新作映画『ニッポンの教育~挑む 第二部~』 教育実践研究家 菊池省三氏に聞く

〇チラシ 菊池先生インタビュー 映画編「変わりづらい指導観、授業観に、『挑む』のを伝えたい」
教育実践研究家 菊池省三

〝ほめ言葉のシャワー〟で知られ、本紙で『「成長の授業」を創る―菊池実践11の柱―』を連載中の、元小学校教員で教育実践研究家の菊池省三氏のドキュメンタリー映画『ニッポンの教育~挑む 第二部~』が完成した。

12月16日からは、東京都杉並区のユジク阿佐ヶ谷で、終了日未定のロングラン上映を開始。その他の上映予定も随時、特設ページで発表される。

同作の舞台は、教育維新を合言葉に、教育・子育てを主軸にしたまちづくりに取り組む高知県いの町。菊池氏は平成28年4月に「いの町教育特使」に就任し、毎月5日ほど同町に滞在して、町内の学校で授業をしたり、教員を指導したりしている。同作はそうした「菊池学園」の1年を記録した、長編ドキュメンタリーだ。

同作について、菊池氏に聞いた。


〇左肩2 菊池先生インタビュー 映画編――いの町の教育特使に就いた経緯は。

教員として現役だった5年前、私が出たテレビ番組を見た教育委員会の関係者から、「いの町に来てくれないか」というオファーがフェイスブック経由で届きました。当時、いの町の学校は荒れていたそうです。愛媛生まれの私としては、同じ四国ということもあって、「いいですよ」と何気なく応じました。

その後、教員研修に毎年呼ばれるようになり、一昨年には3日連続で授業しました。

そのときの様子を教育委員が見ていたようで、それを機に、いの町が教育で地方創生を進めることになり、私を町に呼ぶ話が持ち上がったと聞いています。

町全体を「菊池学園」という構想で捉え、教育で町おこしをやろうとなり、私も承諾しました。平成27年3月に退職したときには、まだ話は決まっていませんでした。

――就任後の活動内容は。

「ほめ言葉のシャワーのまち、いの町」というキャッチコピーで、さまざまなことに取り組んでいます。「菊池学級」を小・中学校で開き、授業をしたり、参観したりしています。また、高知県内の教員養成大学の学生に「教師のたまごセミナー」を行い、教員の仕事の魅力や面白さを伝えています。こうした取り組みが、学生の町移住につながると思っています。

さらに「大人版菊池学級」として、いの町の学校関係者と町民を対象に、「寺子屋」と称した有志の勉強会も開いています。

活動は年間50日ほどになります。自宅は北九州にありますが、主宰する菊池道場のセミナーや講演会などもあり、昨年度は3週間ほど帰っただけで、いの町にいる日数のほうが長いです。

指導法としては、子供が成長、変容していく部分にスポットを当てて、考えることを大事にしています。

――映画には授業態度がよくない児童も出てきますね。

授業中なのに、ボールを持って勝手に出て行こうとする。「駄目だ」と注意すると、こちらに聞こえないように文句を言っていましたね。

しかし、そのときの授業は、いわゆる「正解を求める授業」でした。

従来の指導に基づいた知識重視の教育をやっていると、「分からない、できない、したくない」と思う子供の行動はエスカレートしていきます。

あるいは、教員が「気になる子供」にレッテルをはって増やしていく。

これでは負の連鎖しか生まれないのではないでしょうか。

教員が授業観を変えないと、子供は変わりません。これからの子供たちに合った学び。これからの時代を生きる人間に必要な学び。それはどうあるべきか。

その子の学年、状況に焦点を当て、教員が授業に活動的な学びを取り入れていく必要があります。教員と子供の関係がうまくいっていなかったら「ほめ言葉のシャワー」は成立しません。

――映画を通して伝えたいことは。

合計で300時間以上撮ってもらいました。変わりたがらない教員、「気になる子供」の存在、それらに苦労しながらも闘っている教員。日本の教育現場の事実が撮られています。

変わりづらい指導観、授業観に対して「挑む」という考え方を伝えたいと思っています。

「これからの時代を生きる子供たちに合ったものに変えていこう」「これからの教育のあり方を考えよう」というメッセージが込められています。

教員だけでなく、教育に関わる社会人や保護者、子供たちにも見ていただきたいです。


◇プロフィール◇
愛媛県生まれ。山口大学教育学部卒業。北九州市の小学校で33年間勤務。現在は、教育実践研究家として、全国で年間200カ所での講演活動などを行っている。全国ネット菊池道場・道場長、高知県いの町教育特使などを務めている。著書多数。

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