いじめについて改めて考える~防止対策推進法3年目を迎え~

いじめ防止対策推進法施行から3年。10月27日に公表された文科省の平成27年度児童生徒問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査の結果(速報値)では、いじめの認知件数は全国で約22万件と過去最高となった。同法が見直しの時機を迎えたいま、同法の現状と課題を考えるシンポジウムが開かれたほか、同省の有識者会議が情報共有義務化などの提言を提出。有識者の声と合わせ、同法をめぐるニュースをまとめた。

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生徒の思いを大切に 校長としてできる支援

自身の学校の取り組みを話す亀田校長
自身の学校の取り組みを話す亀田校長

10月29、30の両日に開催された日本生徒指導学会第17回大会で、3年目を迎えたいじめ防止対策推進法の現状と課題について、シンポジウムが行われた。

亀田春彦神奈川県茅ヶ崎市立浜須賀中学校校長は、いじめ防止に向けた取り組みを話した。

同校では、平成25年度から「いじめ防止プログラム」を実施。具体的には、①1時間の全体講演会②各クラス4時間のワークショップ③8時間のスクールバディトレーニング――。講師は、特定非営利活動法人湘南DVサポートセンターの瀧田信之理事長や牧野真由加所員。

生徒は、どんな行為がいじめなのかを理解し、いじめの経験の有無をワークシートに記入。ワークシートを読み上げ、生徒同士で気持ちの共有を行っているという。いじめをなくすための自身の行動も話し合う。

③では、生徒自身が立候補し、▽いじめを未然に防ぐための企画立案▽学校内外にいじめ防止を訴える▽悩み相談を受ける――活動を行っている。活動方針は「生徒の手でいじめを許さない学校を作る」。スクールバディルームの開設や、地域行事への参加、ゆるキャラ「浜須賀種子」を作るなど、積極的に活動している。

職員の知り得ないSNSなどの情報が生徒から入るようになったほか、バディルームが生徒の心の拠り所になっているという。「浜須賀種子」もいじめの抑止力に。

校長として行ったのは、▽市内全中学校と近隣小学校、保護者や地域に向けて参観を呼びかける▽ワークショップの様子を学級・学年・学校だよりに掲載▽生徒の負担への配慮▽地域の会合で、校長と講師で同プログラムの講演会を開く▽指導体制を整える――など11の活動。

課題として、教職員の負担や費用の問題などを挙げた。これまでは、県教委が予算を出していたという。

シンポジウムでは他にも、滝充文科省国立教育政策研究所生徒指導・進路指導研究センター総括研究官、千葉県総合教育センター研修企画部の大久保俊輝研究指導主事、原田和明神奈川県立学校長会議生徒指導研究会会長が登壇。東京家政大学の相馬誠一教授がコーディネーターを務めた。


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いじめ防止対策法で提言 座長が初中教育局長に手交

藤原初中教育局長に提言書を手渡す森田鳴門教育大特任教授(左)
藤原初中教育局長に提言書を手渡す森田鳴門教育大特任教授(左)

いじめ防止対策推進法の施行状況を検証している、文科省の「いじめ防止対策協議会」座長の森田洋司鳴門教育大特任教授が11月2日、学校内での情報共有義務化などを盛り込んだ提言書を、同省の藤原誠初中教育局長に手交した。

3年目を迎えた同法は、さまざまな課題が出てきており、同協議会が今後のいじめ対策の在り方を示した。

提言書によれば、校長などの管理職が情報を共有しやすい環境づくりに取り込む必要があるとして、学校内での情報の共有を義務化するよう明記。これまでは学級担任が抱え込み、重大な結果を招いたケースもある。

また平成26年度の調査結果を基に、いじめ認知件数の都道府県格差が約30倍あるなどの問題点を指摘。具体的な事例を示して、いじめの定義を明確化するよう求めた。さらに認知件数が低い自治体には、文科省が指導するとした。

これに加えて「教職員の日常業務は膨大」と、生徒指導の専任教員の配置や部活動の休養日を設けるなどして、教員の負担を減らす施策も提案した。

このほか、委員から「教育現場が萎縮する」などと指摘された、いじめの情報共有を怠った場合の処分については、提言書の欄外に「地方公務員法上の懲戒処分を受けた事例もある」との記載に留めた。

森田教授は「いじめ防止対策は、まだ道半ば。この提言を生かして対策に乗り出してほしい」と要望した。

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教員の気づきと周りの支援が大切
森田洋司鳴門教育大学特任教授

cu20161103_03――いじめの認知件数が過去最高となった。

子供を守る視点から、先生方がいじめへの気づきを高めていった。認知件数が高まったのは、子供たちの悩みを正面から受け止め、それに対応していく姿勢が、学校の中で全般に浸透してきた一つ現れである。肯定的に捉えたい。評価すべきだと思っている。

――約26倍の地域格差については。

いじめへの気づきや対応を続けながら、学校の教育力や対応力を高めていくのが大切だろう。

――本人からの訴えによるいじめの発見率について。

17.2%を少ないとは思わない。いじめは、本人の訴えがないからこそのもの。本人が訴えにくいのが中心にあるのは確か。周りからは本人の気持ちがよく見えない。中には、いじめられている子の気持ちを理解できない子や理解しない子もいるだろう。そういうところで悲劇が起こってくる。だから、周りがどれだけその子をサポートするかだ。

先生方は、その子供たち一人ひとりの声や悩み、苦しみをどうやって汲み取っていくか。その力を高めていかざるを得ない。周りにいる友達や親御さんは、いじめに気がついて先生方に知らせる。そして、訴えやすい環境や相談窓口、雰囲気を作り出していくのが非常に大事だと思っている。

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