免許外教科担任の実態(1) 高校情報では倍増に

eye-catch_1024-768_cl-up_fin01中学校や高校などで、教科の免許状を持っている教員を採用・配置できない場合に、校内の他教科の教員が1年に限り、その教科を担任できる「免許外教科担任制度」――。文科省では現在、同制度の在り方に関する調査研究協力者会議を設置し、免許外教科担任の解消に向けた具体的な方策について検討を重ねている。

2016年度の免許外教科担任の許可件数を教科別にみると、高校では▽情報 1248件▽公民 394件 ▽工業 336件▽地理歴史 242件▽福祉 191件――となり、職業教科や、もともと1つの教科・免許状だった地理歴史と公民の特殊事情を除くと、情報の“けた違い”の異様さが目立つ。

なぜ免許外教科担任は情報で非常に多いのか、その実態と問題点を、各都道府県教委などに情報公開請求を行うなどし、情報の教員採用の実態を調査した中山泰一電気通信大学准教授に聞いた。

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■免許外教科担任が2倍以上に

情報処理学会情報処理教育委員会の活動の一環で、同准教授は文科省に対し公文書公開手続きを行い、都道府県教委から同省に提出された中・高の教科ごとの臨時免許状(普通免許状を持つ教員を採用できない場合に限り、例外的に授与する「助教諭」の免許状)交付件数と免許外教科担任許可件数を報告した文書の公開を求めた。

その結果、全国の情報の臨時免許状授与件数は、03年度は176件だったのが13年度に376件に、同様に免許外教科担任の許可件数は、03年度は512件だったのが、13年度には1360件に、いずれも2倍以上に増加していた。免許外教科担任の許可件数は、全体でみれば減少傾向にあるが、情報に関しては大幅に増えている。

都道府県別にみると、臨時免許状は栃木、宮崎、高知、茨城、福井、鹿児島の各県で、免許外教科担任は長野、石川、富山、高知、岐阜、福島の各県で多かった。
情報の教員の配置や採用に警鐘を鳴らす中山准教授
情報の教員の配置や採用に警鐘を鳴らす中山准教授
■採用は「狭き門」

同准教授は各都道府県教委などに情報公開請求し、情報科の教員採用状況も調査。その結果、情報科の教員採用を行っている教委はごく限られ、採用を行っている教委でも、情報以外の教科の免許保有を教員採用試験の受験条件にしているのが多い状況が分かった。

05年度から14年度までの10年間に、情報の採用試験を実施したのは32都道府県・政令市あるが、そのうち17都県市は他教科の免許の保有を条件としている。同期間の採用者数をみると、▽大阪府 163人▽埼玉県 52人▽兵庫県 47人▽愛知県 44人▽神奈川県 39人▽東京都 36人――と、大都市圏での採用が多く、これらの都府県だけで、採用者数全体の約7割を占めていた。

同准教授は「公立高校の採用数をみると、情報の免許を取得した人数のうち、約0.7%しか教員として採用されていない」と話し、授業時間数に比べて教員採用数が著しく少ないため、教員志望の学生にとっても「狭き門」となっていると明かす。

これらの調査から、学校では情報の免許を持った教員が限られ、臨時免許状や免許外教科担任でまかなわなければならない状況にもかかわらず、採用は少ない上に大都市圏に限られているという実態が浮かび上がる。

情報が03年度に新設されるにあたって、各都道府県教委は現職の教員を対象に、情報の免許状の取得を目的とした講習会を実施。新教科の開始に対応したという経緯があるが、同准教授は「情報の開始当初に研修で免許を取得した教員は、管理職になったり、退職を迎えたりしている。開始当初は各大学で免許を取得した学生を採用するのを想定していたはずだが、採用しなかったために、免許外教科担任でやらざるを得なくなっている」と指摘する。

情報の臨時免許、免許外教科担任の件数は倍増している
情報の臨時免許、免許外教科担任の件数は倍増している
■高校現場も悲鳴

この状況に、高校現場も悲鳴を上げている。

千葉県高等学校長協会は16年3月に、県内公立高校130校を対象に、情報の教員の配置状況を調査した。普通科の高校で情報を担当しているのは233人で、そのうち臨時任用講師が9人、非常勤講師が18人だった。免許外教科担任もしくは臨時免許で情報を教えているのは17人いた。

情報を主に教えている教員の数ごとにみると▽1人 43校(39.4%)▽2人 32校(29.4%)▽3人 20校(18.4%)▽4人以上 14校(12.8%)――で、1人の教員が情報のみを担当している学校から、複数の教員が情報と他教科の両方を受け持っているケースまで、さまざまだった。

さらに、教員の年齢構成では、51歳以上が過半数の56%を占めており、高齢化の傾向を示していた。同調査では、情報の開始までに講習を受け、免許を与えられた世代の教員が抜けると、多くの学校で授業が成り立たなくなる可能性があると指摘する。

また同調査では、情報の免許保有者がいるにもかかわらず、その保有者が情報を担当していないケースもみられた。同協会では、情報の免許を所有していても、数学や理科などの教科への所属感が大きかったり、責任を持って情報を担当する自信がなかったりするのではないかとみている。

各校の校長へのアンケートからは、「2022年から始まる新学習指導要領における教科『情報』を指導するにあたり、情報を専任で指導する職員を、本県では採用していないことが不安」「人事異動により情報免許を持つ教員が異動となった場合は、必ず情報免許を持ち、実際に情報の授業を担当していた正規の教員を配置してほしい」「情報の免許(の保有)を報告していても、授業できない場合(意思がない)は、学校運営上は困る。景気が良くなり、非常勤講師がなかなか見つからない。採用選考を実施してもらいたい」といった深刻な状況が報告されている。(藤井孝良)