髙橋文科省初中局長に聞く(上) 重要施策にどう取り組むか

小学校では、教科「道徳」の先行実施や外国語の移行措置が始まり、高校では新学習指導要領が告示された。学校現場では主体的・対話的で深い学びの実現に向けた準備が進む中、学校における働き方改革をはじめ、改善しなければならない懸案事項が山積する。文科省は今年度、これらの課題にどのように取り組んでいくのか。髙橋道和初中局長に聞いた。第1回では、学習指導要領への対応や学校における働き方改革を中心に施策を聞いた。


■「特別の教科 道徳」と外国語
――新学習指導要領への円滑な移行実施に向けて、学校現場で具体的にどのような取り組みを進めていく必要があるか。

「特別の教科 道徳」はまさにこの4月から、全国の小学校で全面実施されている。この新しく教科化された「道徳」では、児童が、答えが一つではない道徳的な課題を自分自身の問題として捉え、本音で語り、向き合い、考え議論する道徳への転換を図っていく。その方向に沿った取り組みが今、全国で実施されている。

学校現場では今年度から検定教科書が使われている。また、文科省では従来から「道徳」の地域教材の開発などを支援してきた。こうした地域教材と検定教科書を有機的に活用することが重要になる。

それから、答えが一つではない問いに対して、自分ならどう考えるかといった問題解決的な学習や、さまざまな立場に実際に立って、演じながらそのときの心情について考える体験的な学習を取り入れるなど、指導方法の工夫にも取り組んでいただきたい。評価については児童がいかに成長したかを積極的に受け止めて、それを認めて励ます個人内評価を記述によって行うことにより、一人一人の良さを伸ばして成長につなげていくことを、学校現場で意識的に行っていただくことが重要だ。

髙橋道和文科省初中局長
――外国語活動、教科としての外国語については。

小学校の新学習指導要領では、外国語活動と外国語科が2020年度から全面実施されることになっている。今年度から来年度にかけての2年間が移行措置となっており、全面実施を見据えた取り組みが始まっている。

新学習指導要領では、小学校の中学年からは、「聞くこと」「話すこと」を中心とした外国語活動を年間35単位時間設ける。これにより、外国語に慣れ親しませ、学習の動機付けを高める。それから中学校との接続を重視した高学年では、段階的に「読むこと」「書くこと」を加え、教科化して年間70単位時間になる。現行の外国語活動よりも時間数が増えて、体系的な指導を行うことになる。

外国語の授業の改善、充実が新学習指導要領では示されているので、小学校の中・高学年、小・中学校の接続の観点から、移行期間中についてもそれらを見据えた指導を行っていく必要がある。文科省では教材も準備している。これらの教材を活用して、移行措置が進んでいくと考えている。

動画で学習指導要領の実施に向けた研修を支援する
■高校の新学習指導要領
――高校の学習指導要領も告示された。全面実施に向けて、どのような準備が必要か。

3月に公示した高校の新学習指導要領は、「総合的な学習の時間」の名称を「総合的な探究の時間」に変更し、また、「理数探究基礎」「理数探究」といった科目の新設や、各教科の科目構成の再編など、これまで以上に探究的な活動を重視している。

この趣旨の実現に向けて、まずは、新設される科目をはじめ、その狙いや内容の取り扱いについて、全国の教育関係者に対し、しっかりと周知徹底を図ることが重要と考えている。文科省では今年度、高校の学習指導要領解説を作成して公表する。それから、文科省が主催する全国の指導主事向けの中央説明会や教科書会社を対象とした説明会の開催を予定している。

特に「総合的な探究の時間」については、生徒が主体的に探究していく上で助けとなるような、全国共通で活用できる教材の作成について現在検討している。また、「理数探究基礎」では、中教審の答申でも教科書などの適切な教材の作成が提言されているのを受け、教科書の導入に向け検討を進めている。さらに、「理数探究基礎」および「理数探究」は、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)などにおける実践を通じて、蓄積された好事例の収集や周知を図る。このような取り組みを通じて、できるだけ高校現場に参考になるような情報などを提供していきたいと考えている。

