学校安全 どう取り組むか? 「第2次学校安全計画」答申概要

阪神・淡路、東日本、熊本などの大地震。発生が懸念されている東海・東南海・南海トラフの連動大地震。激烈な風水害。自然災害の猛威が各地に激甚災害をもたらしている。学校管理下での事故、通学路での交通事故なども、悲しいかな起きている。こうした中で、2月3日に手交された、第8期中教審最後の答申「第2次学校安全の推進に関する計画の策定について」は、学校安全計画や危機管理マニュアルの策定・検証を全ての学校に求めたほか、研修の充実や耐震化などの安全対策の実施について明記している。

今後、学校は安全確保などにどう取り組むべきなのか。同答申の概要全文を掲載する。


第2次学校安全の推進に関する計画の策定について(答申)〈概要〉
Ⅰ 児童生徒等の安全を取り巻く現状と課題

①学校管理下で発生する事故のデータや犯罪被害、交通事故、自然災害の発生状況を見ると、以下のように全体として児童生徒等が巻き込まれる事故等は減少しているところであるが、いまだ児童生徒等の安全が十分に確保されているとは言い難い状況である。

○学校管理下における事故については、平成27年度は死亡事故が63件、負傷・疾病が約108万件発生している。

○負傷・疾病の発生件数については、第1次計画期間を含め、近年減少傾向にあるものの、発生率は横ばいである。

○死亡や障害を伴う重篤な事故の発生件数は、突然死や歯牙障害を中心に、過去30年間で大きく減少している。

○交通事故による死者数は近年減少傾向にあるが、平成27年においても、100人以上が亡くなっている。

○災害安全については、東日本大震災以降も各地で地震や風水害などにより多くの被害が発生しており、近年では、災害の経験が少なかった地域においても災害が発生し、被害をもたらしている。

②学校安全の取組は、東日本大震災の教訓も踏まえながら、第1次計画期間中に強く推進されてきたところであるが、いまだ学校安全に関する方法論や体制等が確立していないことをはじめとして、以下のような様々な課題が存在している。

○安全教育や安全管理、家庭・地域と連携・協働した学校安全の推進に関し、地域間・学校間・教職員間に差があるとともに、継続性が確保されていない状況が見られる。特に、全体に占める割合は非常に少ないものの、法律上の義務である学校安全計画及び危機管理マニュアルをいまだ策定していない学校があることは極めて問題である。

○学校においては、全ての教職員が児童生徒等の安全教育や安全管理に携わらなければならないにもかかわらず、全ての教職員が十分な知識や意識を備えて学校安全に取り組んでいるとは言い難い状況にある。世代間や都道府県間、沿岸部と内陸部の間など、様々な差が存在することも事実であり、これらの差を解消し、全ての学校において、質の高い学校安全の取組を推進することが求められている

○安全教育は、学校教育活動全体を通じて系統的・体系的に実施することが求められるが、教育課程の編成、実施、評価、改善の取組や、指導方法の工夫改善の取組には、教員間、学校間の状況に差がみられる。このような取組状況の差を解消し、全国の学校において、質・量の両面で充実した安全教育を実施するためには、引き続き実践研究を積み重ねることなどの取組が必要である

学校施設の安全確保に関しては、これまで構造体の耐震化が進められてきた一方で、老朽化が深刻化しており、安全面・機能面の不具合も多く発生していることから、老朽化対策が急務である。また、私立学校については、国公立に比べて構造体の耐震化が大幅に遅れており、その早期完了が喫緊の課題である。

○学校では、児童生徒等の安全を確保するため、様々な安全上の課題に応じた危機管理マニュアルの策定や安全点検の実施がなされているが、それらが形骸化してしまうことの危険性や事故等が発生した後の検証が不十分であることの懸念等が指摘されており、外部の関係機関等とも連携して、学校安全に関するPDCAサイクルを構築し、対策を着実に実行することが求められている。

Ⅱ 今後の学校安全の推進の方向性

1.目指すべき姿

(1)全ての児童生徒等が、安全に関する資質・能力を身に付けることを目指す。

(2)学校管理下における児童生徒等の事故に関し、死亡事故の発生件数については限りなくゼロとすることを目指すとともに、負傷・疾病の発生率については障害や重度の負傷を伴う事故を中心に減少傾向にすることを目指す。

