分析 英語プレテスト 問題の構成とねらい

eye-catch_1024-768_cl-up_fin大学入学共通テスト(共通テスト)の導入に向けて、2月13日から3月3日にかけて実施された英語の試行調査(プレテスト)では、全国の協力校158校で、リーディング(筆記)とリスニングが行われた。いずれの出題もマーク式で行われ、ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)を参考に、A1~B1までの各段階で求められる力を問う問題で構成され、実際のコミュニケーションを想定した場面や目的、状況の設定を重視している。

2016年に文科省が公表した「大学入学共通テスト実施方針」では、外国語の「聞くこと」「読むこと」「話すこと」「書くこと」の4技能をバランスよく評価するため、共通テストの枠組みにおいて、民間事業者などで広く実施されている資格・検定試験の活用を明示。現在、大学入試センターでは、大学入試英語成績提供システムの構築に向け、応募のあった資格・検定試験が参加要件を満たしているか、審査を進めている。

しかし、同方針では、制度の大幅な変更に伴う受検者や高校、大学などへの影響を考慮し、23年度までは、資格・検定試験の活用と並行して、同センターが作問する外国語科「英語」の試験を実施する。各大学の判断で、資格・検定試験とセンター作問試験のいずれか、または両方を選択利用できるようにする。今回のプレテストは、センター作問試験に向けて必要な検証を行う目的で実施された。

それぞれの問題の狙いや、新しい問題に対する有識者の評価は――。

問題では、身近な状況や場面が設定された
問題では、身近な状況や場面が設定された
【リーディング】「読むこと」の力の把握

試験時間は80分で、6281人が受検した。

リーディングでは、テキストを読み、事実や意見を整理する力、テキストの構成を理解する力、テキストの内容を理解して要約する力などを問うのを狙いとした。資格・検定試験では4技能が総合的に評価されるのを踏まえ、「読むこと」の力の把握を目的とし、発音やアクセント、語句整序などの問題は出題しなかった。

■問題の構成と狙い

6つの大問で構成されている。

各小問は、▽第1問A A1(CEFRレベル)=2問▽同B A2=3問▽第2問A A1=4問▽同B A2=5問▽第3問A A1=2問▽同B A2=3問▽第4問 B1=5問▽第5問A B1=3問▽同B B1=3問▽第6問 B1=4問――の、計34問。正答率(速報値)が30%を下回った問題は、▽第2問A、問4=13.6%▽第5問A、問3=25.2%▽第5問B、問2=6.2%▽第6問、問1=25.1%▽同、問3=29.8%。

第1問Aは、必要な情報を読み取る力を問う。簡単な語句や単純な文で示されている遊園地の混雑予想に関するウェブサイトを読み、混雑予想等の情報を見つけ出す。同Bは、書き手の意図を把握する力を問う。平易な表現で書かれているイベント告知のポスターから、イベントの内容に関する情報を読み取る。

第2問Aは、説明文の概要や要点を捉えたり、情報を事実と意見に整理する力を問う。インターネット上の利用者の評価情報やイラストを参考に、場面にふさわしい店を推測する。同Bは、短い説明文を読み、その概要や要点を捉えたり、筆者の意見を把握する力を問う。学生のアルバイトの是非に関するディベートを準備する場面が設定されている。

第3問は、書かれている内容の概要を把握する力を問う。Aでは、イラスト付きの平易な英語で書かれた旅行記のブログを、Bでは、平易な英語で書かれたセールスマンに関する新聞コラムが題材になっている。

第4問は、レポートや複数のグラフから、書き手の意図や必要な情報を得る力を問う。授業で、ボランティアに関する調査結果について書かれたレポートを読む場面が設定されている。

第5問Aは、記事の概要・要点や論理展開を把握したり、要約したりする力を問う。学校新聞に掲載予定の、折り紙に関する記事に対するコメントを依頼される場面を設定している。同Bでは、記事の概要・要点の把握や情報の整理を通じて、読んだり要約したりする力を問う。スパイスに関するプレゼンテーションの準備を行う際に、関連記事を読んでメモを取る場面が設定されている。

第6問では、登場人物の特徴などを含め、物語の概要を把握する力を問う。授業で、サマーキャンプに参加したある少年の物語を読み、ワークシートにその内容や感想を整理する場面を設定している。

