員の「カリキュラム・マネジメント」する力、そして、教員の指導力が重要となる。それを見据えての教員研修や参考となる事例集等の情報提供をお願いしたい。

4 授業改善(「アクティブ・ラーニング」の視点)について

これからの社会を自ら切り拓き生きていける力を身に付けることができるよう、学校教育において、深い学び等を実現することが、最も大切にすべき大きな課題である。そのための、指導法の改善の視点として、児童が主体的・能動的に学ぶなどの「アクティブ・ラーニング」を意識した授業はとても重要である。ただ、教員がその指導法(形式的な協働的な学習や対話を取り入れた学習等)の型のみを理解し、その本質に迫ることができなければ、「画竜点睛を欠く」という状況になりかねない。今後、全連小でも、機会あるごとにそのことの周知を図っていきたいと考えるが、その本質を確実に伝えるとともに、授業改善につながる研修をはじめ、「アクティブ・ラーニング」につながる教材開発や環境整備等をお願いしたい。

5 資質・能力の三つの柱と評価について

育成を目指す資質・能力を、学校教育法第30条第2項が定める三要素と連動させたことについての異論はない。ただ、学校教育法の三つ目の要素の「主体的に学習に取り組む態度」については、同様な文言(内容)にせず、「学びに向かう力・人間性等」となった。しかし、評価については、「学びに向かう力・人間性等」は、観点別学習状況の評価にはなじまないとのことから、「主体的に学習に取り組む態度」にしてある。教員の中で認識の違いが生じないよう、わかりやすく趣旨を周知していくことが必要である。また、今まで4観点の枠組みで実施してきた「関心・意欲・態度」の観点については、本来の趣旨とは異なる表面的な評価が行われているという指摘がある。今回は、「主体的に学習に取り組む態度」について、各学校が子供の姿や地域の実状を踏まえて、何をどのように重視するかなどの観点から明確化していくことが重要であると示されているが、「関心・意欲・態度」の評価の指摘のようなことが再度ないように、具体的で丁寧な説明が必要であると思われる。

6 外国語教育について

(1)小学校中学年及び高学年において年間35単位時間増となることについて、時間割編成を全小学校で一律の取扱いで行うのは困難である。そのため、地域や学校の実状に応じて弾力的な時間割編成で行えるようにするのは理解できる。ただ、現状においても、教員の多忙化は大きな問題である。さらに、外国語教育が導入されれば、教材研究・教材準備に割く多くの時間が必要となり、他教科の授業準備の時間や児童と向き合う時間などが更に少なくなることが憂慮される。したがって、教員の負担軽減ということだけでなく、外国語教育の質を高めるという視点からも、国の予算で専科教員やALT等の人的配置をぜひともお願いしたい。また、ICT教材の開発・作成、ICT教材が使用できる環境整備等を図るとともに、研修の充実や英語教育強化地域事業の拠点校などの効果ある実践事例や時間割編成の資料を提供していただきたい。

(2)次期学習指導要領に基づいた教育課程が平成32年度に完全実施となる。審議のまとめでは、中学年は外国語教育の素地を養い、高学年では外国語教育の基礎を養うとある。平成32年度に6年生になる児童は、次年度平成29年度の3年生、30年度には4年生である。中学年の素地を養う時期を飛ばすことがないよう、移行措置についてもしっかり検討し対応していただきたい。特に、先行実施に活用できる5・6年生の英語教材や3・4年生の外国語活動の教材をICT教材も含め早めの提供をお願いしたい。

7 特別支援教育について

障害者の権利に関する条約に掲げられたインクルーシブ教育システムの構築を目指し、児童の障害の状態や発達の段階に応じた指導や支援を一層充実させていく必要がある。そのためには、家庭及び学校、関係諸機関との連携を十分に図り、その児童の可能性を十分に発揮できる合理的配慮に基づいた指導法の工夫や人的・物的環境も含めた環境づくりが重要である。通常の学級において、障害の児童が在籍していることが多い。その児童の可能性を十分に引き出し伸ばすためには、教員の指導力や家庭の十分な理解、そして関係諸機関等の関わりがとても大切である。特別支援教育のより一層の充実のためにも、審議のまとめでも触れられている教員の指導に役立つ指導事例や家庭との連携の在り方の例示等、SCやSSW等の配置、通級による指導の充実等も含め十分な環境整備をお願いしたい。