2.施策目標

(1)学校安全に関する組織的取組の推進

施策目標1 全ての学校において、管理職のリーダーシップの下、学校安全の中核となる教職員を中心とした組織的な学校安全体制を構築する。

施策目標2 全ての学校において、学校安全計画及び危機管理マニュアルを策定する。

施策目標3 全ての学校において、自校の安全教育に係る取組を評価・検証し、学校安全計画及び危機管理マニュアルの改善を行う。

施策目標4 全ての教職員が、各種機会を通じて、各キャリアステージにおいて、必要に応じた学校安全に関する研修等を受ける。

(2)安全に関する教育の充実方策

施策目標5 全ての学校において、学校教育活動全体を通じた安全教育を実施する。

施策目標6 全ての学校において、自校の安全教育の充実の観点から、その取組を評価・検証し、学校安全計画(安全管理、研修等の組織活動を含む)の改善を行う。

(3)学校の施設及び設備の整備充実

施策目標7 全ての学校において、耐震化の早期完了を目指すとともに、緊急的に取り組むことが必要な老朽化対策等の安全対策を実施する。

施策目標8 全ての学校において、地域の特性に応じ、非常時の安全に関わる設備の整備を含めた安全管理体制を充実する。
(4)学校安全に関する PDCA サイクルの確立を通じた事故等の防止

施策目標9 全ての学校において、定期的に学校施設・設備の安全点検を行うとともに、三領域(生活安全・災害安全・交通安全)全ての観点から通学・通園路の安全点検を行い、児童生徒等の学校生活環境の改善を行う。

施策目標10 全ての学校において、学校管理下における事故等が発生した場合には、「学校事故対応に関する指針」に基づく調査を行う。

(5)家庭、地域、関係機関等との連携・協働による学校安全の推進

施策目標11 全ての学校において、児童生徒等の安全に関する保護者・地域住民との連携体制を構築する。

施策目標12 全ての学校において、児童生徒等の安全に関する外部専門家や関係機関との連携体制を構築する。

Ⅲ 学校安全を推進するための方策

1.学校安全に関する組織的取組の推進

(1)学校における人的体制の整備

〈課題・方向性〉

○学校安全計画を策定している学校において、99.3%が学校安全の中核となる教職員を位置付けている。一方、優れた安全教育・安全管理の取組の多くは、一部の意欲のある教員によって担われているという指摘もある。

〈具体的な方策〉

○国は、学校安全の中核となる教職員が担うべき役割の明確化や組織体制の在り方を示し、人的体制整備に意欲的に取り組む学校への支援を行う。

○学校や学校設置者は、研修等を充実し、各学校における安全の取組を推進していくことが必要。

○学校は、家庭・地域との連携・協働に係る推進方策も踏まえつつ、地域人材等を活用した人的体制を充実する取組を進めることが必要。

(2)学校安全計画及び危機管理マニュアルの策定・検証の徹底

〈課題・方向性〉

○各学校においては、法律上学校安全計画等の策定が義務付けられているが、いまだ策定されていない学校がある。

○災害時の児童生徒等の引き渡し等について、保護者との間で手順やルールを決めている学校の割合は81.2%である。

〈具体的な方策〉

○学校安全計画や危機管理マニュアルは、策定するのみならず、実際の訓練等の結果を反映するなど不断の検証・改善が必要である。国及び教育委員会等は、各学校における学校安全計画等の策定を徹底させるとともに、検証・改善を促進する。

○災害時のみならず、日常的な安全教育推進に当たっても、保護者や地域住民との連携が不可欠であり、可能な限り学校安全計画や危機管理マニュアルの内容を保護者や地域住民と共有し、地域一体となった学校安全の取組を推進していくことが必要である。

(3)学校安全に関する教職員の研修及び教員養成の推進

〈課題・方向性〉

○全ての教職員が学校管理下における児童生徒等の安全に万全を期すという強い意識を持つとともに、児童生徒等の健康と安全を守る上で必要な基礎的な知識・技能を身に付けておかなければならない。