1回のみの読み上げを行う問題も含むバージョンB
1回のみの読み上げを行う問題も含むバージョンB
【リスニング】読み上げ回数も検証

試験時間は30分で、6286人が受検した。

複数の情報を比較して判断する力や、議論を聞いて要点を把握する力などを問うのが狙い。

音声は、英国人や英語を母語としない人など、米国英語以外の読み上げも行う。

リスニングでは、全ての問題が2度繰り返し読まれるもの(バージョンA)と、問題文が2度繰り返し読まれるものと、1度しか読まれない問題が混在するもの(バージョンB)の2パターンによる比較が行われた。

■問題の構成と狙い

6つの大問で構成されている。

バージョンAの各小問は、▽第1問A A1(CEFRレベル)=3問▽同B A1=1問、A2=1問▽第2問 A1=1問、A2=2問▽第3問 A1=1問、A2=2問▽第4問A なし▽第4問B B1=1問▽第5問 B1=4問▽第6問 B1=4問――の、計20問。

バージョンBの各小問は、▽第1問A A1(CEFRレベル)=5問▽同B A1=1問、A2=3問▽第2問 A1=2問、A2=3問▽第3問 A1=2問、A2=3問▽第4問A A2=1問、B1=1問▽第4問B B1=1問▽第5問 B1=4問▽第6問 B1=4問――の計30問。このうち、第1問~第2問は2回、第3回~第6回は1回のみ読み上げる。

正答率(速報値)が30%を下回った問題は、バージョンAでは▽第1問A、問3=26.8%▽同B、問4=12.6%▽第5問、問14=13.1%▽同、問16=21.6%▽第6問B、問20=26.8%。バージョンBでは、▽第1問A、問3=29.3%▽同、問4=22.6%▽同、問5=19.3%▽第1問B、問6=14.6%▽同、問8=9.8%▽同、問9=11.3%▽第3問、問18=11.1%▽第4問A、問21=3.2%▽第5問、問24=7.9%▽同、問26=23.0%▽第6問B、問30=24.1%。

第1問では、身の回りの事柄に関して、平易な英語で話される短い発話を聞いて答える。Aでは、発話の内容を把握する力を、Bでは、発話に対応するイラストの選択を通じて、概要や要点を把握する力を問う。

第2問では、短い対話を、場面の情報とイラストを参考にしながら聞き、必要な情報を把握する力を問う。

第3問では、短い対話から、場面の情報を参考に、概要や要点を目的に応じて把握する力を問う。

第4問Aでは、説明を聞いて図表を完成させたり、分類や並べ替えを行うことを通じて、必要な情報を聞き取り、話し手の意図を把握する力を問う。問題では、学生が好む間食に関する調査結果報告や、英語キャンプ参加者のチーム分けの方法に関する説明を聞く。同Bでは、複数の情報を聞いて、状況や条件に基づいて比較・判断する力を問う。問題では、複数のボランティアスタッフ応募者の自己紹介を聞き、最も条件に合う人を選ぶ。

第5問では、身近な話題や知識のある社会的な話題に関する講義を聞いて、メモを取ることを通じて概要や要点を捉えたり、聞き取った情報と図表から読み取れる情報を組み合わせて判断する力を問う。問題では、服と環境の関わりについての講義を聞く。

第6問では、身近な話題、社会的な話題に関する対話や議論を聞いて、必要な情報を把握したり、それらの情報を統合して、要点を整理・判断する力を問う。第6問Aでは、修学旅行についての対話を聞いて、話者の発話の要点を選ぶ。第6問Bでは、炭水化物の摂取に関する複数の意見を聞いて、それぞれの話者の立場を判断したり、意見を支持する図表を選ぶ。

■有識者による評価
吉田研作上智大学教授・言語教育研究センター長(中教審教育課程部会外国語WG主査)

今回の英語の問題は、今までのものと違い、スピーキングやライティングの間接的に問う問題(発音、アクセント、語句整序など)は含まれておらず、リーディングは純粋に読解力を、またリスニングは純粋に聴解力を測るものになっている点が非常に良い。どの問題も実際のコミュニケーションや言語使用場面を反映したものとなっており、英語自体は分かりやすいが、レベル的には、従来のテストより高くなっており、上位層でも識別できるものとなっている。

また、読解、聴解という点から、設問には、要約、複数の情報から答えを導き出さなければならないもの、また、複数解答を求めるものなどが含まれており、従来以上にしっかり読んだり聞いたりできなければ解答できなくなっている。さらに、リスニング問題の中には、メモを取りながら解答を考える問題が含まれている。また、リスニングの録音に、現在のグローバル世界を反映して、米国英語だけでなく、英国英語も使われている点も従来のものと異なっている。もう一点リスニングで今回特徴的なのは、今後のリスニング問題の在り方の検証のために、質問の1回読みと2回読みが試験的に含まれている点である。

