詳報 学校の働き方改革中間まとめ

12月22日の第114回中教審総会で承認された「学校の働き方改革」中間まとめは、複雑化・多様化する学校の課題に対し、従来の日本型学校教育が限界を迎えていると指摘。教員の長時間労働の是正や、持続可能な勤務環境の整備に向けた具体的な方策を提言した。


教員の負担増の要因

中間まとめでは、教員の勤務実態の状況から、▽小学校では学級担任制のため、児童在校中の休憩時間の確保や、校務・授業準備を行う時間がない▽中学・高校では、生徒指導や進路指導の業務負担に加え、補習や部活動の時間が長い▽授業以外の業務が多岐にわたり、学校における課題が複雑化し、質的・量的に教員だけで対応しきれない――などの課題を挙げた。

こうした経緯を踏まえ、学校における働き方改革では、(1)学校および教員が担う業務の明確化・適性化(2)学校の組織運営体制の在り方の見直し(3)勤務時間の在り方に関する意識改革と制度面の検討(4)学校種や学校の設置者の違い――の4つの視点から、総合的な改善策をまとめた。

学校・教員が担うべき業務の明確化
参考資料:検討された各業務の位置付け
参考資料:検討された各業務の位置付け

まず、学校が担うべき業務を、(1)学習指導(2)生徒指導・進路指導(3)学級経営・学校運営業務――の3つに大別した。日本の学校や教員がこれまで担ってきた業務は、諸外国と比べて多岐にわたり、範囲も曖昧で、教員以外が担う方が効果的な場合や、必ずしも教員が担う必要のないもの、法令で位置付けられておらず、半ば慣習的に行われてきたものも含まれているとした。そこで、次の業務について、個別具体的に検討を進めた。

(1)登下校に関する対応(2)放課後の見回り等(3)学校徴収金の徴収管理(4)地域ボランティアとの連絡調整(5)調査・統計への協力(6)児童生徒の休み時間の対応(7)校内清掃(8)部活動(9)給食時の対応(10)授業準備(11)学習評価・成績処理(12)学校行事等の準備運営(13)進路指導(14)支援が必要な児童生徒・家庭の対応。

その結果、(1)~(4)は学校以外(自治体、教委、保護者、地域など)が担うべき業務、(5)~(8)は学校の業務ではあるが、必ずしも教員が担う必要のない業務、(9)~(14)は教員の業務であるが、負担軽減が可能な業務であると整理した。

また、授業についても、標準授業時数を上回って教育課程を編成している場合などで、指導体制の整備が伴わないまま実施すると、教員の負担が増加すると指摘した。

(1)登下校に関する対応

学校が安全指導の観点から通学路の設定や安全点検に努める必要がある。ただし、登下校時の見守り活動は、保護者や地域、関係機関と連携し、それらが中心となって行う方が効果的だとした。登下校は、教職員の勤務時間を踏まえた合理的な時間を設定すべきだとした。

(2)放課後などの見回り

非行や事故の防止を目的とする放課後や夜間の見回りは、実施の必要性を教委が精査した上で、警察や地域ボランティアの協力を得て実施すべきだとした。また、児童生徒が補導された場合も、保護者が対応すべきとした。

(3)学校徴収金の徴収・管理

給食費や教材費、修学旅行費などは、銀行振り込みや口座引き落としによる徴収が増えつつあり、今後は、文科省がガイドラインを作成し、給食費を中心に公会計化を進めていく。未納金の督促なども、教員の本来的業務ではなく、自治体や事務職員などが担う。

(4)地域ボランティアとの連絡調整

ボランティアとの連絡調整は、地域学校協働活動推進員などが中心となって行い、学校側は主幹教諭や事務職員の校務分掌の中に、地域連携担当を位置付けるとした。

(5)調査・統計への協力

学校が担わざるを得ない業務であるが、教育課程の編成・実施や生徒指導など、教員の専門性に関わるもの以外の調査には事務職員が回答するなど、可能な限り教員以外の者が担うべきだとした。

