全日本中学校長会 山本聖志新会長に聞く

未来を切り開くターニングポイント

全日本中学校長会(全日中)の新会長に、山本聖志東京都豊島区立千登世橋中学校長が就任した。1947年に始まった新制中学校教育が71年目となる今年を、山本会長は「新しい未来を切り開くターニングポイント」と位置付ける。会長就任の抱負や課題などを聞いた。


――会長就任に当たり抱負を。

昨年10月、戦後の中学校教育70年を記念する東京大会を開催した。今年度は、次の10年に続く最初の1年であり、非常に重要な年だと覚悟を決めている。歴代の会長が積み上げてきた素晴らしい実績を踏襲しながらも、新しい未来を切り開くターニングポイントとなるタイミングだと感じる。

全日中会則の第2条にもある「緊密な協調」という言葉を心にとどめ、責務を果たしていきたい。各都道府県の校長会の皆さんに会うたびに、その活躍ぶりに感銘を受けている。各地区理事の皆さんがそれぞれの地域で現場のニーズを吸い上げ、地域の教育をリードしており、東京だけでは把握しきれない課題もある。全国の都道府県校長会が緊密に協力し合い、一丸となって課題を解決していくことが必要不可欠だ。

われわれの仕事は単なる学校経営ではない。これからの予測不能な時代を生きていく子供たちに、未来を踏まえた教育を提供していかなければならない。それを形づくるのが教員で、しっかりと方向性を見据えるのが校長の役目。全日中の会長として、指針となれるよう全力で取り組んでいく。

――具体的な課題は。

大きく分けて三つ。一つ目は新学習指導要領の円滑な実施に向けた取り組みだ。例えば、特別の教科と位置付けられる道徳について、現場の教員の間では、教科書の活用や評価の仕方に戸惑いがあるのも事実。そういったものを一つ一つクリアにして、2021年を迎えたい。

二つ目は、学校における働き方改革への対応。先日の総会で行政の方と話した際にも感じたが、かなり本気度を伴ったものになっている。今から20年ほど前に「学校のスリム化」という言葉が盛んに言われていたが、いつの間にか聞かなくなってしまった。「働き方改革」については一過性の話題で終わらせず、しっかりと具現化させることが、今日重要な課題だと思っている。

三つ目は「全日中教育ビジョン」の推進。これまで3年ごとに2度改訂を行った。しかし、この3年というスパンを固定的なものとせず、21年の新学習指導要領の実施に向け、改訂タイミングと内容を一層、実質的なものにしたいと考えている。

――特に「働き方改革」は教員の関心度が高いと思うが。

教員が多忙なのは事実。だが多忙感に打ちひしがれて、心を病む教員が出ないように最大限配慮するべきだ。

「熱心さは大切だけれど、長時間労働が続くと燃え尽きてしまうよ」と、自校でもよく言う。「1日を学校のことだけで終わらせないようにしよう。エネルギーをチャージできることを、一つでもいいからしよう」と伝えている。例えば帰宅途中に本屋に寄り、好きな本を見つけるとか、体を鍛えるとか、同僚と飲むとかでもよい。私は、趣味のロールケーキを家族と一緒に作って、リフレッシュすることもある。

働き方を見直すとき、自分が楽になるためという視点ではなく、子供によりよい教育を与えるためには――という視点から考えることが大切だ。さまざまな立場の方が意見されているが、やはり現場を知っているのは、われわれ教員だ。私たちが自分ごと、自校ごととして当事者意識をもって捉えることが肝心だ。

――日本中学校体育連盟(日本中体連)の会長にも就任する。

全日中の会長である私が兼任することには、大きな意味があると思う。部活動の在り方もまた、俎上(そじょう)に載せるべき重要課題だ。もちろんスポーツ庁のガイドラインに沿って精査する必要があるが、「私学は?」「強豪の運動部は?」「吹奏楽部などの文化部は?」など、気になる課題がたくさんある。あくまで、部活動が生徒たちの過剰な負担にならないよう、配慮していく必要がある。

以前ドイツの日本人学校に、3年間勤務していた。ドイツでは放課後、州から派遣された指導員が地域の子供たちにスポーツを指導する。彼らの多くはナショナルチームのOB・OG。専門家に教えてもらうので、子供たちもぐんぐん成長していく。音楽が好きな子が音大で指導を受ける機会があることには驚いた。

部活動だけでなく、教員の働き方や学習指導要領もだが、今後の日本の教育を考える上で、グローバルな視点はヒントとなるだろう。全日中ではかなり以前から、韓国の教育関係者と意見交換する取り組みをしている。こういった海外との情報交換の機会も大切にしていきたい。

――教員へのメッセージを。

教育には力がある。子供たちの将来をつくる、未来直結の大切な作業だ。よく教員に「子供たちにとって、心のともし火となってほしい」と声を掛けている。生徒たちは将来、挫折を味わうこともあるだろう。そんなとき彼らがくじけずに立ち上がるきっかけとなるような、ずっと心の中に残り、支えてあげられるような言葉を与えてほしい。教員はそれができる尊く重要な役割を担っている。そのことを一時たりとも忘れず、プロとしてのスキルを磨き続けてほしい。

◇ ◇ ◇

【プロフィール】

東京都出身。公立中学校教員から豊島区教委課長、足立区教委教育次長を歴任。2016年4月から豊島区立千登世橋中学校長。趣味は映画鑑賞、ロールケーキ作り。好きな言葉は「一座建立(いちざこんりゅう)」。

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