次期高校学習指導要領 改訂のポイントをどう考えるか (4)

eye-catch_1024-768_cl-up_01筑波大学人間系教授 藤田晃之


キャリア教育の本格始動
新たな教育課程編成上の基準

新しい高校学習指導要領が「官報(号外72号)」に掲載され、正式に告示された。今回の改訂は、「キャリア教育、本格始動!」とも言うべき方針の下で、新たな教育課程編成上の基準が数多く示されている。本稿では、そのエッセンスの整理を試みることにしよう。

■キャリア教育の基本を示した総則規定

まず注目すべきは、「第1章 総則 第5款 生徒の発達の支援」における次の規定である。

「1(3) 生徒が、学ぶことと自己の将来とのつながりを見通しながら、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力を身に付けていくことができるよう、特別活動を要としつつ各教科・科目等の特質に応じて、キャリア教育の充実を図ること。その中で、生徒が自己の在り方生き方を考え主体的に進路を選択することができるよう、学校の教育活動全体を通じ、組織的かつ計画的な進路指導を行うこと」

この規定は、次期学習指導要領に基づくキャリア教育の基本として、次の3点を示している。①キャリア教育は、「生徒が、学ぶことと自己の将来とのつながりを見通しながら、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力を身に付けていくことができる」ようにするための教育活動であること②キャリア教育は、「特別活動を要としつつ各教科・科目等の特質に応じて」教育活動全体を通して実践されるものであること③これまで実践が蓄積されてきた進路指導は、キャリア教育の一環として位置付き、「組織的かつ計画的」に行われるべきものであること――。

各高校においては、“わが校に在籍する目の前の生徒たち”にとって必要な「社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力」、すなわち「基礎的・汎用的能力」を具体的に設定した上で、それらの諸能力と各教科・科目などでの学びとの関連性を、一人一人の生徒が自覚できるよう指導の工夫をすることが強く求められる。

藤田筑波大学人間系教授
藤田筑波大学人間系教授

また、「開かれた教育課程」の理念の下、各教科・科目の特質を踏まえながら、地域や産業界との連携を図り、就業体験活動などの機会を積極的に設けることも必要不可欠となる。

さらに、これまで「進路指導のねらいは、キャリア教育の目指すところとほぼ同じ」とされつつ、相互の関連性が必ずしも明確ではなかった進路指導とキャリア教育について、進路指導はキャリア教育の「中で」、すなわち、キャリア教育の一環として実践されると明示されたことも特筆に値する。このことは同時に、進路指導が卒業直後の進学先・就職先の決定のみを目指す指導であってはならないことを再確認するものである。

■キャリア教育の「要」とは何か

では、「特別活動を要」としながら、教育活動全体を通して行われるキャリア教育実践とはどうあるべきなのだろうか。

今回の学習指導要領改訂では、小学校・中学校の「学級活動」および高校の「ホームルーム活動」に共通する内容項目として、「(3)一人一人のキャリア形成と自己実現」が設定された。キャリア教育実践はこの(3)を「要」として実践されるのである。小・中・高校を貫くキャリア教育の「要」が、学級活動・ホームルーム活動に位置付き、そこで、小学校から高校までのさまざまなキャリア教育に関わる活動について、学びのプロセスを記述し、振り返ることができるポートフォリオ的な教材(「キャリア・パスポート(仮称)」)の作成や、振り返りなどにも取り組まれることになる。

無論、「要」は「扇の骨を留めるのに用いる釘。また、扇の骨を留める場所(大辞林)」を意味する言葉である。「要」だけの扇は存在し得ないように、教育活動全体を通した豊かなキャリア教育の実践があってこその「要」である点を正しく認識する必要がある。

また、各教科・科目などの特質に応じたキャリア教育の実践に当たって、高校においては、公民科に新設された科目「公共」が、「キャリア教育の充実の観点から、特別活動などと連携し、自立した主体として社会に参画する力を育む中核的機能を担う」(高校学習指導要領 第2章 第3節 第2款 第1の3(3)イ)ものとして位置付けられたことも忘れてはならない。

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