いじめ認知件が過去最高 その現状をどう捉えるか?現場の取り組みは?

文科省の平成27年度児童生徒問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査結果(速報値)が10月27日に公表された。いじめ防止対策推進法が制定された影響もあり、いじめ認知件数が過去最高となった。だが、地域差は依然開いたままだ。この状況をどう捉えるのか、有識者の声を聞いた。またいじめや不登校対策に乗り出している教育現場の取り組みを追った。

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どう受け止めるべきか いじめ認知件数の地方格差
内田良名古屋大学大学院准教授

いじめの認知件数を見ると、都道府県格差がかなり大きいのに気づく。小学校と中学校それぞれのいじめ認知率(1千人あたりの件数)を算出してみると、小学校では、最大値は京都府の162.0件、最小値は佐賀県の3.0件。中学校の最大値は山形県の47.4件、最小値は佐賀県の5.2件である。

これらは「認知」の件数であるから、学校側がいじめに積極的に対応すれば、件数は増えていく。すなわち、いじめ認知率の都道府県格差が大きいというのは、疑わしき状況があった場合、ある県では学校がそれを「いじめ」と認定し、別の県ではそのようには認定しないのを意味する。

いじめは、発生そのものを防ぐこと以上に、発生した後に注意深くケアして深刻化を防ぐのが重要である。学校側には、いじめをしっかりと把握することが求められるだけに、この都道府県の認知格差は、重大な問題として受け止められなければならない。

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丁寧な問題把握と組織対応
横浜市の児童支援専任教諭

児童の問題行動を早期に発見して、組織的で細やかな指導を展開――。

横浜市教委では、全市立小学校341校に「児童支援専任教諭」を配置。同専任教諭の働き掛けで学校全体や保護者、地域との連携体制を構築し、いじめや不登校などの確実な問題把握、有効な組織対応を実現している。学区ごとの小中連携の中で、同専任教諭が中学校の生徒指導専任教諭と交流も深める。注意を要する児童生徒への指導点や配慮を共有し、円滑な小中接続や指導改善につなげている。

同専任教諭は現在、全市立小学校に1人ずつ置かれ、341人が活躍している。役割は、校内のいじめや不登校など児童の問題行動把握と対策、発達障害児への対応を中核的に担う。役割に専念するため、学級担任は持たず、授業の持ち時間も限定して取り組む。そのため、各校で高い指導力を持ち、校内で信頼される教員を任命。地域との広い関係づくりも求められる。

全担任教員や地域のスクールカウンセラーなど学校内外のさまざまな関係者との連携窓口役にもなる。児童や保護者などの困り感を的確に把握し、問題解決への組織的対応の中心的役割を果たす。自らが解決に動くより、関係者の仲立ちやコーディネーターとしての仕事に尽力するのが特徴。

平成18年、同市の小学校で児童の問題行動やいじめなどが拡大し、効果的な対策が模索された。小学校段階で、児童の発達に応じた確かな生徒指導を普及、展開し、早期の問題発見と組織的な指導を行えるようになるのを目指した。22年度から同専任教諭の段階的配置をスタート。26年度に全市立小学校での配置が完了した。

朝は全児童の登校を校門前で見守る。あいさつや声かけを通して、児童の細かな変調も把握する。給食時の教室訪問などでも、児童の様子を丁寧に見て取る。担任教員と学級状況について意見交換しながら、学級経営の改善について助言する。毎週定期的に、学区の中学校生徒指導専任教諭や地域の民生・児童委員などと情報交流する研修会に参加。中学校や地域とも連携を深め、幅広く継続的な子供の問題発見と支援を展開していく。

これまでの取り組みで、同市立小学校の児童1千人あたりのいじめ認知件数が、同専任教諭配置前の21年度が2.6件、26年度には9.7件と3.7倍に拡大。暴力行為発生件数は同693件から1655件と2.4倍増加した。

同市教委指導部人権教育・児童生徒課の蒲地啓子課長は「同専任教諭の活躍と幅広い組織的な目が広がる中で、児童の問題行動の軽重にかかわらず、詳細な問題認知と発生状況の把握が進んだ」と意義を指摘する。

詳細な問題把握によって効果的な対応策も生まれる。同市立小学校のいじめの年度内改善率では、21年度の88.9%から26年度には99.8%へと向上。不登校児童支援の改善率では、59.7%が67.2%となった。

同課長は「同専任教諭の配置により、各学校で小学校段階で行う適切な生徒指導の意識と指導力、組織対応力が育まれた」と語る。市が作った子供の社会的スキル向上プログラムとアセスメントなどを同専任教諭が有効に生かし、問題行動の未然防止対策を深化させていきたいとも話す。

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