文科大臣就任から約1カ月 林芳正大臣に聞く

cu20170911クローズアップ月曜・大臣教員に求めるものは「使命と責任感、そして『仁』」

「『仁』を、生徒、子供に対する愛情を持っていただきたい」――。林芳正文科大臣の就任から、約1カ月が経った。あらためて本紙は林大臣に、教育観や、教員に求める資質・能力などを聞いた。(聞き手・小木曽浩介教育新聞編集部長)

――自身の教育観は。

教育のスタートは、やはり家庭だと思う。最初の段階での家庭が大事だ。私の場合は、小学校の始めくらいだったと思うが、机に座る習慣を母と付けた。まだ幼かったので、まず、とにかく座るところから始めた。今から考えれば、とても大事だったと思う。

そこから始まり、学校から帰ってきたら夕食まで何をするかなど、小学校の頃は学校から言われて、1日の時間割を作っていた。規則正しく時間を使うためだ。それが今度は1週間、次は1カ月となっていき、その基本的な習慣、学ぶための習慣が身に付いたと思う。

また、社会人から大学院に留学したときの経験だが、やはり学ぼうという意欲が重要だと思った。小、中、高校、大学と、学生しか経験していないときの学びと、社会人を経験してからの大学院での学びでは、自分の内発的なインセンティブというか、「やろう」という意欲が随分違っていた。

やはり、「こうなりたい」「これをしたい」「学びたい」という、内発的な意欲があるかないかは、とても大事なことだと思う。好きでやることは、やはり身に付く。同じ時間をかけても、おそらく密度が変わる。そこが大事なのだと思う。

そしてマクロな視点で言えば、これから10年、20年、30年先に、日本や世界の社会がどういう形になっていくのか。シンギュラリティといわれているから、そういう社会の中で、どういう人材が必要になってくるのかをよく考えてやっていくのが、教育にとって非常に大事なことではないかと思う。

――教員に求める資質・能力は。

(地元山口県の偉人である)吉田松陰先生が一番良い例かもしれないが、使命や、責任感だ。

それから昔風に言うと「仁」。子供に対する愛や、育てたいという気持ちは、どうしても生徒に伝わる。

その次に、専門的知識や教え方だ。

それらはある意味、不易な部分だ。

流行の部分で言えば、先ほど言った新しい社会に対してどう備えていくかなどだ。

それから日本がだんだん成熟した社会になってくれば、昔のように卒業、就職、終身雇用というモデルではないキャリアが出てくると思う。

いろいろなタイプの人が、これは特に高等教育だが、リカレントで入ってくる人もいる。

私も留学中に、先生よりも年配の生徒さんがいらっしゃるという環境を経験して、最初は驚いた。

しかし考えてみれば、松陰先生のところも年齢に全く関係なく、お互い学び合うということでやっていた。そうしたことにも対応できるということから、新しいものが出てくるんじゃないかと思う。

――8月30日に公表した文科省の平成30年度概算要求では、教員の多忙化対策に力点を置いている。

教員に本来やるべきことに集中していただける環境を、どうやって作っていくのかが大事なポイントだ。

長時間勤務は、義務ではない部分によるところが大きい。生徒のためにという気持ちで、やっておられるところがある。

たとえばクラブ活動にしても、先生が一緒になってやってくださるのは非常に良いことだとは思うが、自分がまったくやった経験のないスポーツを指導するとなると、負担感は大きいと思う。

教員が専門でない、不慣れなところで時間が費やされないようにしなければいけない。

専門家も入れたチームでやっていく体制を目指していく。

――いじめ対策は。

やはりまだ、いじめの実態と、その把握にギャップがある。児童生徒側から見れば、9割近くが経験しているという調査がある一方で、いじめを把握していない学校側、教育委員会側が3、4割でした。まず、そのギャップをどのように埋めていくのかがある。

許されないことではあるが、どこでも起こり得るという認識を当事者がしっかりと持っておく。

その上でやっぱり絶対に許されないことであるから、加害者にも被害者にも傍観者にもならない。これを徹底していかなければいけない。

今度は道徳が「特別の教科」になるし、24時間子供SOSダイヤル、スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーの配置に加え、文科省の職員が直接、教委の担当者や校長に、基本認識を含めて説明するという取り組みをしている。

3月には、いじめ防止対策推進法の施行3年をめどにした見直しの規定に基づき、いじめ防止のための基本的な方針を改訂した。そして、いじめ重大事態の調査を適切に行うなど、反省を込めて初めてガイドラインを策定した。

いじめに適切に、しっかりと対応していただけるように、現場の取り組みを支援していきたい。

――教員へメッセージを。

文科省はこの1年、いろいろな不祥事もあって、落ち着かない状況があったかもしれない。しかし、いま申し上げたようなことを着実にやっていき、文科行政に対する信頼を回復していきたい。

また先ほど申し上げた、チームでやっていただくためのさまざまな施策も、今までもやってきたものはもちろん、新しくやるもの、強化するものなど、進めていこうと思っている。

ぜひ仁を、生徒、子供に対する愛情を引き続き持っていただいて、教育に専念していただけたらと思う。

教育の大切さは自明。教員の皆様はぜひ、大事な仕事に携わっていると、誇りを強くしていただきたい。誇りは持っておられると思うが、さらに強く持っていただきたいと思う。