どう捉えるか 「答申」を全連小・全日中会長に聞く

12月21日に出された、次期学習指導要領に向けた中教審答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策について」を、教育現場ではどう捉えているか。管理職や教員はどう準備するべきか。大橋明全連小会長と榎本智司全日中会長にインタビューした。


大橋全連小会長

「校長は工程表を作り、教員と一緒に推進を」

大橋全連小会長
大橋全連小会長

次期学習指導要領は、2030年の子供を育てるという、社会を作る大きな狙いがある。2030年の世界を作っていくのと同じで、重要なものと受け止めている。

「社会に開かれた教育課程」とあり、先行き不透明な時代の中で、学校と社会の連携が求められる。教育課程を作る際に、教育目標は、家庭や地域と共通の理解を持って共有していくのが必要だろう。いま以上に、家庭や地域の思いをくんで、学校教育に反映させなければならない。

またカリキュラム・マネージメントには、「社会の資源を有効に使っていく」とある。地域の人材や環境をうまく教育課程に取り込んで、効果的な教育ができるようにしていかなければならない。

「主体的・対話的で深い学び」が今回の改訂の中心になるが、いまのうちに全教職員が、具体的にその姿の共通理解を持たなければいけない。これは授業を通してやっていくしかない。研究授業などで、児童のどういう姿が「主体的・対話的で深い学び」なのか、共通理解すること。そしてそれを、教育課程や指導計画に落とし込む作業になる。

さらに時間数。特に、教科としての外国語(英語)が高学年で週1時間多くなる。これをどのように時間割の中に位置づけるかが課題になる。指導する教員の力の育成や、ALTの配置が課題になると考えている。

これまで多くの学校では、教科書が決まった段階で、教科書の単元配列に授業時数を落とし込んで教育課程だとしていたと思うが、今回はそれでは内容的に不十分だ。答申にある内容をきちんやっていこうとすると、時間的にも不十分だと思う。

来年3月に告示されたら、4月から全教職員で答申と指導要領、特に総則を読み込まなければならない。改訂の趣旨や背景にあるものをしっかりと踏まえて、教育課程を編成しなければならない。

学校の教育目標の見直しも必要になるし、より具体的にどういう力を育成するのかという共通理解が必要だ。

各教科での育成すべき資質能力を明らかにし、それを教科間で相互に関係づける。教科を超えて育成する能力を明確にするために、全体計画を作っていく必要がある。

同時に、時間割編成にあたって、生活時間など、さまざまな見直しが必要になる。例えば仮に、15分ずつの短時間学習にするとしたら、授業規律が確立しているかが課題になる。確立していなければ、違うやり方が必要になる。

校長は来年度から全面実施までの工程表を作り、教員にそれを示し、教員と一緒に押し進めていくべきだ。闇雲にやると、教員は何をしていいのか分からなくなる。手順を示す、向かうべきところを示すのが重要になってくる。

そういうことをして、2020年の全面実施に円滑に接続していくのが、いま求められていることだと考えている。


榎本全日中会長

「学校経営にどう生かすか、自分なりの考えを」

榎本全日中会長
榎本全日中会長

答申を読み、われわれ教員も社会に目を向けないといけないと、率直に思った。学校の中にいると、グローバル化や情報技術の急激な進歩などの社会の変化は、意識しないと見えてこない。いまの教育に何が求められているか、本来なら、われわれ学校関係者が一番敏感にならなければいけない。

評価したいのは、「学びの地図」という言葉。教育課程や学習指導要領という言葉は、一般から見ると、学校の専門用語で終わってしまう。「学びの地図」は、一般の方にも分かりやすく、オープンに感じられる。

「社会に開かれた教育課程」の実現は、外の風を学校に入れるだけでなく、学校の風を外に吹かせ、相互にやらないとうまくいかない。家庭や地域の教育力の低下が叫ばれており、現状のままでは、社会に開かれた教育課程が可能かと疑問だ。実現のために、いままで以上に学校の風を外に出していくべきだ。

また中学校の学級経営の充実がうたわれている点を評価したい。これまでは小学校にしか、学級経営の充実は入っていなかった。中学校でも、いじめや不登校などの課題があり、学級経営の充実が学力の向上にもつながるからだろうが、まさにその通りで、なぜ今まで触れられていなかったのかと思う。ことに若い教員が、教科指導だけでなく、学級経営の指導にも力を入れれば、中学校教育を発展させられると思う。

そして、教科書の作り方にも注目したい。変化のない教科は特に、教科書の作りをかなり考え、工夫しないと、答申が理念としているものの実現は難しいのではないか。もしそうした工夫がない教科書であるなら、若い教員に、その理念を実現する力量を求めるのには無理があると思う。その点が心配だ。

また深い学びについては指針が必要だと考える。総合的な学習の時間が導入されたとき、研究授業の大半では、子供が活動したり発表したりしていたが、「活動があって学びなし」という状態になってしまっていた。同じように、形式にとらわれた授業になってしまわないよう、気をつけなければならない。

教科外に関しては、特別な配慮を要する生徒への指導が入れられたのは、画期的だ。それだけそうした配慮が求められているのだと思う。

一方、部活動については、いろいろな場面で話題になり、議論されてきた。その割には、あまり触れられていない。多くの課題があるとされつつも、次の改訂まで、この状況でいってしまうのかと危惧している。

管理職と教員へのメッセージとしては、まず、われわれ管理職が、次期指導要領に向けた答申と、告示されれば本体をよく読み込み、学校経営にどう生かすのか、自分なりの考えをまとめて対応しないと、形だけのものになってしまう恐れがある。同時に、社会の動きにも敏感にならなければいけない。

教員にも、しっかり読んでほしいと思う。新しい教科書を待ってから対応すればいいと思うかもしれないが、せめて答申に目を通すだけでも、意識は持てるはずだ。

【関連記事】

◯【最新】次期学習指導要領の関連記事

関連記事