課題と解決に向けた展望 平成28年度問題行動等調査の結果から

文科省が10月に公表した平成28年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」では、▽いじめの認知件数の大幅な増加▽暴力行為の発生件数の増加――などが傾向として見られた。いじめ、不登校、自殺、暴力行為の4テーマの、課題と解決に向けた展望を、嶋﨑政男神田外語大学客員教授が論じる。全4回。


問題行動の課題と解決に向けての展望①
神田外語大学客員教授 嶋﨑 政男

海面下に隠れた部分を凝視して

10月27日、各紙の朝刊は平成28年度問題行動等調査結果を一斉に伝えた。「いじめ認知最多32万件」「いじめ把握自治体注力」等の大きな活字が並び、その要因として、学校の積極的認知を挙げる論調が多かった。「『隠蔽体質』からの脱却は一応評価しますよ」というものだ。

そんな中、ひと際輝きを放っていたのは、「指導の『内実』向上を」と題した次の一文である。

「いじめの件数を報告するという『形』が優先され、指導の『内実』がついていかなければ本末転倒だ」(朝日新聞)

こんな事例がある。小学生女児が同級生の挨拶の声が聞こえず、返答しなかったところ「無視された」と罵詈雑言を浴びせられた。男子中学生が運動会練習時に「がんばれよ」と声を掛けたら、「走るのが苦手と分かっていながら嫌味を言った」と毎夜抗議の電話を受けた。

いずれも行為者はいじめの被害を訴えた子の保護者である。学校は保護者間の「仲裁的役割」を担うことになり、多大な時間と労力を要した。子供同士の「対話」による解決は選択されず、大人同士の「激論」が続けられた。この事例のように、保護者からの訴えによる認知件数の増加が予測される。こうした事例にどう対応したらよいか、今後の大きな課題である。

もう一点懸念がある。「小さなサインに大きな問題」と言われるように、教職員にはいじめを鋭く把握する鋭い感性が求められるが、問題はその姿勢である。

例え話によく使われる言葉に、「氷山の一角」がある。今、教職員に求められているのは、海に潜り、氷山の海面下に隠れた部分を凝視するという作業に模される。

「いじめ撲滅と認知件数の上昇」という、「ダブルバインド」(異なるメッセージを同時に発すること)という重いボンベを背負っての難作業である。

軽微ないじめを拾い上げることは今後も重視されなければならない。しかし、その間に「氷山の一角」が融解してしまったら元も子もない。まさに「本末転倒」である。