髙橋文科省初中局長に聞く(下)今年度の重要施策

今年度の文科省重要政策を、髙橋道和初中局長にインタビューした。第2回では、相次ぐいじめをめぐる問題への対策、今年10月に予定されている文科省の組織再編の狙いについて詳しく聞いた。生涯学習政策局を総合教育政策局に組織再編するのに伴い、初中局や高等教育局も一部の部署が移管する。学校現場や教員養成にも大きな影響を与えそうだ。


 

いじめ対策と組織再編

■いじめ防止対策の今後の方向性
――いじめ防止対策推進法が今年9月で、ちょうど施行から5年を迎える。いじめ防止対策の今後の方向性は。

いじめ問題については、いじめ防止対策推進法に基づいて、「特別の教科 道徳」の充実や、24時間子供SOSダイヤルの設置、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置の充実のための財政支援など、これまでもさまざまな取り組みを行ってきた。

また、2016年度からは文科省の職員が地方自治体に赴いて、教委の担当者や校長に対して直接、行政説明や研修を行う取り組みも始めている。いじめ防止対策推進法の趣旨のさらなる徹底、普及に努めているところだ。

昨年3月には、基本方針の改定を行った。主要な内容としては、例えば、いじめの定義に関する見直しを行ったことが挙げられる。それまでの基本方針では、けんかがいじめの定義から除かれていたが、その部分を削除して、けんかやふざけ合いであっても、いじめに該当するかをきちんと判断するようにした。それから、教職員がいじめに関する状況把握をしていない場合には、法律違反になり得ると明記した。

さらに、いじめが解消したかの定義も詳細に規定し、いじめに係る行為がやんでいること、被害者が心身の苦痛を感じていないこと、こうした要件が満たされない限り、安易にいじめが解消したと判断しないように求めた。

また、いじめの重大事態の調査においては、遺族に寄り添った対応がなされていないとの指摘もあった。基本方針の改定と併せて作成したいじめの重大事態の調査に関するガイドラインでは、特に自殺事案の場合には、遺族の心情を理解して丁寧に対応すること、それから、根気よく信頼関係の構築に努め、被害児童生徒、保護者に寄り添いながら調査を進めることを、学校や設置者の基本姿勢として示した。

文科省としては引き続き、いじめ防止などのための対応が適切に行われるように、同法や基本方針、ガイドラインの周知徹底に努め、学校現場や教育委員会に対して、今後必要があれば指導・助言も適切に行っていきたい。

髙橋道和文科省初中局長

■SNSによる相談窓口
――SNSによる相談窓口の実証研究が本格的にスタートする。長野県では大きな成果が見られたが、全国展開に向けたロードマップは。

近年、若年層の多くがSNSを主なコミュニケーション手段として用いているため、将来的には、全国の子供たちが、いじめを含むさまざまな悩みについてSNSなどを活用して相談できる体制を整備することが望ましい。

昨年の長野県での試行では、14日間で547件の相談に対応することができたと報告を受けている。電話相談は16年度には年間で259件なので、52週間に対してわずか2週間で、倍以上の相談に応じることができたことになる。大変気軽に相談できる窓口として、潜在化していた子供の相談したい気持ちを掘り起こす効果があったのではないかと受け止めている。

国も17年度の補正予算、18年度の当初予算で、こうした取り組みを財政的に支援する補助事業を新たに実施する。現時点で27の都道府県、政令市などがSNSなどを活用した相談事業を開始する予定になっている。すでにそのうちの3県では、この4月上旬から運用が始まっている。各県でも順次開始できるよう、準備を進めていただいている。

文科省としては今後、まずはこの27自治体にしっかりと実施いただいた上で、それを横展開していきたい。そして事業の成果や課題も踏まえながら、相談技法の改善も図りつつ、全国的な展開ができるような検討を進めていきたい。