文科省や教委も、学校を対象に実施している調査項目の洗い出しを行い、重複を避けるなど整理・検討を進める。研究指定校やモデル事業についても、教育課題の変化を踏まえて必要性を精選したり、計画書などの簡素化を図ったりして、負担を軽減する。

(6)休み時間の対応

安全確保の必要性や児童生徒理解、健康観察などに効果が認められるため、学校が担うのが現実的だとした。休み時間における児童生徒の事故を防止する注意義務は、教員がその業務を担うが、責任体制を明確にした上で、事務職員や地域ボランティアなどの協力を得ながら、輪番制で対応するなどの負担軽減策を促進する。

(7)校内清掃

日本では清掃指導を通じて、勤労の意義や奉仕の精神などを学んでいるため、教育的効果があるとした。ただし、各学校で合理的に回数や範囲を設定し、地域ボランティアの協力や民間委託の検討、輪番制の実施などの負担軽減策を求めた。

日常的な環境衛生の維持・改善活動は学校が担うべき業務であるものの、学校環境の日常点検は、できる限り教員に行わせないように努める。

(8)部活動

中学・高校における部活動は、運動部・文化部のいずれであっても、教員の負担軽減の必要性は共通すると強調。その上で、現行の学習指導要領での部活動の位置付けが「教育課程外であるが、学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意すること」とされ、ほとんどの学校で部活動が設置・運営されている現状がある。部活動にやりがいを感じる教員がいる一方、指導に必要な技能を備えていない教員が顧問を担う場合には、負担を感じていると指摘した。

部活動の顧問は、各校長が教員の専門性や校務分担の状況、負担の度合いなどを踏まえ、学校の教育方針を共有した上で、部活動指導員をはじめとした外部人材の活用を積極的に行う。部活動指導員を職員と位置付け、責任の所在を明確にして、大会の引率なども行えるようにする。その際は、現在スポーツ庁で検討が進められている「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」を順守し、部活動指導員の参画が教員の働き方改革につながる取り組みであることなどを条件とする。

また、部活動が維持できない学校では、複数校による合同部活動や統合型地域スポーツクラブとの連携を進め、大会などでもその参加を認めるよう求めた。

生徒のバランスの取れた健全な成長の確保の観点からも、部活動の適切な活動時間や休養日の基準を設定し、保護者にも理解を求める必要があるとした。一部の保護者による部活動への過度の期待の認識を変えるため、入試における部活動に対する評価の見直しなども検討すべきだとした。

部活動に注力しすぎてしまう教員の意識改革も必要で、教員採用の段階で部活動の指導力を過度に評価しないよう留意すべきだとした。

各種団体が主催する大会では、休日開催の状況が多い実情を踏まえ、現状把握と見直しを促す。

将来的に、教員は授業に注力できるようにし、地域で部活動に代わる質の高い活動の機会を確保できる体制を整え、地域単位の取り組みへの移行を積極的に進める。

(9)給食時の対応

給食指導と食物アレルギーへの対応が求められるが、栄養教諭とも連携し、学級担任の負担を軽減していくべきだとした。また、ランチルームでの複数学年一斉の給食提供などの工夫を行うよう求めた。

アレルギー対応では、安全性確保のため、施設整備や人員などを鑑みて、過度で複雑な対応を求めるべきではないとした。

(10)授業準備

授業準備は、教員の本務である授業に必要不可欠な業務であり、教材研究や指導案の作成などは教員が担うべき業務であるが、実験の準備や片付け、教材の印刷などは、理科の観察実験補助員やスクールサポートスタッフの活用を積極的に考えていくべきだとした。

また、効果的で過度な負担がかからない授業準備のために、▽ICT機器やOA機器の導入▽ICTを活用した教材や指導案の共有化▽都道府県教委による教材や指導案の共有化▽小学校外国語の教材は、文科省がデジタル教材や指導書、ワークシートなどの資料を含め開発を行い、希望する全ての小学校に配布――などの取り組みを促進・支援する。