8 終わりに

審議のまとめについては、多面的・多角的に教育の進むべき方向について、多くの示唆をいただいた。現在の社会状況を踏まえるとともに、未来の社会を見据え、今までの学校教育の成果と課題を浮き彫りにし、具体的方法論まで示していただいている。私ども学校を預かる校長として、その内容を実現するために力を注いでいきたいと考えている。学校において、毎日の授業を児童にわかるようにするために、教材研究・教材準備等に対し多くの時間を割き、また、いろいろな課題を抱えている児童やその保護者に丁寧に向き合い対応している教員があって、今の学校教育が担保されていることを忘れてはいけないと日々感じている。示された審議のまとめに即して、学校教育を充実・発展させていくためには、実際に指導に当たる教員等の力量の向上を含め学校全体の力も高めることは必須条件である。加えて、現有の教職員数や現在の環境整備の状況では困難が生じるため、研修の充実、人的・物的等の条件整備は欠かせない。審議のまとめには、そのことがよく記述されている。ぜひ、条件整備も含め総合的に体制等を整え学校教育が推進できるよう、お力添えをいただきたい。

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1.改訂の基本方針について

(1)今回の改訂は、幼児教育の質の向上をはじめ、高等教育を含む初等中等教育改革と大学教育改革、そして両者をつなぐ大学入学者選抜改革を一体的に進めていくことから、実効性の高い改革になることが期待される。

(2)「必要な諸条件の整備」については、地方財源のみに頼ることなく、国の予算を確保した上で確実に推進していただきたい。「業務環境改善に向けた取組」については、国民の理解と協力を得られる方策を勘案し、実効性のあるものにしていただきたい。

(3)「社会に開かれた教育課程」や「カリキュラム・マネジメント」については、教員がそれに専念できる環境整備が必要となる。これらの推進には教職員定数の拡充・改善や地域連携担当教員の加配、専門スタッフの配置、ICT環境などの条件整備がこれらを実現するための鍵を握ると思われる。

(4)次期学習指導要領がグローバル社会の進展や人工知能の飛躍的な進化などの社会の飛躍的な変化を見据えた基本方針として「何を学ぶか」「どのように学ぶか」「何ができるようになるか」という視点から改善を図った意義や意図は十分理解できる。今後、「何を」「どのように」「何が」が具体的に示されると思うが、それがないと教育現場よって学びの質の格差がかえって生じることが危惧される。

(5)「何ができるようになるか」「何を学ぶか」「どのように学ぶか」という視点が、これからの激変する社会を生き抜くための能力をはぐくむ授業づくりの重要な視点となることは理解できる。しかしながら、これらの視点を通して目指していく「未来の創り手となるために必要な資質・能力」とは具体的に何か、が見えてこないと、それらの授業づくりの視点が理想的な理念で終わってしまうような気がしてならない。この三つの視点は強く連動しているものなので、その根幹となる「未来の創り手となるために必要な資質・能力」をより具体化して共有化していく必要があると考える。

2.具体的な改善の方向性について

(1)特に中学校・高等学校の教職員の意識改革は、入試制度の改革によって進んでくる。考える力や課題解決のための方法を図る力を見るような入試内容であれば、自ずと学習方法や授業方法の工夫をされる可能性が高い。現在進められている高大接続改革とも歩調をあわせながら、高等学校の入試の改革も進めていく必要があると考える。

(2)「キャリア教育の中核となる特別活動について、その役割を明確にする観点から、小・中・高を通じて学級活動・ホームルーム活動に『一人一人のキャリア形成と実現(仮称)』を位置付ける」とあるが、人工知能の飛躍的な進化に伴うシンギュラリティー問題が重要課題となる中、子供たち一人一人が自らのキャリア形成に真剣に向かい合うことはこれまで以上に重要となる。「キャリアパスポート」の活用の促進が具体的にどのようなものであるか明確にしていく必要がある。

