目指すのは“持続可能な部活動” 詳報 運動部活動のガイドライン骨子

作成検討会議では、今年度中のガイドライン策定を目指す
作成検討会議では、今年度中のガイドライン策定を目指す

スポーツ庁が策定作業を進めている「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」の骨子が、1月16日に開かれた作成検討会議で示された。

ガイドラインの前文では、運動部活動の教育的な意義やスポーツ振興に果たす役割に触れつつも、少子化や教員の負担増加などから、これまでの部活動は「学校や地域によっては存続の危機にある」と指摘。部活動を持続可能なものとするために、抜本的な改革に取り組む必要があるとした。会議では、鈴木大地スポーツ庁長官も「教員の負担軽減を前提とした上で、生徒がいかにいい形で部活動ができるか、これからの部活動の在り方をどうするのかを考えていきたい」と述べた。

骨子で示された内容は――。

◇ ◇ ◇

ガイドラインは、義務教育段階である中学校の運動部を主な対象とし、▽スポーツに親しむのを通じて運動習慣の確立を図り、生涯にわたって心身の健康を保持し、豊かなスポーツライフを実現するための資質・能力の育成▽生徒の自主的・自発的な参加により行われ、学校教育の一環として教育課程との関連を図り、効果的に取り組む▽学校全体としての部活動の指導・運営体制の構築――の観点から、地域や学校、競技種目の状況に応じた最適な部活動の実施を目指す。

なお、高校の部活動は直接の対象とはならないが、基本的な考え方は学校種や学校設置者の違いに関わらず該当するとして、本ガイドラインの可能な限りの準用を求めた。

ガイドラインでは、①適切な運営のための体制整備②合理的でかつ効率的・効果的な活動の推進のための取り組み③適切な休養日の設定④生徒のニーズを踏まえたスポーツ環境の整備⑤学校単位で参加する大会などの見直し――について、具体的な内容が示された。

1.適切な運営のための体制整備

都道府県はガイドラインに則り、「運動部活動の在り方に係る方針」を策定し、市区町村教委などはそれを受け、「設置する学校に係る運動部活動の方針」を策定する。校長は毎年度「学校の運動部活動に係る活動方針」を策定・公表するとともに、顧問は毎月の活動計画・実績を作成し、校長に提出するとした。

生徒や教員数、部活動指導員の配置状況を踏まえ、校長は適正な数の部を設置する。顧問の決定では、適切な校務分掌となるよう留意し、各部の活動内容が、生徒にとって適切であり、教員の過度な負担とならないよう、必要に応じて指導・是正を行う。

教委などの学校設置者は、学校の実態に応じて、指導内容の充実、生徒の安全・安心の確保、教師の長時間勤務の解消などの観点から、円滑に部活動を実施できるよう、部活動指導員の任用と配置を行う。また、部活動指導員に対し、学校教育について理解し、適切な指導を行うために必要な研修も実施する。

2.合理的でかつ効率的・効果的な活動の推進のための取り組み

顧問は、各競技種目の特性を踏まえた科学的トレーニングを積極的に導入し、適切な休養を取りながら、短時間で効果が得られる活動を実施するとともに、スポーツ障害やバーンアウトの予防、体罰の根絶などを含む生徒の安全・安心の確保を徹底する。

各競技の統括団体は、競技レベルに応じて、▽1日2時間程度の練習メニューの例▽週ごと、月ごとなどの活動スケジュール▽効果的な練習方法▽指導上の留意点▽安全面の注意事項――などで構成される指導手引を作成する。手引は公開し、全国の学校で手引に基づいた指導の普及を図る。

3.適切な休養日の設定

部活動における休養日や活動時間について、スポーツ医・科学の観点から、▽学期中は週当たり2日以上の休養日を設ける▽長期休業中は、学期中の設定に準じるほか、生徒が部活動以外の多様な活動を行えるよう、ある程度長期の休養(オフシーズン)を設ける▽1日の活動時間は、長くとも平日で2時間程度、土日は3時間程度とし、できるだけ短時間に、合理的でかつ効率的・効果的な活動を行う――とした。学期中は、平日で少なくとも1日、土日も少なくとも1日を休養日に充て、大会参加などで土日に活動した場合は、振替日を確保する。

前述の「運動部活動の在り方に係る方針」などでも、この基準を踏まえて休養日や活動時間を明記し、学校では、各部の休養日や活動時間を公表するなどし、運用の徹底を図る。

休養日や活動時間の設定では、定期試験前後の一定期間や、学校全体、市区町村共通の休養日を設けたり、週、月、年間単位での活動頻度・時間の目安を定めたりするのも考えられるとした。

4.生徒のニーズを踏まえたスポーツ環境の整備

例えば、適度な頻度で友達と楽しみたいという生徒や、中学生女子の約2割が、保健体育の授業を除く1週間の総運動時間が60分未満であるなど、現行の部活動が生徒のニーズに必ずしも応えられていないとし、競技志向ではない、レクリエーションとして行う活動や、体力づくりを目的とした活動などを主体とした部活動を設置し、より多くの生徒の運動機会の創出を図る。

また、少子化により、学校内で特定の競技の部活動が実施できない場合などでは、拠点校による合同部活動の取り組みを推進する。

総合型地域スポーツクラブや、スポーツ少年団などの、地域のスポーツ団体との連携を図り、保護者の理解と協力、民間の活用などを通じて、地域におけるスポーツ環境の整備を進める。学校体育施設の開放も推進する。

5.学校単位で参加する大会などの見直し

日本中学校体育連盟(中体連)は、生徒の活動の実態を踏まえ、大会における複数校合同チームの参加や、学校と連携した地域スポーツクラブの参加、教員以外の運営への参画推進など、弾力化を主とした大会の見直しを行う。

都道府県中体連や教委など学校設置者は、運動部が参加する大会・試合の全体像を把握し、生徒や顧問の過度な負担とならないよう、大会の統廃合などを主催者に要請するとともに、各学校の運動部が参加する大会数の上限の目安などを定める。校長も、この目安を踏まえ、生徒の教育的意義や負担の観点から、参加大会を精査する。

ガイドラインでは、今後の少子化の進展を踏まえ、ジュニア期におけるスポーツ環境の整備は、長期的には、従来の学校単位での活動から、一定規模の地域単位での活動も視野に入れた体制構築が求められるとした。ガイドラインを踏まえた部活動改革と並行して、学校単位の部活動に代わりうる生徒のスポーツ活動の機会確保・充実方策も検討する。

また、競技団体は選手の育成・強化を部活動に委ねるのではなく、アスリートを目指す生徒が地域で競技の専門的指導を受けられるよう、実施体制の整備を進める必要があるとした。

スポーツ庁ではガイドラインを踏まえ、来年度に「運動部活動改革プラン」として約8千万円を予算化し、調査・実証研究を進める。①ニーズの多様化②地域・家庭によるスポーツ活動への移行③学校医・産婦人科医との連携④競技大会の運営の在り方⑤企業・クラブチームとの連携――の5つの課題が設定され、少子化に伴う部活動の維持や顧問の負担軽減、女子の成長期におけるスポーツ活動への理解促進などに取り組むとしている。