詳報 2018年度全国学力・学習状況調査 結果と課題

文科省が公表した2018年度の全国学力・学習状況調査の結果は、小学校の算数B、中学校の数学Aと理科以外で前回調査よりも平均正答率が下がった。同省では今回から調査結果の公表時期を前倒しし、各学校に対して2学期からの授業改善に活用するよう促している。各教科の問題、質問紙から見えてきた課題とは――。

■小学校国語

複数資料を用いた表現に課題
小学校国語B問題大問2

相手や目的に応じて事例を挙げながら論理的に話したり、慣用句の意味を理解した上で活用したりすることはできていた。その一方で、主語と述語の関係に注意して文章を書くことに課題が見られた。また、話し手の意図を理解しつつ、自分の考えをまとめたり、複数の資料を関連付けて理解・表現したりするのは苦手だった。

A問題の大問5で、春休みについての文章の中で、主語と述語のつながりが合っていない文を選び、正しく書き直す問題(正答率35.8%)では、正しく選択できなかったり、主語と述語のつながりを捉えて正しい文章に書き直せなかったりする解答が見られた。

主語と述語の関係は、表現するときだけでなく、文章を読むときも意識する指導が求められる。

B問題の大問2では、「かみかみあえ」という給食の献立を推薦する文章を書く際に、虫歯を防ぐ効果があるという「保健室の先生の話から分かったこと」を取り入れて詳しくすることが求められたが、正答率は13.5%と低かった。「よくかむこと」と「おすすめする文章にふさわしい言葉」を使って書くことはできているが、「唾液がたくさん出て口の中をきれいに保つこと」に触れていない解答が31.7%あった。

キーワードを見つけて関係付けるなど、適切な内容を取り上げて目的に応じた効果的な文章を考える活動を行う必要がある。

■小学校算数

グラフの読み取りが苦手
小学校算数A問題大問2

二つの異なる量について、単位量を設定して比較することは理解できている。一方で小数の除法の意味やグラフからの読み取りに基づく判断、日常生活の事象について数量を関連付け、根拠を明確にして記述することに課題が見られた。

A問題の大問2で、答えが「12÷0.8」の式で求められる問題を全て選ぶ問題(正答率40.1%)では、「(1)1mの重さが12kgの鉄の棒があります。この鉄の棒0.8mの重さは何kgですか」(誤答)と「(4)長さが12mのリボンを0.8mずつ切っていきます。0.8mのリボンは何本できますか」(正答)を選ぶパターンが21.4%あった。

図や数直線に表して、数量関係を的確に捉え、式を立てる指導が求められる。

B問題の大問3のアンケート結果から読み取った情報を示した二つのメモについて、グラフのどのようなことに着目して書かれているかを文章で説明させる問題(正答率20.9%)では、それぞれのメモに示されている数値がグラフのどの部分に着目したものなのかを捉え、記述できていない解答が43.1%あった。

話し合い活動などで、他者が読み取った情報や観点をグラフと関連付けて解釈できるようにする指導が求められる。

■小学校理科

結果から考えを改善するのに難
小学校理科大問2(3)

観察や実験の結果を整理して分析・考察することはできているが、その内容を記述することや、予想が確かめられた場合に得られる結果を見通して実験を構想したり、実験結果を基に妥当な考えに改善したりすることに課題があった。

大問2(3)の、一度に流す水の量と棒の様子との関係から、大雨が降って流れる水の量が増えたときの地面の削られ方を選び、その理由を記述する問題(正答率20.2%)では、実験で「一度に流す水の量を増やした」という原因について的確に捉えて記述することができておらず、原因と結果の見方から分析・考察したことを説明できていなかったり、実験結果を基に分析・考察できていなかったりする解答が多く見られた。

指導改善として、実験結果を表などに整理して、考えの根拠となる事実と、その事実から解釈したことの両方を整理して説明する活動が考えられる。

大問4(4)の食塩水を熱したときの食塩の蒸発について、実験から導き出せる結論のみを書く問題(正答率36.0%)では、食塩は蒸発するという誤った知識に基づいた記述や、実験結果から言えること以外の記述をしている例が見られた。