〈具体的な方策〉

○教員の資質・能力の向上に資するため、国は、教員がそれぞれのキャリアステージに応じて身に付けるべき学校安全に係る資質・能力の具体化・明確化を検討するとともに、教員を志す学生が身に付けておくことが望ましい資質・能力について整理し、その結果を教育委員会や教員養成を行う大学に提供する。

○教育委員会や学校は、研修において、外部機関の知見も活用しつつ、地域特性を踏まえた安全課題とともに、体育・運動部活動における事故防止のための適切な指導方法、食物アレルギーをはじめとする健康課題や自動体外式除細動器(AED)の適切な使用を含む心肺蘇生に関する適切な対応方法等に関する内容を扱うことが重要である。

2.安全に関する教育の充実方策

(1)「カリキュラム・マネジメント」の確立を通じた系統的・体系的な安全教育の推進

〈課題・方向性〉

○「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」(平成28年12月21日中央教育審議会)では、「健康・安全・食に関する資質・能力」について3つの柱で整理しており、安全に関する内容を示すと以下のようになり、各学校には、これを踏まえつつ地域の特性や児童生徒等の実情に応じた安全教育の推進が求められる。

【安全に関する資質・能力】

(知識・技能)様々な自然災害や事件・事故等の危険性、安全で安心な社会づくりの意義を理解し、安全な生活を実現するために必要な知識や技能を身に付けていること。

(思考力・判断力・表現力等)自らの安全の状況を適切に評価するとともに、必要な情報を収集し、安全な生活を実現するために何が必要かを考え、適切に意思決定し、行動するために必要な力を身に付けていること。

(学びに向かう力・人間性等)安全に関する様々な課題に関心を持ち、主体的に自他の安全な生活を実現しようとしたり、安全で安心な社会づくりに貢献しようとしたりする態度を身に付けていること。

〈具体的な方策〉

○系統的・体系的な安全教育を推進する上では、各学校における安全教育に係るカリキュラム・マネジメントの確立が不可欠なものであることから、国は、第1次計画の目標を踏まえて育成を目指す安全に関する資質・能力と、各教科等の内容や教育課程全体とのつながりなどについて整理・検討を行う必要がある。

○各学校においては、地域や児童生徒等の実情に応じて、各教科等の安全に関する内容のつながりを整理し、教育課程を編成することが求められる。

(2)優れた取組の普及を通じた指導の改善・充実

〈課題・方向性〉

○第1次計画期間中の取組により、各学校においては地域の安全課題に応じて、専門機関等と連携した教育や実践的な避難訓練等が行われてきた。体験的・実践的な取組は、全国的に広がっているものの、その取組状況には地域差があることも事実である。

○青年期にある中学生や高校生が、地域の安全課題に対して一定の役割を担い、その改善に貢献することは、生徒の自己肯定感の向上やキャリア意識の涵養につながると考えられる。このため、中学校や高等学校においても、積極的な安全教育の展開が必要である。

〈具体的な方策〉

○国は、教科担任制の中学校や高等学校も含め、教科等横断的な視点による系統的・体系的な安全教育が全国的に展開されるよう、先進的な取組を行う教育委員会及び学校を支援する。

○安全教育の効果的な実施に向け、教育課程や指導方法、指導体制などを不断に改善していく視点は必要不可欠であり、様々な試みを関係者間で積極的に共有しながら、その教育効果を検証し、効果的な在り方を見いだしていくことが必要である。

(3)現代的課題への対応

〈課題・方向性〉

○近年では、スマートフォンなど様々な電子機器からのインターネットの接続機会が増えるとともに、SNSの普及などインターネットを経由したコミュニケーションツールも多様化していることから、技術の進展に柔軟に対応した対策が求められる。

〈具体的な方策〉

○児童生徒等の情報モラルを育成するためには、教職員や保護者が児童生徒等を取り巻く
ICT環境の現状を正確に理解し、学校、家庭、関係省庁、企業、地域社会が一体となって取り組むことが重要である。

3.学校の施設及び設備の整備充実

(1)学校施設の安全性の確保のための整備

〈課題・方向性〉

○学校施設は、児童生徒等の学習・生活の場であるとともに、地域のコミュニティの拠点であり、災害時には避難所ともなることから、その安全性を確保することは極めて重要である。

