年頭の所感 文部科学大臣 林 芳正

学校現場を積極的に支援

大臣所感写真林芳正文科相は1月1日付で、2018年の年頭の所感を明らかにした。


2018年の新春を迎え、謹んでお慶びを申し上げます。今年の干支は戊戌(つちのえいぬ)です。戊や戌の字は、枝葉を払いながら、草木が繁茂する意味があるといわれています。国民の皆様と日本社会が繁栄する年となるよう祈念いたします。

昨年8月の就任以来、私は教育再生、科学技術・学術、スポーツ、文化芸術の振興に全力で取り組んでまいりました。

年頭に当たり、国民各位の期待に応える文部科学行政の推進に向けて、決意を新たにしております。

現在、安倍内閣においては、人生100年時代や「ソサエティ5.0」の到来を見据えた経済社会を大胆に構想する中で、「一億総活躍」の旗をさらに高く掲げ、日本を誰にでもチャンスがあふれる国へと変えていくため、内閣一丸となって「人づくり革命」を断行し、「生産性革命」を実現することを最大の使命としています。文部科学省が担う教育再生、科学技術イノベーション、スポーツ・文化の振興は、「人づくり革命」や「生産性革命」において中核を担うものです。

私自身、文部科学大臣就任以降、現場に学ぶ観点から、困難を抱える家庭の子供にきめ細かな対応をしている小・中学校、地域復興を担う福島県の高校、理化学研究所や日本原子力研究開発機構廃炉国際共同研究センターなどのさまざまな研究所、京都に設置された文化庁地域文化創生本部、トップアスリートのためのハイパフォーマンスセンターなどの現場を視察し、児童生徒や教職員、研究者、アスリートなどの方々を思い浮かべながら行政に取り組むことの重要性を改めて認識しました。

こうした基本認識の下、まずは、家庭の経済事情に左右されることなく、誰もが希望する質の高い教育を受けられるよう、幼児期から高等教育段階まで切れ目のない形で教育費の負担軽減を推進します。

具体的には、幼児教育について、18年度予算案では、年収約360万円未満世帯の保護者負担額の軽減を盛り込み、幼児教育の無償化を実現すべく、その取り組みをさらに加速していくとともに、授業料減免措置や給付型奨学金の拡充により、大学・専門学校に進学する真に必要な子供たちに限って、高等教育の無償化を確実に措置し、さらに、高校生などの奨学給付金の充実にも取り組みます。

同時に、大学改革を加速し教育の質を高めます。併せて、リカレント教育や実践的な職業教育を拡充し、生涯にわたって学び続け新しいチャレンジができる機会を確保することを目指します。昨年12月に閣議決定をした「新しい経済政策パッケージについて」に基づき、施策の具体化に向けて関係府省と十分に連携を図りながら、しっかりと取り組んでまいります。

安倍内閣が「働き方改革」を実行する中で、学校においても、教員の長時間勤務の要因を見直し、働き方改革を実行することが求められていることから、教職員定数の改善充実をはじめ、学校現場を積極的に支援してまいります。

「ソサエティ5.0」の実現のためには、人工知能、ビッグデータ、光・量子技術などの研究開発に加え、その社会を先導する人材の育成が不可欠です。具体的な社会像を描きつつ、文部科学省としていかに取り組むべきか、議論し、実践に移してまいります。

また、第二期スポーツ基本計画を着実に実行し、全ての人々がスポーツを「する」「みる」「ささえる」機会を確保し、「一億総スポーツ社会」の実現を目指します。

さらに、文化芸術基本法の施行や京都への移転を機に、新・文化庁へ向けた機能強化を図り、文化資源を生かした社会的・経済的価値の創出を強力に実行します。

これらの施策を着実に実行するために、政策立案機能や広報機能の強化、業務改善などを引き続き進めるとともに、本年には、文化政策の総合的な推進のための機能強化や総合的な教育改革に取り組むための機能強化などのため、文部科学省の組織改編を行う予定です。

■復興の加速化

東日本大震災や2016年熊本地震などについては、就学支援、児童生徒の心のケア、学習や学校再開への支援などをはじめ、復興を支える人材育成、大学・研究機関による地域再生への貢献、学校施設や文化財の復旧など、被災者の心に寄り添った復興をさらに加速します。また、原子力損害賠償についても万全を期すとともに、除染や廃炉に関する研究開発や人材育成を着実に進めます。さらに、原発事故の避難者をはじめとする東日本大震災により被災した児童生徒に対するいじめについては、関係機関とも連携して必要な取り組みを行ってまいります。

■教育再生

教育再生は、安倍内閣の最重要課題の一つです。教育再生実行会議のこれまでの提言を踏まえ、教育再生の実現に向けて必要な施策を推進するとともに、その進捗についてしっかりとフォローアップを行ってまいります。

