小学校教員の英語力を研修で 東京都杉並区の取り組み

小学校での外国語教科化を前に重要課題となっているのが、教員の英語力と英語指導力の向上。2017年度の東京都教職員研修センター紀要によると、「担任が外国語の授業を進めるにあたっての課題」として、「英語を用いた児童への指示、説明」(78.6%)、「英語の発音」(56.1%)を多くの教員が挙げており、小学校教員の英語力に対する不安が見てとれる。そこでいま、教委と大学など外部機関が連携する教員研修が注目されている。


■増加する外部機関との連携

全面実施の20年度に向け、小学校教員の英語力や英語指導力向上を図る国内研修の実施率は、年々上昇している。文科省の調べでは、17年度の都道府県・指定都市教委が主催する研修の実施率は97.0%で、前年度より1.5ポイント上昇。市区町村教委の主催では33.5%だが、前年度よりも8.5ポイント上昇している。

研修については各自治体でさまざまな取り組みが行われているが、教委と大学などの外部機関が連携して教員研修を行っていくケースも増えてきている。

例えば、福井県の英語教育強化地域拠点・勝山市では、授業改善に向けた研究で福井大学、仁愛大学、敦賀市立看護大学といった地元大学の英語教育を専門とした教授らから、継続的に指導を受けている。

折井教授による「英語のリズムと音変化」の講義・演習

17年1月からは東京都足立区と明海大学が小・中学校の英語力向上のため、英語力強化重点校である区内の小・中学校8校に対して、大学の教員が授業に助言し、教員の英語力と指導力を向上させる研修会などを開催している。

また、今年5月には滋賀県高島市教委と東京学芸大学が、道徳と外国語について教員の指導力強化を図るため、連携協力協定を締結。授業研究会に同学から講師を招き、指導や助言を受ける。また、同市の小学校教諭を同学附属世田谷小学校、世田谷中学校に研修派遣し、授業の指導法などを習得する。それを同市内小・中学校へ普及させ、指導の充実を図っていくとしている。

■「英語のリズムと音変化」の講義・演習

東京都杉並区と早稲田大学教育・総合科学学術院も、教育・研究活動に関する総合支援・協力を行う協定を締結した(本紙電子版5月10日付既報)。今後、小学校英語教科化への対応やeラーニングを活用した教員研修、大学教員の専門的知識を生かした教員研修などの取り組みを協力し合い、推進していく。

まず、今年度は5回実施予定の「外国語教育担当者研修」の研修内容を、同区教委と同学で協働して計画。各回ともにテーマに合わせた授業研究と、同学教授らによる講義・演習を行う。

5月中旬には、同区立松ノ木小学校で初研修を開催。同区内の小学校教員約40人が参加し、同区教委委員でもある同学教育・総合科学学術院の折井麻美子教授から研究授業へのフィードバックと、「英語のリズムと音変化」をテーマにした講義・演習を受けた。

英語音声学が専門の同教授は、担任が行う単独授業での注意点として、「児童の発音につられて、教員の発音も引きずられて低下しないよう気をつける」「授業中の英語と日本語の割合は、どこを英語にするのか、どこを日本語にするのか、一貫したルールを決めて徹底することが必要」とアドバイス。

講義・演習では、英語の強勢リズム(強音節と弱音節)と弱形、音変化などについて説明し、参加教員らが発音を練習した。

同教授は「英語は強音節と弱音節を意識して強弱のある話し方をすると、簡単にうまく聞こえるようになる。先生が“英語らしい”発音を意識すると、児童たちにも分かりやすくなる」と解説。

参加した教員らは「授業中に意識するポイントが明確になった」と、研修の感想を語った。

東京都教職員研修センター紀要「小学校における外国語教育の充実」より

■自信を持って授業ができるよう支援

また、同協定で新しい取り組みとして注目されるのが、eラーニングを活用した教員研修だ。

同教授は3年ほどかけて、同区の教員と学生に向けた英語発音の練習ソフトを開発。区では今年度、約50台のタブレット端末を導入する。まずは少人数の教員からのスタートとなるが、今夏以降、教員が自宅にタブレット端末を持ち帰り、ソフトを使って発音練習に取り組めるよう準備中だ。

市販の発音ソフトは難しいものが多いが、この練習ソフトは英語からずいぶん離れていた人でも取り組める難易度に設定されている。また、1ユニットが20分程度と、時間が取れない教員でも気軽に取り組め、発音の上達に関してもソフト上で評価されるので、効率よく英語力を高められる。大学側も、研修結果の数値を集めて検証することで研究に生かせるメリットがある。

さらに、ソフトを利用した教員に対しては、個別もしくはグループでプラスαの対面式サポートを行うなど、手厚い支援を予定している。

協定に至った経緯について、同区立済美教育センターの寺本統括指導主事は「指導力については教委主催の研修や校内研修など、内部の努力で向上できる。しかし英語力の向上については、専門知識を持つ外部機関の力を頼らなくては難しい」と説明する。

折井教授は「外国語の授業になった途端、英語力に自信がないため、指導力もつられて落ち、本領を発揮できていない教員が多い。教員の英語に対する不得意感や不安感を減らし、教員が自信を持って授業ができるように手助けしていきたい」と述べた。

(クローズアップ取材班)

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