グローバル・ティーチャー賞トップ50 堀尾教諭に聞く

eye-catch_1024-768_cl-up_fin世界各国の教育関係者らが集まり、毎年開かれる教育の祭典「Global Education & Skills Forum」。今年も3月17、18日にドバイで開かれ、最終ステージでは、教育界のノーベル賞ともいわれる「グローバル・ティーチャー賞2018」が発表される。同賞のトップ50には、日本人ではただ一人、滋賀県立米原高校の堀尾美央教諭(32)が選出された。同賞は英国の非営利教育団体「バーキー財団」が、2014年に創設。教育分野で優れた功績のあった教員を表彰する賞で、優勝賞金は100万ドル。今回は世界173カ国、3万件以上のエントリーがあり、同教諭はその中からトップ50に選ばれた。


堀尾美央教諭
堀尾美央教諭
■ミステリースカイプ

「本当にびっくりしている」と選出に驚きを隠さない同教諭だが、「Skype(スカイプ)」を使って、世界のさまざまな国の教室と米原高校の教室をつないだ交流授業を行っている取り組みが、高く評価された。相手がどこの国かは生徒らに教えずに授業をスタート。生徒らはお互いに英語で質問して相手の国を当てる、「Mystery Skype(ミステリースカイプ)」というユニークなスタイル。これまでにケニア、パキスタン、スウェーデン、ロシアなど、25カ国以上の学校と実施してきた。

行っているのは16年1月から。同教諭はきっかけを、「本校は山に囲まれた自然豊かな環境にあり、海外との接点はあまりない。そんな環境でも、生徒が海外の生徒と関われる機会を作り、英語でのコミュニケーション力や実践力を養わせたかった」と話す。

相手国の学校は当初はマイクロソフトの「Educator Community」で探し、そこから個人的なつながりを作っていった。2国間をスカイプでつなぎ、両国の生徒同士は英語で質問とヒントを出し合って、相手のことを当てていく。質問はお互い、イエスかノーで答えられるものに絞っている。どこの国かが分かった後は、お互いの国の歌を歌ったり、言葉を教え合ったりして交流する。

■「コミュニケーションの楽しさを教えたい」

授業中、同教諭は生徒のサポーター、ファシリテーター役に徹しているという。聞こえにくかった箇所や、伝わりにくい生徒のアクセントなどを言い直し、「主役は生徒であることを意識し、コミュニケーションの仲介役に徹している」と語る。

それは、生徒に「伝わる喜び」を知ってほしいから。「私自身は海外の子との文通で、英語でのコミュニケーションの楽しさを知った。そこから英語力が上がっていった。その喜びと、英語が役に立つことを生徒にも知ってほしい」と話す。

そのため、なるべく英語圏以外の国を相手に選んでいる。「英語があれば、違う言語、文化を持つ人々ともコミュニケーションが取れることを教えたい。意思疎通ができた時の子供の『やった』といううれしそうな表情は、とても印象的」という。実際に生徒らはカタール、イスラエル、ナイジェリアといった、なかなか普段は出会う機会がない国の同年代の生徒と交流している。

例えばパキスタンとつないだ時。多くの生徒らが「テロや戦争ばかりの国だと思っていた。こんなに素晴らしい文化と自然があるとは思わなかった」という感想を寄せた。

とはいえ、その生徒らも最初からスムーズに会話できたわけではない。小声だったり、恥ずかしそうだったり、積極性はだんだんとついていったのだという。回を重ねるごとに、最初は不安げだった生徒らも、「関わろう」「知ろう」という姿勢に変わっていった。

その成果が認められ、元来はESS部で小規模に始まったというこの取り組みは、3年生の普通科英語コースでも行われるようになり、今年度からは1年生の全クラスで展開されている。

同校の西坊晴美校長は「本校は都会の学校のように、街やクラスに外国人がいるような、英語教育に恵まれた環境ではない。そうした状況でスカイプでの交流授業は、生徒らのモチベーションを高める、臨場感のある実践となっていて素晴らしい。文化交流とグローバル教育の両方ができ、生きている言葉を学校にいながら体験できる。英語コースだけでなく、一般生徒の実践にも取り入れていくことで発見もあると思い、今年度から全1年生が行うことにした。生徒らの心に、学ぼうという火をつけられるので、学校としてもバックアップしていきたい」と評価する。

西坊晴美校長
西坊晴美校長
■生徒にとってはロールモデル

では、校長から見た堀尾教諭自身の評価はどうか。実は同教諭は、同校出身。同校長は「本校で学び、教員として母校に戻ってきて活躍してくれている。特別な学校で学んだり、特別な体験をしたりしたのではなく、先輩であるところが、生徒にとって大きいロールモデル。新しいことにチャレンジして、一生懸命やってくれるので、他の教員にもいい刺激になっている。これからもどんどん頑張ってほしい」と話す。

今後の展開について、「やりたいことは山ほどある」と語る堀尾教諭。「例えば広島の平和記念公園からスカイプで、これまでつないできた学校に向けて、政治的な話は別にして、生徒にプレゼンをさせたい。そして、もっといろいろな国とつないでいきたい。例えばパレスチナ、シリアのような国の学校と行って、ニュースでは分からない部分を生徒に知ってもらいたい」と意欲を語る。

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教育新聞は、ドバイで開かれる今年の「Global Education & Skills Forum」(3月17、18日)を現地取材する。グローバル・ティーチャー賞をはじめ、会場で発表された最新の研究内容などをお伝えする。