わが国が成長・発展を持続するためには、一人一人の能力や可能性を最大限に引き出し、多様な個性を伸ばす教育が不可欠です。これを実現すべく、新学習指導要領の円滑な実施と学校における働き方改革を目指す中で、業務の適正化を行うとともに、部活動指導員などの専門スタッフや外部人材の配置拡充、小学校における専科指導に必要な教員など、教職員定数の改善充実などを一体的に推進します。18年度予算案において、質の高い英語教育を行う専科指導教員を確保するため千人の加配定数の改善をはじめ、合計1595人の教職員の定数改善を盛り込みました。

急激な時代の変化に対応できる人材育成が求められている中、「人づくり」を担う教員の資質能力向上を図ることが必要であり、教員の養成・採用・研修の一体的改革を着実に進めます。

新しい時代に求められる資質・能力を子供たちに育むため、社会の変化を柔軟に受け止めていく「社会に開かれた教育課程」の実現に向けて、幼・小・中の新学習指導要領などの趣旨を広く周知するとともに、今後、高等学校学習指導要領の改訂を行ってまいります。

このほか、質の高い幼児教育の提供、地域と学校の連携・協働の推進、教育の情報化、道徳教育の充実、いじめや不登校への対応、SNS相談体制の構築、多様な場で学ぶ子供への支援、夜間中学の設置・充実、家庭教育支援の充実、学校安全の推進などにしっかりと取り組みます。

神奈川県座間市で発生した事件も踏まえ、児童生徒の自殺予防の取り組みや、インターネットを通じたトラブルや被害を回避するための取り組み、スクールカウンセラーなどの配置拡充などを進めます。

また、指導体制の充実を通じた学力課題解消への取り組みや福祉機関との連携強化、地域未来塾などによる学習支援、地域における読書・体験機会の提供など、子供の貧困対策を推進します。

今後さらに加速していくグローバル社会を見据え、外国語教育や在外教育施設における教育、外国人児童生徒などへの教育、高校・大学などにおける留学生交流のさらなる充実、日本型教育の海外展開、持続可能な開発のための教育、国際バカロレアなどを推進します。

学校施設は、子供たちの学習・生活の場であり、災害の避難所としても重要な役割を果たすことから、その安全性・機能性の確保は不可欠です。深刻な老朽化への対策・耐震化等の教育環境の整備を推進します。

国の知的基盤である大学においては、18歳人口の減少を見据えた「高等教育のシステム改革」、イノベーション創出と生産性向上に向けた「教育研究の質の向上」、格差の固定化を阻止するための「高等教育へのアクセス格差の是正」の3つの改革を一体的に進めます。

また、グローバル人材の養成、指定国立大学法人による国際競争力の強化、地方創生を担う人材育成、高等専門学校や専修学校などにおける教育の充実、専門職大学の創設に向けた取り組みを推進します。このためにも、国立大学法人運営費交付金や施設整備費補助金、私学助成など基盤的経費を安定的に確保し、改革を進める大学を重点的に支援します。

さらに、高校教育、大学教育および大学入学者選抜を一体的に改革する高大接続改革に取り組みます。

障害者が一生を通じて自らの可能性を追求できるよう、福祉などの部局と連携した切れ目のない支援体制の構築や、障害のある子供の自立と社会参加に向けた特別支援教育の充実、障害者の生涯学習活動の充実に取り組みます。

これらの「教育再生」に向けた取り組みを着実に実現するため、本年は、今後の5年間に向けた第三期教育振興基本計画を策定し、同計画に基づいた教育施策を推進するとともに、必要な財源を確保しつつ、教育投資の充実に努めてまいります。

■スポーツ・文化

スポーツには、体を動かし楽しむだけでなく、人を夢中にさせ感動させる力があります。また、文化は、わが国のアイデンティティーを形成する源であり、世界に誇る重要な資源です。

本年は平昌(ピョンチャン)冬季オリンピック・パラリンピック、その先には19年ラグビーワールドカップ、20年東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。国際競技力向上やドーピング対策、新国立競技場の着実な整備など、大会に向けた取り組みはもとより、スポーツの機運が高まる中、次世代に誇れるレガシーを創出する視点で、スポーツを通じた健康増進やスポーツの成長産業化、地域活性化、障害者スポーツの振興、学校体育の充実、国際協力・貢献に取り組みます。

さらに、昨年11月にユネスコ総会に出席し、ユネスコが加盟国間の友好と相互理解を促進し、持続可能な開発目標の達成に向けて、事業活動を推進することへの期待を述べ、わが国の責務を果たしていくことを表明してまいりました。引き続き、責任ある加盟国として、ユネスコ活動の推進に努力してまいります。

■終わりに

かつて松下村塾では、吉田松陰先生の背中を見ながら、自ら考え、皆で議論し、お互いを高め合っていくという、いわば背中の教育が実践されていました。

私としては、文部科学省はもちろん、学校をはじめとした日本中の文部科学行政の現場がそうした実践であふれ、「人」と「知」を創ることができるよう、文部科学行政全般にわたり、信頼の回復に努めつつ、諸課題の解決に全力で取り組む考えです。引き続き関係各位のご指導、ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

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