○国公立学校の耐震化に比べ、私立学校については大幅に遅れている。

○国公立学校については、老朽化が進行した学校施設の割合が急速に増加している。

〈具体的な方策〉

○国公立学校における構造体の耐震化や体育館等の吊り天井の落下防止対策については、現行の方針に従い、引き続き推進すべきである。私立学校の耐震化については、国が集中的な財政支援を図っていくことはもとより、学校法人や都道府県とも連携し、きめ細やかな対応を行う。

○古い工法で設置されている非構造部材や経年劣化が進行している学校施設については、国及び学校設置者は、安全対策の観点から改修や建て替えなど老朽化対策を進めることが必要である。

(2)学校における非常時の安全に関わる設備の整備充実

〈課題・方向性〉

○外部からの不審者等の侵入防止の対策、災害等発生時の安全確保のための応急的な対応を確実に取ることができるよう、必要な設備を整備しておくことが不可欠である。

〈具体的な方策〉

○AEDや防犯設備等は、非常時に有効に活用できなければならないことから、定期的な点検・管理や複数配置を含む設置場所の適正化、教職員の使用訓練を行うことが必要である。

○学校及び学校設置者は、災害時における児童生徒等に関する情報の散逸防止、災害時の業務継続や教職員の負担の軽減等の観点から、クラウド・コンピューティング技術等も活用した情報管理や、ICTの活用による安否情報の確認等、学校における ICT 活用を推進することが必要である。

4.学校安全に関するPDCAサイクルの確立を通じた事故等の防止

(1)学校における安全点検

〈課題・方向性〉

○学校においては、学校保健安全法に基づき、当該学校の施設及び設備について、毎学期1回以上の安全点検を行わなければならないこととされているが、一部の学校ではあるが、実施されていないことは問題である。

〈具体的な方策〉

○学校は、施設及び設備、通学・通園路、学校の危機管理体制などの点検を行うに当たっては、自己点検だけではなく、それぞれ外部の有識者や関係機関と連携し、専門的・科学的な視点を積極的に取り入れていくことが必要である。

(2)学校管理下において発生した事故等の検証と再発防止等

〈課題・方向性〉

○平成28年3月に学校管理下で発生した事故等に対し、学校及び学校の設置者が適切な対応を図るための「学校事故対応に関する指針」を取りまとめたところであるが、学校における認知度が低い等の課題が指摘されている。

〈具体的な方策〉

○学校及び学校設置者が、学校事故対応に関する指針を十分に理解し、適切な対応を行うことができるよう、周知・研修を推進する必要がある。

○学校管理下における事故等の未然防止や被害軽減のため、学校及び学校設置者等は、アレルギー等の健康課題への対応も含めた事故等への対応に係る研修・訓練を実施することが必要である。

5.家庭、地域、関係機関等との連携・協働による学校安全の推進

(1)家庭、地域との連携・協働の推進

〈課題・方向性〉

○近年、学校が抱える課題が複雑化・多様化しているが、特に児童生徒等の安全に関する課題については、平素からの学校と地域の人々との関係づくりが児童生徒等の命や安全を守ることにつながることからも、家庭や地域と連携・協働した取組の推進が求められている。

〈具体的な方策〉

○学校においては、コミュニティ・スクールや地域協働本部等の仕組みを生かして、学校安全の観点を組み入れた学校運営を行うことが必要である。

○日常におけるルールやマナーを遵守することは、児童生徒等自身にとっての安全を確保する上でも非常に重要な要素であり、それらの基礎は家庭において育まれる部分が大きいことから、家庭も責任を持って学校と一緒に安全教育に取り組んでいくという考え方を共有することが重要である。

○国は、保護者や地域住民、外部専門家、関係機関等が連携して学校安全の取組を進めるための仕組み作りを支援する。

(2)関係機関との連携による安全対策の推進

〈課題・方向性〉

○児童生徒等の安全に関する課題には、学校だけでは対応が困難なものも多くあることから、引き続き、自治体の関係部局や関係機関と連携を図ることが重要である。

〈具体的な方策〉

○学校及び学校設置者は、地域の自然条件等に関して専門的知識を有し、活動を行っている関係機関・団体や民間事業者と連携して、効果的な取組を進めていくことが必要である。

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