(11)学習評価・成績処理

定期テストの問題作成、採点、通知表・調査書・指導要録の作成などの学習評価や成績処理は、教員が担うべき業務であるが、宿題の提出状況の確認、漢字・計算ドリルの丸付けなどの補助的業務は、スクールサポートスタッフの積極的な参画を検討すべきだとした。

また、新学習指導要領における学習評価の在り方は、指導要録の参考様式の大幅な簡素化を含め、効果的で教員に過度な負担をかけない方法を実現する必要があるとした。

(12)学校行事などの運営

学校行事の企画・運営、児童生徒への指導は教員が担うべき業務だが、準備などが教員の過度な負担とならないよう、地域の行事との合同開催や精選・簡素化を求めた。学校行事の物品の準備や職場体験活動の受け入れ先との日程調整、修学旅行の運営などは、事務職員や民間委託などの外部人材が担うべきだとした。

さらに、教科の学習に相当する内容が学校行事として行われていれば、積極的に教科の授業時数に含めるべきとした。

(13)進路指導

特に高校の進路指導では、就職先が多岐にわたるなど、必ずしも教員がその専門性を持っているとは言い難いと指摘。事務職員や民間企業経験者、キャリアカウンセラーなどの外部人材の活用を進めるべきだとした。

進路指導に関連した検定試験や模擬試験の実施における監督なども、可能な限り民間委託を進めるべきだとした。

(14)支援が必要な児童生徒・家庭の対応

児童生徒が抱える課題が複雑化・多様化しているため、教員の専門性とは異なる、より高度な専門性が求められるとした。そのため、スクールカウンセラー(SC)やスクールソーシャルワーカー(SSW)、日本語指導の支援員などが中心となって担うべきだとした。

また、保健室登校への対応なども増えており、養護教諭の負担軽減も検討課題とされた。

さらに、保護者からの過剰な苦情や不当な要求などへの対応が求められる場合や、児童生徒の問題に関して法的側面からのアドバイスが必要な場合もあるため、教委が支援体制を構築し、法的相談を受けるスクールロイヤーなどの専門家の配置を進めるよう求めた。

国が取り組む方策

国に対しては、学校・教員が担うべき業務の範囲を具体的に示した上で、その業務の範囲を学校現場や地域、保護者が共有できるよう、学校管理規則のモデルの作成を求めた。また、学校・教員が主として担う必要のない業務には、責任の所在も明確に示すようにする。

教委・学校における業務改善の事例を収集・周知し、研修などで活用しやすいような配慮もしながら、全国の教委・学校に業務改善の取り組みを促す。また、学校の業務改善の取り組み状況については、実効性を担保するために、市町村別の実施状況の公表も検討する。

学校などに対する調査・統計の精選を行うとともに、民間団体などが主催する子供向けのコンクールなどについても、学校の負担軽減に向けた協力を呼び掛ける。

文科省に、教員の正規の勤務時間や人的配置、業務改善の取り組みなどの状況を踏まえ、教員の業務量を一元的に管理する部署を設置する。今後、同省が学校に新たな業務を加えるような制度改正を行う場合は、既存の業務との調整や義務付けの必要性について検証を行い、関係部署と調整する体制を築く。

環境整備の面では、教職員や専門スタッフの充実による学校指導・運営体制の効果的な強化策として、▽小学校における英語専科や中学校の生徒指導担当の教員の充実▽管理職の事務関係業務の軽減を図るべく、共同学校事務体制の強化のための事務職員の充実▽19年度までのSCの全公立小中学校への配置、SSWの全中学校区への配置など▽ガイドラインの順守、働き方改革につながる取り組みであるなどを条件とした、部活動指導員の配置促進▽多様なニーズに対応した支援スタッフやスクール・サポート・スタッフ、理科の観察実験補助員の配置促進▽スクールロイヤーの活用に向けた体制構築――などを盛り込んだ。

また、勤務時間の適正化や業務改善・効率化への支援として、▽登下校時の安全確保のための見守り活動などを行う取り組みの支援拡充▽コミュニティ・スクールや地域学校協働活動などを通じた学校教育の質の向上・支援▽実証研究などを通じた統合型校務支援システムの導入促進に向けた、共同調達・運用モデルの策定▽学校現場の業務改善に関する実証研究やアドバイザーの派遣、事例収集や普及啓発▽学校給食費の公会計化に向けたガイドラインの作成――などを掲げた。