全体として、今回の英語は非常に良くできていると思う。読解、聴解というコミュニケーション力を測るのに妥当性の高いものになっている。


松本茂立教大学グローバル教育センター長(中教審教育課程部会外国語WG主査代理)
【全般】

民間の英語4技能テストの導入とともに、これまでの大学入試センターが独自に作成する「英語」の問題を併存させることになり、その内容が注目されていた。現行の学習指導要領にのっとった上で、3月末に発表される予定の新学習指導要領の改訂の方向性も視野に入れて作成するという難題をクリアした上で、「読む」「聞く」に関して「使える英語力」を測れる試験になったと言える。高校の英語教育の改善に大きく寄与すると思われる。

受験生は共通テストと民間の英語4技能試験の両方を受けることを踏まえ、共通テストでは「聞く力」「読む力」の2技能に焦点を当てることになったことが大きな特徴の一つである。これにより、これまで出題されていた「話す力」「書く力」を間接的に測っているとされた問題(発音、アクセント、語句整序など)を排除できたことを評価したい。これらの問題は、いわゆる「受験英語」の指導を助長していたという根強い批判が以前からあった。

【聞く(リスニング)】

「聞く」に関しては、複数の情報を聞いて判断する問題など「判断力」を問う問題が新たに加わった。また、英語での講義を聴きながら英語でメモが取れるかどうかといった、大学において英語で行われる専門科目の授業が増えつつある中、高大接続を視野に入れた問題が配置されていることも評価したい。

また、英語の多様性に鑑みて、吹き込み者に、これまでの米国人に加え、英国人と日本人を起用していることも評価できる。高校現場で指導補助しているALTが世界各国から来ていることを考えれば、この変更は遅すぎたくらいだ。今後、オセアニア地域などの出身者を加えることも検討してよいだろう。

「当てはまる選択肢を全て選択する」という受験テクニックが通用しない問題も配置している。

【読む(リーディング)】

「読む」に関しては、必要な情報を理解・整理する力や話の流れをつかむ力を測る問いが出題されており、「使える力」を測っていることを評価したい。また、今まで以上に総語数の多い英文も出題され、英文を読んで英語で要約できるかどうかという問題も配置されており、英文を日本語に訳さずに理解するための指導を推進する上で、追い風になると思われる。

さらに、情報に基づき選択肢を仕分けする問題や、当てはまる選択肢を全て選択する問題などが含まれており、これまでの受験テクニックが通用しにくい形式も目新しい。


高山芳樹東京学芸大学教授(NHKテレビ「エイエイGO!」監修・講師)

従来の英語のセンター試験に取り組んでいると「自分は今、英語のテスト問題を解いている」という感覚を持つことが多かったのですが、今回の英語のプレテストではその感覚が薄れ、あたかも自分がその場で英語を使ったコミュニケーション活動をしているような感覚を持ちながら取り組むことができました。その理由としては、各設問の冒頭でコミュニケーションの場面、目的、状況が明記され、受験者がコミュニケーションの当事者として英文素材のリーディングやリスニングに取り組むような仕掛けがされていたからだと考えます。また、センター試験で出題されていた、特定の文法事項や語彙・表現、音声に関する知識の有無を直接探るような問題が姿を消したのもその理由です。

「筆記(リーディング)」では、与えられた複数の情報を事実と意見に仕分ける問題や、グラフ資料とレポートの両方を読みながら、情報を整理・統合したり、記事内容をメモの形で整理する問題などがあり、英文の表面的な意味理解だけで終わるのではなく、読み手側の思考力や判断力が求められています。

「リスニング」でも、話し手の意図をくみ取れているか、発話内容の概要や要点を捉えた上で、情報を的確に整理できているかを問う出題があり、音声情報を実際のコミュニケーションで活用できるかどうかが試されています。なお、音声を聞く前に、状況と問いを読む時間が設けられていますが、時間の長さは妥当なのか、問いで示されている指示が十分理解されるのかが気になりました。本番に向けて検証していただきたいと思います。

 

■ダウンロードファイル

問題冊子【英語(筆記[リーディング])】

問題冊子【英語(リスニングA)】

スクリプト【英語(リスニングA)】

問題冊子【英語(リスニングB)】

スクリプト【英語(リスニングB)】

正解表一式

 

【訂正】ダウンロードファイルのリンク等に誤りがございました。(2018.3.19)