“天才”のいる学級の経営 藤井四段の担任教諭に聞く

もし“天才”の担任になったら、どう接し、どうサポートし、生徒指導や学習指導をどうしていくのか――。

史上最年少プロ棋士の藤井聡太四段は、6月15日現在、デビュー戦からの公式戦連勝記録を26に伸ばした。この時点で、歴代連勝記録単独2位。まさに破竹の勢いで棋界と世間を席巻している。だが日常では、名古屋市にある名古屋大学教育学部附属中・高校(中嶋哲彦校長、生徒600人)に通う、“普通”の中3だ。この4月から藤井君の担任を務めている大羽徹教諭に、担任としての心境や、学級経営の現状などを聞いた。


なぜ宿題が必要か30分話し合う
担任の大羽教諭
担任の大羽教諭

同教諭によると、藤井君のクラスでの様子は、対局の姿と同じ。謙虚で礼儀正しく、冷静に相手と接する生徒だという。「対局した方や先生から、自分はまだまだ学ばなければという思いが本人に感じられる」と語る。

そのため、天才といえども、教員側が構えなければいけないようなことはなく、「担任に決まった際も、特に意識はしなかった」と振り返る。それは今も変わらないという。

それでも、対局日の前後で気を使ったりはしないのか。

「対局前日に声を掛けると、『ありがとうございます。頑張ります』と笑顔で返してくれる。勝った日の翌日に、クラスメートから『おめでとう』と言われると、はにかんで『まぁ』と答えるなど、普通の中学生の反応。将棋を知らなければ普通の生徒だと思う」と、教員や級友が緊張を強いられるような場面はないという。

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授業態度も熱心。興味がある科目は「総合人間科」で、対局時と同様に、前のめりになって授業を受けている。

40人学級だが、級友たちは、そんな藤井君の活躍を認めつつも、特別な存在とはせず、他の生徒と同じように接しており、学級経営の苦労もないように見える。

とはいえ指導面では、藤井君に限らないが、教員にも真摯さが求められる。

藤井君はこだわりが強く、自分が納得できないときには、納得いくまでこだわり抜く。

同教諭は担任になったばかりの4月当初、藤井君から「なぜ宿題をやる必要があるのか」と問われた。そこで同教諭は、学年代表の教諭を交えて藤井君と3人で、宿題の意義について30分間、話し合った。

「なぜ、やらなければならないのか」「宿題も授業のうちに入るのではないか」と聞く藤井君に、同教諭は「授業の中では理解が十分ではないところもあるので、十分になるように宿題を出している」と説明。藤井君は「理解を助ける上で必要」と、宿題の意義を理解し、以降はしっかりと取り組むようになったという。

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自分が納得できるまで、とことん追求する姿勢。それが、将棋の強さに結び付いているのかもしれない。

「将棋以外に好きなことは」と問うと「将棋」。「もう一度何かをやるとしたら、何をやりたいか」と問うと「将棋」。そう即答する藤井君を今後、担任としてどうサポートしていくのか。

「対局などで学校を休む場合のフォローは、たいへん重要。クラス全体の1人という意識を持ちながらも、休んだ後には必ず声掛けをしたり、授業の補足をしたりするなどして、しっかりと学校生活をサポートしていきたい」と語る。