教委が取り組む方策

教委は、所管する学校に対して、時間外勤務の削減に向け、数値目標も含めた業務改善方針・計画を策定し、PDCAサイクルに基づく業務改善の取り組みを支援する。

事務職員の参画をこれまで以上に強化し、採用から研修などを通じた事務職員のキャリア形成の中で、事務職員の資質・能力、意欲の向上のための取り組みを進める。また、事務職員に業務が過度に集中しないよう、共同学校事務室の活用や、庶務事務システムの導入などによる事務処理の効率化を図る。
教員の正規の勤務時間や人的配置等を踏まえ、教員の業務量を俯瞰ふかんする体制を整備する。

「チームとしての学校」で、SCやSSW、部活動指導員などの専門スタッフの役割分担を明確にし、専門スタッフが学校に対して理解を深め、必要な資質・能力を備える研修の実施や人員が確保できるよう、学校に対する必要な支援などを行う。

統合型校務支援システムの導入により、学習評価をはじめとした業務の電子化を図るとともに、ICTを活用して教材の共有化を積極的に進める。

研修については、これまで内容の重複や研修報告書の負担が指摘されてきた。このため内容を精選し、研修報告書の簡素化などを図る。また、夏季休業期間への研修の集中を避け、まとまった休暇を取りやすくする。

研究事業では、研究成果に比べて教員の負担が重すぎる例がみられるため、研究テーマの精選や成果発表の在り方について、教委が学校に指導する必要があるとした。

また、教委の職員への負担が増大しないよう、教委内でも業務の精選を図るよう求めた。

各学校が取り組む方策

業務改善に向けて、まずは各学校現場で業務の洗い出しを行い、可視化と見直しを行うよう求めた。管理職は、学校の重点目標や経営方針を策定する際に、教員の働き方に関する視点も盛り込み、学校全体で働き方改革に取り組む。教職員間で業務見直しを話し合う機会を設けるなどし、校内の業務の適正化を図れるような学校組織の雰囲気づくりも重要だとした。

地域・保護者とも連携を図るよう努め、学校経営方針の共有を図るため、保護者や地域住民が一定の権限と責任を持って学校運営に参画する学校運営協議会制度や地域学校協働活動を推進する。

学校で作成する全体計画では、その重要性を認めつつ、作成業務に多くの時間が割かれていると指摘。過度に複雑で詳細な計画を作成すると、計画作成自体が自己目的化してしまい、教育活動の質の向上という本来の目的を達成できなくなる恐れもあるとした。そこで、▽各種計画の統合▽各教科などの指導計画を複数の教員が協力して作成し、共有化を図る▽児童生徒ごとに作成される計画は、状況等に応じて複数の計画を1つにまとめるなどして、効果的な指導に繋げる――などを求めた。

学校の組織運営体制の在り方のうち、校務分掌は、個々の業務量などを管理職が把握し、類似する委員会は合同設置や構成員を統一するなどして適性化する。

勤務時間の管理は、校長や教委に求められる責務であるとし、自己申告方式ではなく、ICTの活用やタイムカードなどの導入により、客観的に把握するシステムを直ちに構築するよう求めた。

保護者や外部からの問い合わせに対しては、緊急時の連絡に支障がないよう教委への連絡方法を確保した上で、留守番電話の設置やメールによる連絡対応などの体制整備、学校ホームページにあらかじめ問い合わせが予想される事項を記載するなどの工夫を行うのが重要だとした。また、長期休暇期間に年次有給休暇を確保できるよう、学校閉庁日の設定も求めた。

教員全体の意識改革として、研修や人事評価等を活用し、組織管理や時間管理、健康安全管理などのマネジメント能力を高める。また、学校評価と連動した業務改善の点検・評価については、自己評価だけでなく、学校関係者などによる第三者評価も検討する。