実験や観察によって得られた結果を事実として捉え、その事実から解釈したことを「実験結果から言えること」として言及する活動が重要になる。問題解決のさまざまな場面で自分の考えを表現したり、他者の考えを聞いて自分の考えを見直したりする活動が有効になる。

■中学校国語

内容を的確に捉えて書くことに課題
中学校国語B問題大問1

場面展開や登場人物の描写に注意して読み、内容を理解することはできているが、目的に応じて文章を読む際に情報を整理して内容を捉えたり、文の成分の順序や構成などを考えて文書を書いたりすることに課題がある。

A問題大問8の四2の、「心を打たれた」を文末に用いた一文を、主語を明らかにし、「誰(何)」の「どのようなこと」に「心を打たれた」のかが分かるように書く問題(正答率22.8%)では、「映画の最後のシーンに(心を打たれた)」のように、「心を打たれる」の意味を理解できており、誰(何)のどのようなことに心を打たれたのかが分かるように書くことはできているが、主語を明確にして書いていない解答が多く見られた。

心の動きや身の回りの物事に具体的な内容を盛り込んだ文を書き、伝えたいことを適切に表現するための語順、対応を検討する学習や、文章の推敲(すいこう)の際の観点の一つとして意識させる指導が効果的であると考えられる。

B問題大問1の三の、グラフと説明文から、「天地無用」という言葉を誤った意味で解釈してしまう人がいる理由を書く問題(正答率13.9%)では、「無用に『してはならないこと』という意味があるが、現在は無用以外の表現を用いているため」と、「『天地無用』には『逆にする』に当たる内容が省略されている」という二つの条件のいずれかのみを記述したり、文章中の表現を用いて書いているが、必要な内容を捉えられていない記述が見られた。

目的に応じて文章の内容を的確に読み取るためには、文章の中心的な部分と付加的な部分、事実と意見などを読み分け、文章の構成や展開を捉えて理解するように指導する必要がある。段落の関係や図表と文章との関係、書き手の意図やその効果を考える学習活動が有効である。

■中学校数学

数学的な解釈、表現が苦手
中学校数学B問題大問3(3)

平面図形の運動による空間図形の構成、球の回転体としての構成の理解、見取図、投影図から空間図形を読み取ることはできている。比例定数の意味の理解にも改善傾向が見られた。その一方で、事象を数学的に解釈し、問題解決の方法を数学的に説明したり、数学的な結果を事象に則して解釈することを通して成り立つ事柄を判断し、その理由を数学的な表現を用いて説明したりすることに課題がある。

B問題大問3(3)の「A駅からの道のりが6kmの地点において、列車アが通ってから列車エが通るまでの時間をグラフ(ダイヤグラム)から求める方法を説明する問題」(正答率13.9%)では、①列車アと列車エのグラフのy座標が6である点に着目する②①に対応するxの値の差を求める③①に対応する2点間のx軸方向の距離を読む――の三つの正答条件のうち、①、②または①③について記述しているものを正答とした。①についてyを用いた記述がなく、②についての記述が不十分な解答や、①だけを記述している解答、グラフを用いることについて記述しているが、三つの条件について記述がない解答があった。また、無解答が32.7%を占めた。

問題解決の方法を数学的な表現を用いて説明できるように指導する際に、「用いるもの」と「用い方」を確認し、表、式、グラフの用い方を説明する場面を設定することが考えられる。

数学B大問5の(2)の「通常料金をaとしたときの団体料金の10人分が通常料金の何人分にあたるかを求める計算から分かることを選び、その理由を説明する問題」(正答率10.9%)では、「イ」を選択した上で、文字α(通常料金)を使って団体料金の10人分が通常料金の何人分に当たるかを表した式に、αが含まれていないこと、その式を用いた計算過程でαが消去されていることの、二つの条件のいずれかについて記述しているものを正答とした。

「ア」を選択している割合が34.4%、「イ」を選択しているが、二つの条件についての記述がなく、団体料金の10人分が通常料金の何人分に当たるかや通常料金に着目して記述している解答が10.6%あった。

数学的な結果を事象に即して解釈したり、事柄が成り立つ理由を数学的な表現で説明したりする指導を行うことが大切である。

■中学校理科

実験条件の検討に課題
中学校理科大問4(3)