10月に実施される組織再編イメージ

■総合教育政策局への組織再編
――今年の10月に生涯学習政策局を総合教育政策局に組織再編することによって、初等中等教育政策に、どのようなメリットがあるか。

今回は文科省の教育系の3局(生涯学習政策局、初等中等教育局、高等教育局)の再編となる。特に生涯学習政策局を総合教育政策局に改編するのは、とても大きな改正だ。これにより、これまで大きな課題であった学校教育と社会教育の縦割りを克服して、生涯学習の理念を踏まえた、より横断的・総合的な教育政策の推進が期待される。また、3局の中での人員や予算が、ある程度平準化していくという効果もある。

初中局関係では、最も大きい改正は、教職員課が総合教育政策局に移ることだ。その上で、総合教育政策局の中に「教育人材政策課」という課を作る。この教育人材政策課では、初中局の教職員課、それから、高等局の教員養成に関わる組織を合わせた形で新設される。これによって、今まで初中局と高等局に分かれていた教員の養成、免許、採用、研修、こういった業務が一元化される。再編によって、大きな効果が出てくるのではないかと期待している。

また、国際教育課の担当業務のうち、日本人学校に係る海外子女教育に関わる部分、外国人の児童生徒に関わる部分は総合教育政策局に移る。逆に、今の生涯学習政策局が担当している情報教育が、一部を除き初中局に移る。国際教育課が所管している外国語教育に係る部分が初中局に残り、情報教育と外国語教育を両方担当する「情報教育・外国語教育課」という課を新設する。

特に情報教育については、今回の学習指導要領でプログラミング教育が小学校に導入され、今後、AIやIoTが普及していく大きな社会の流れの中で、非常に注目されている。新学習指導要領のカリキュラム全体で考えていく必要もあるので、初中局の中で大きな役割を果たしていくと期待される。

それから、近年、エビデンスに基づいた政策を担当していくという動きがある。総合教育政策局が中心になって、データをしっかり分析し、エビデンスに基づいた政策を重視していく。このような流れの中で、全国学力・学習状況調査の担当が総合教育政策局に移ることになった。日本の子供の学力や学習状況について、より充実した分析が行われていくのではないかと考えている。

この他にも、初中局の中に高校教育を担当する参事官を新設する。現在は、教育制度改革室に高校関係業務があり、児童生徒課の産業教育振興室では、高校の産業教育を担当しているが、こういったものを合わせ、高校を担当する、課相当の参事官ポストを置いて、高校を専門に担当する課長級ポストを一つ新設する。

省庁再編を行った01年までは、当時の初中局の組織は小学校課、中学校課、高等学校課という校種に対応していた。それを省庁再編の際の機構改革に合わせて、教育課程課と児童生徒課に組み替えた経緯がある。カリキュラムの一貫性や学校種を超えた生徒指導の接続という意味では、効果があった一方で、各学校種、特に高校を全体的に見るという視点が弱くなった面は否めない。

今、地方創生をめぐる議論の中でも、高校をどう活性化していくかが、政府内でも注目されている。文科省としても、参事官ポストの新設によって、高校教育改革に弾みをつけていきたい。

■児童生徒にとってかけがえのない存在
――最後に、読者に向けてメッセージを。

児童生徒にとって教員は、かけがえのない存在だ。教育の成否を決めるのは、一にも二にも教師。社会の進歩や変化のスピードが速まる中で、子供たちにも絶えず学び続ける資質が求められる。そのためには、教員自身が探究心を持って学び続ける存在であることが求められる。

文科省としては働き方改革を政策の中心に据え、先生方が余裕をもって学び続けられるような環境をつくらなければならないと思っている。全国の教委とも連携しながら、予算面、制度面の対応も含め、先生方をしっかりとバックアップできるように取り組んでいきたい。先生方は、児童生徒にとってかけがえのない存在だと常にどこかで意識していただきながら、子供たちのためにご活躍いただきたい。

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