3.学校段階別の改善の方向性について

(1)小・中・高連携がより円滑にできるようになるためにも、教科等あらゆる教育活動におけるカリキュラム編成を推進してほしい。

(2)部活動について、教育課程との関連を図った指導の改善や休養日の適切な設定、持続可能な指導体制の構築など、現状の課題を示してその改善策について言及しているのは画期的であると思う。全日本中学校長会としても、これらの改善策について、「学校現場における業務の適正化に向けて」(次世代の学校指導体制に相応しい教職員の在り方と業務改善のためのタスクフォース報告 平成28年6月13日)に示された方策を含めて実現していくためには、国、教育委員会、体育関係団体と連携し、短期的・長期的な視点をもって、その具体化を進めていく必要があると考える。

4.その他

(1)教員の定数拡充・改善に加えて、「チーム学校」における専門性を有するSCやSSW、幼児教育における幼児教育アドバイザーの育成・配置など、体制整備を積極的に進められたい。

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「審議のまとめ」の内容の中で、各教科等における改訂の具体的な方向性については、教科等ごとの研究組織から意見表明を願うこととし、本協会としては「改訂の基本的な方向性」等の基本的な内容について意見を述べることとする。

1.これからの変化が予測される社会で生きる力を身に付けるために、「何を学ぶか」という指導内容の見直しにとどまらず、「どのように学ぶか」「何ができるようになるか」までを見据えて学習指導要領を改訂する。その柱として、「知識・技能の習得」、「思考力・判断力・表現力等の育成」、「学びに向かう力・人間性の涵養」を上げていることには賛同するものである。また、アクティブ・ラーニングの視点から授業改善に向けた取り組みを活性化していくことも必要であると考える。

本協会が実施した全国調査によると、「アクティブ・ラーニングの視点から授業改善を行う」ことと「学習内容の削減は行わない」こととの両立や、アクティブ・ラーニングが「学力(学力の3要素)向上」につながるのか、ということに不安を感じている学校が多数あった。多くの高等学校で、これを契機に授業改善を通して高校生の学力向上を図りたいという機運が盛り上がっている。今回の改革を成功させる上で、是非多くの学校が抱いているこれらの不安が解消できるような取り組みを今後積極的に行っていただきたい。

2.「審議のまとめ」でも指摘されているように、「歴史総合(仮称)」「生物」などの科目では、主たる教材である教科書で扱われる用語が膨大とならないよう配慮していただきたい。

3.新たに実施が検討されている高等学校基礎学力テスト(仮称)を、生徒の学力向上や学校教育における指導方法・指導内容の改善につなげるという趣旨には賛成である。

4.「審議のまとめ」にも書かれているように、次期学習指導要領等の理念を実現するためには、人材や予算、時間、情報、施設・設備といった資源の整備が不可欠である。とりわけ、「カリキュラム・マネジメント」の実現や、「主体的・対話的で深い学び」を実現するための授業改善や教材研究、学習評価の充実、生徒一人一人の学びを充実させるための少人数によるきめ細かな指導の充実などを図るための教職員定数の拡充を推進していただきたい。併せて、教員が担うべき業務に専念できる環境の整備等を積極的に推進し、教員がより良い授業を行うための準備や生徒と向き合うための時間を確保できるための改善策を進めていただきたい。

5.現実的な部分において、高等学校教育は大学等の入学者選抜方法・選抜内容の影響を受ける面が大きいことから、現在検討されている大学入学希望者学力評価テスト(仮称)や各大学等が実施する個別選抜の内容等の新たな大学入学選抜制度を、次期学習指導要領の方向性に沿ったものにしていただきたい。

その際に、一部の選抜は次期学習指導要領の方向性に沿ったものとし、他の選抜は従来通りの方法で行うなど、不統一な形式で入学選抜が行われると、受験生に混乱と負担が生じるなど高等学校教育全体に及ぼす影響も大きく、次期学習指導要領の基づく教育の定着に支障が生じることが予想される。このような事態を避けるためにも、学習指導要領設定者としての文部科学省が責任をもって、各大学の入学者選抜方法・選抜内容の方向性を適切に管理していただきたい。

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