免許外教科担任の実態(2) 指導要領への対応に懸念

eye-catch_1024-768_cl-up_fin02中山泰一電気通信大学准教授らの調査では、情報では免許外教科担任の割合が倍増し、採用も進んでいない実態が明らかとなった。また、千葉県の事例などから、こうした状況は学校現場でも問題となっており、情報の教員確保や計画的な配置が進んでいない状況も分かった。新学習指導要領では、情報は必履修科目の「情報Ⅰ」と選択科目の「情報Ⅱ」に再編され、プログラミングやデータサイエンスなどの内容が取り入れられる。新学習指導要領の内容を、現状の体制で教えられるのか。残された時間は限られている。

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■新学習指導要領の対応にも懸念

現状のままでは、新学習指導要領に十分に対応できないのではないかという懸念もある。

新学習指導要領で、情報はこれまでの「社会と情報」「情報の科学」の2単位の選択必修から、必修としての「情報Ⅰ」、「情報Ⅰ」の履修を前提にした選択の「情報Ⅱ」という科目構成になる。「社会と情報」では扱われていなかったプログラミングも、「情報Ⅰ」の内容に組み込まれ、全ての高校生がプログラミングを学ぶようになる。さらに、「情報Ⅱ」ではデータサイエンスや情報システムの開発、学習内容を総合的に活用した問題発見・解決の探究など、内容が高度化する。

中山准教授は「現状でも、『社会と情報』と比べて、プログラミングが入っている『情報の科学』の履修は約2割。その理由は、教員が教えられないからだ。情報だけを教えている専科教員も少ない」と指摘する。

さらに、複数免許を持っていても、情報への関心が低いままの教員も多く、地域によっては研究会組織がなく、もともと学校に1人しか配置されないケースも多いため、研修の場が不十分でもあるという。

地域間格差の問題を指摘する中山准教授
地域間格差の問題を指摘する中山准教授

同准教授は「都道府県の差が大きすぎる。まずは、47の都道府県でこれだけ格差が出ているというデータをオープンにした上で、議論する必要がある。都道府県の違いで、生徒が情報を学ぶ環境に差があり、情報に関する能力も格差が生じてしまう、そのようなことがあってはならない」と強調する。

また、免許外教科担任や遠隔授業などで、やむを得ず情報を他教科の教員が教える場合でも、その教員が十分な情報の科学的な理解を備えている必要があるとし、教員免許更新講習に情報に関する講習を入れたり、教員免許取得の際に必履修する「情報機器の操作」を、機器の習得にとどめず、情報の科学的な理解を深める内容にすべきだとも提案した。

■文科省も採用促す

文科省もこの状況を放置しているわけではない。同省は2016年3月に各都道府県教委などに対して、「高等学校情報科担当教員への高等学校教諭免許状『情報』保有者の配置の促進について」とする通知を発出。免許外教科担任が全体の約3割を占めているとして、情報の免許状保有者の採用や計画的な配置、現職教員の情報の免許状取得の促進などを求めた。

また、新学習指導要領の解説の公表と合わせて、18年度中に「情報Ⅰ」「情報Ⅱ」の指導用研修資料を作成。22年度の学習指導要領実施までに、情報を担当する教員の指導力向上を図る。

新学習指導要領における「情報Ⅰ」と「情報Ⅱ」の学習内容
新学習指導要領における「情報Ⅰ」と「情報Ⅱ」の学習内容

同省の鹿野利春教科調査官は、3月に都内で行われた情報処理学会第80回全国大会の基調講演で、「(「情報Ⅰ」「情報Ⅱ」では)かなり高度な内容をやることも構想している。これだけやれば、この国は変わる」と意気込み、大学での情報の教員養成と、各都道府県教委での採用を促した。

中山准教授は「行政は特別予算を付けて、全ての小・中・高校に、情報教育を専門に扱う人材を配置するなどの措置が必要だ。しかし、本来ならばこれは、03年に情報が新設された時点でやらなければいけなかったのではないか」と話した。

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高校の免許外教科担任の3人に1人が情報という状況は、新しい教科として立ち上げた後、計画的な採用や配置を行ってこなかった教育行政に問題があるといえる。講習で免許を取得した教員が高齢化し、中堅や若手の情報教員が育たないままでは、世代交代や指導技術の継承が行われず、新学習指導要領に対応するための指導力どころか、現状の授業の質の維持すらも難しい。

情報の教員採用が一定数あり、IT関連企業なども集積する大都市圏と、そのような環境にない地方との地域間格差も懸念される。採用を抑制していては、大学の教員養成にも影響を与えかねない。複数校をつなげる遠隔授業の実施やオンライン教材の充実で補えるのは、情報教育で身に付けるべき能力の一部でしかない。

情報の免許外教科担任をできる限り減らし、情報を教えられる教員を確保するのは、「待ったなし」の状況にある。(藤井孝良)

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