次期高校学習指導要領 改訂のポイントをどう考えるか(5)

eye-catch_1024-768_cl-up_fin千葉市立千葉高校長 川崎浩祐


教科「理数」への期待

■今は高校教育の大きな分岐点

今回の高校学習指導要領改訂では、「論理」や「探究」のつく科目が多くあり、新学習指導要領で学ぶ生徒たちは後々、論理・探究世代などと呼ばれることになるかもしれない。

変わるのは科目だけでなく、学校運営、授業、評価、一足先に大学入試も変わる。数年後に日本の教育を振り返った時、あの時が「分岐点」だったと言われるほどの、大きな変革の時期に立っていると感じる。

私が新学習指導要領で最も注目している点は、「理数探究基礎」「理数探究」の新設だ。本校は、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定され、探究的な学習の最先端の形である「課題研究」に多くの生徒が取り組み、成果を上げていることが背景にある。

これまで高校数学と理科で、探究的な学習を中核に据えていた科目の「数学活用」と「理科課題研究」は、別科目として設定されていた。また、大学入試選抜での評価がほとんど行われず、指導方法が教員間に共有されていないことなどから、当該科目の高校での開設は極めて低いものだった。一方で、高校の理数教育では、数理横断的なテーマに徹底的に向き合い、考え抜く力を育成するのは大事なことと考えられていた。

探究的な学習が課題発見能力、課題解決能力、自己表現能力の育成に効果があることは、これまでのSSH校の研究からも明らか。その成果を拡大し、SSH校でなくても理科と数学をオーバーラップさせた探究的な学習を導入するのは大いに評価されると思う。

■SSH校の研究知見を広く活用しよう

新科目では、座学ではなく探究の手法や流れを習得した後、自分で知的好奇心を発揮して課題を設定する。観察・実験を創意工夫しながら実施し、成果を発表することも求められる。

高大接続改革の動向を踏まえ、育成すべき資質・能力を明確にして教育課程を編成するという新学習指導要領の在り方にも共感する。しかし、実際に取り入れるとなると指導内容や評価に加え、施設整備や財政的な裏付けなども必要。慎重にならざるを得ない。

導入に当たっては、教育委員会の戦略性に富んだ後押しや、全国のSSH校で、これまで蓄積してきた課題研究に関するさまざまな知見やノウハウなどを広く活用することが重要だろう。そこで、本校の課題研究を少し紹介する。

 川崎浩祐 千葉市立千葉高校長
川崎浩祐 千葉市立千葉高校長
■多様な取り組ませ方を考慮

本校では、理数科1、2年次および普通科2、3年次のSSHコース選択者が課題研究に取り組んでいる。

担当の教員に、どんな指導と評価を心掛けているか聞いたところ、「課題研究は、あくまでも理科を中心にした授業の延長線。生徒の能力を育成する一つのツールと位置付けている」とのこと。「何のために研究するのかという明確な目的意識は必要だが、特に際立った取り組みを行っているわけではない」とも話す。

強いて言えば、「多方面に興味関心が高く、何事にも積極的に取り組む意欲が持続しない理数科生徒と、取りかかりは遅いが何事も飲み込みが早く、要領よく課題を解決する普通科生徒の資質を考慮し、取り組ませ方に若干の違いを持たせている程度」などとも述べる。指導では、「生徒の学びを側面からサポートするのを心掛けている」「評価は永遠の課題」との思いも挙がっている。

■生徒の実態を観察した着実な学びを

あまりやる気が感じられないように聞こえるが、教員は指導を通じた生徒の成長に驚いている。恐らくその点が指導のモチベーションになっているのだろう。教員は生徒の実態をよく観察し、肩肘張らず無理せず学びを積み重ねながら成果を上げている。

探究活動は、これからの社会を生き抜く能力育成の中核になる取り組み。この活動が多くの学校で取り入れられるのを期待している。

(おわり)