それから、各高校の校内研修の充実も必要になる。教職員支援機構と連携して、「校内研修シリーズ 新学習指導要領編」と銘打ち、各教科の教科調査官による解説動画を作成して順次配信していく予定だ。同構機の次世代型教育推進センターでは、主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善の実践事例を収集しており、小・中・高および特別支援学校を合わせて、すでに約200事例が集まっている。こうしたものを活用して、研修の充実を図っていただきたい。

■働き方改革への支援策
――学校における働き方改革について、具体的な対策や教委への支援策は。

学校における働き方改革は、昨年4月に調査の速報値を公表したことを契機に、今、急ピッチで検討が進んでいる。昨年は中教審で非常に精力的にご審議いただき、年末には「中間まとめ」が示された。それを受けて、緊急対策を文科省としても取りまとめて、今年2月に各教育委員会に通知を発出している。すでに各教委では、通知に先駆ける形でさまざまな動きも出てきている。

例えば、私が把握しているいくつかの例でも、今年の2月には東京都教委、3月には横浜市教委が、それぞれ教委としての学校における働き方改革プランを、具体的な数値目標を入れた形で公表している。こういった動きが出てきていることは歓迎したい。今後、さらに多くの教委にこうした取り組みが広がっていくことを期待している。

文科省としては、学校における働き方改革に関する教委の取り組み状況について、定期的にフォローアップをすることにしており、今回出した通知の取り組み状況、進捗状況を把握するとともに、業務改善の優良事例を収集して周知するなどしていきたい。

――財政的な支援は。

国としても教委の取り組みを後押しするため、予算的な対応として、定数改善については、小学校の英語教育の早期化・教科化に対応する専科教員1000人を含め、今回1595人の定数改善を実現した。さらに、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置を促進し、スクールサポートスタッフや部活動指導員といった新しい補助制度によって、教員を支援していきたいと考えている。
それから「中間まとめ」で示されているように、文科省の施策が学校現場の負担を増やすようなことがないよう、今後は新しい施策を求める場合には、何かをスクラップするなどして、全体の業務負担が増えないようにする。初中局の中でもしっかりと組織的な対応としてチェック機能を効かせていきたい。

10月には、生涯学習政策局を総合教育政策局に改編するのにともない、初中局や高等局の一部組織も再編する。その一環で、働き方改革をしっかりとウォッチして、局内で学校へ依頼する業務量を調整するような組織の体制整備も図っていきたいとと考えており、今準備を進めている。

■教員と部活動との関係
――部活動の在り方では、スポーツ庁でガイドラインが示された。これからの教員と部活動との関係は、どのように変わっていくか。

まず、中学校の教員にとって部活動の負担が大変重いものになっているのは調査で明らかだ。したがって、活動時間の削減にしっかりと取り組んでいかなくてはいけない。

今回のスポーツ庁のガイドラインで示したように、適切な休養日として、平日に1日、土休日に1日、計2日を充て、1回当たりの練習時間も平日で2時間程度、土休日で3時間程度と、活動時間の目安を示した。総量的な活動時間の制限は、発達段階の子供にとっての適切な運動量を考える観点からも抑制していくという側面がある。

しかし、別に部活動そのものをやめると言っているわけではない。適切な時間でしっかりとやろうということだ。そうなると、部活動に関わる先生をある程度、部活動指導員に代替していって、先生方の負担を減らしていくことも必要だ。ただ、現時点で全ての顧問を部活動指導員に代替することを考えているわけではない。

現段階で文科省として明確な数値目標を定めているわけではないが、保健体育の教員でもなく、競技経験もない顧問が、中学校で約46%、高等学校で約41%を占めているという実態がある。そういったことも踏まえ、部活動指導員4500人分の予算措置を1年目として行った。部活動指導員は今後、着実に増やしていきたいと思っている。