次期高校学習指導要領 改訂のポイントをどう考えるか(3)

eye-catch_1024-768_cl-up_02大谷大学文学部教授 荒瀬 克己

「前文」に問うてみる

改訂される高校学習指導要領では、科目のみならず教科としての「理数」も新設され、また、総合的な学習の時間が「総合的な探究の時間」に改編される。教育課程編成にあたっては、どの学年に何を何単位分を置くか悩ましいことになるだろうが、教育現場として、何のための教育課程であるかということに立ち返って取り組むことが重要だ。

■教育課程とキャリア教育

今回の改訂で「前文」が加えられた。そこに、「一人一人の生徒が、自分のよさや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の創り手となることができるようにすることが求められる。このために必要な教育の在り方を具体化するのが、各学校において教育の内容等を組織的かつ計画的に組み立てた教育課程である」とある。

つまり、「一人一人の生徒が」、「自分のよさや可能性を認識する」「あらゆる他者を価値のある存在として尊重し」「多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え」「豊かな人生を切り拓き」「持続可能な社会の創り手となる」と、現在から未来へとつながる若者像を示している。

これを読んで、学習指導要領改訂の方向性を述べた中教審答申(2016年)の「社会の中で自分の役割を果たしながら、自分らしい生き方を実現していく過程を、キャリア発達としている」(第3章2(3)脚注)という文言の内容と重なっているように思った。

「一人一人の社会的・職業的自立に向けて、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」(2011年・中教審答申)がキャリア教育である。その視点からは、「必要な教育の在り方を具体化するのが、教育の内容等を組織的かつ計画的に組み立てた教育課程」というのを、どのように読めばよいだろうか。

荒瀬克己大谷大学文学部教授
荒瀬克己大谷大学文学部教授
■カリキュラム・マネジメント

角度を変えて読み直してみる。誰もが豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の創り手になることができる。その前提として考えられるのは、あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越えることだ。それを可能にするためには、誰もが、自分の良さや可能性を認識することが欠かせない。

ところが、この「自分の良さや可能性を認識すること」について、生徒たちはどうだろう。

直近の調査ではないが、米国、中国、韓国の生徒に比べ、日本の生徒は、「自分には人並みの能力がある」という自尊心を持っている割合が低く、「自らの参加により社会現象が変えられるかもしれない」という意識も低い、という指摘がある。

実感としても、挑戦する、粘り強く取り組む、丁寧に考える、じっくり聞く、言葉を選んで話す、失敗から立ち直るなどで課題があるように思う。なぜか。どうすればよいか。

総則第1款が、「高等学校教育の基本と教育課程の役割」と変更され、カリキュラム・マネジメントの定義が示された。その中に、「教育課程の実施状況を評価してその改善を図っていくこと」とある。

「教育課程の実施状況」とは何を指すか。「評価」とはどうすることか。それを誰がするのか。

どのような力をつけるのか。そのためにどんな機会を設けるか。

単に型をなぞるのでない「主体的・対話的で深い学び」を進めるには、どうすればよいか。生徒の現状はどうか。学校の体制はどうか。

絶えない問いに向き合うことから、現場の取り組みが始まる。