習得した知識・技能を活用して観察、実験の結果を分析して解釈することには改善が見られるが、実験、条件制御などで自分や他者の考えを検討して改善することや、自然の事物・現象に含まれる要因を抽出して整理し、条件を制御して実験を計画することに課題がある。

大問4(3)のファラデーのロウソクの実験から、化学変化をモデルで表した式を検討・改善し、適切な酸素のモデルを記述する問題(正答率50.0%)では、解答用紙の欄に「◎◎」が3個になるように記述しているものを正答とした。化学変化の前後で原子の種類は変化しないことは理解しているものの、原子の数が変化しないという知識が身に付いていないと考えられる解答が13.9%あった。

自然の事物・現象や日常生活で見られる化学変化を原子や分子のモデルで提示し、化学変化の前後で原子の数や種類は変化しないという知識を活用して、そのモデルを検討・改善する学習が有効である。

問題9の(2)の、植物の蒸散以外で容器中の湿度を上げる原因を記述する問題(正答率19.8%)では、土(鉢、皿)の場所と水蒸気(水の蒸発も可)という語句を使って、湿度が上がる仕組みの両方を記述しているものを正答とした。水蒸気が出ていることや水の状態変化については記述しているが、水蒸気が発生している場所を記述していない解答や、容器の中の湿度について触れているが、水蒸気が発生する場所とその仕組みの記述がない解答があった。

変化の原因として考えられる要因を全て挙げ、その妥当性を検討し、それらの要因を「変える条件」と「変えない条件」に整理して、実験を計画する学習場面を設定することが考えられる。

■質問紙調査

主体的・対話的で深い学びは正答率に好影響
「これまでの授業で、課題解決に向けて自ら考え、進んで取り組んでいたか」と平均正答率のクロス集計結果

主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善に関する取り組みについて、「授業では、課題の解決に向けて、自分で考え、自分から進んで取り組むことができている」(新規)と肯定的に回答した小・中学校は8割、児童生徒は7割を超えた。この質問に肯定的に回答した児童生徒の方が平均正答率が高かった。

「習得・活用及び探究の学習過程を見通した指導方法の改善及び工夫をしている」について、肯定的に回答した小・中学校の割合は、2016年度以降増加傾向にあり、18年度は9割を超えた。この質問に肯定的に回答した小・中学校の方が、平均正答率が高かった。

「学級の友達(生徒)との間で話し合う活動を通じて、自分の考えを深めたり、広めたりすることができると思う」と肯定的に回答した児童生徒の割合は17年度と比べて増加し、18年度は7割を超えた。この質問に肯定的に回答した児童生徒の方が平均正答率が高かった。

学校運営に関する取り組み状況に関し、「学校として業務改善に取り組んでいるか」(新規)で、肯定的に回答した小・中学校の割合は9割を超えた。「児童生徒の姿や地域の現状等に関する調査や各種データなどに基づき、教育課程を編成し、実施し、評価して改善を図る一連のPDCAサイクルを確立している」と肯定的に回答した小・中学校の割合は16年度以降、増加傾向にあり、18年度は9割を超えた。この質問に肯定的に回答した小・中学校の方が平均正答率が高かった。

自己肯定感について、「自分には、よいところがあると思いますか」という質問に肯定的に回答した児童生徒の割合は、13年度以降増加傾向が見られ、18年度は約8割に達した。この質問に回答した児童生徒の方が、中学校国語を除き、平均正答率が高かった。課題解決に向けた主体性、他者との協働に関して肯定的な児童生徒、教員に認められていると感じている児童生徒の方が自己肯定感が高かった。

「人の役に立つ人間になりたいと思う」「いじめはどんな理由があってもいけないことだと思う」について肯定的に回答した児童生徒の割合は9割を超えており、18年度は17年度に比べて「そう思う」と回答した児童生徒の割合が増加した。

地域や社会と学校の連携・協働について、「保護者や地域の人との協働による取り組みは、学校の教育水準の向上に効果があった」(新規)で、肯定的に回答した割合は小学校で9割、中学校で8割を超えた。地域学校協働本部やコミュニティ・スクールなどを活用したり、地域人材が学校の活動に参加したりしている小・中学校の方が「保護者や地域の人との協働による取り組みは学校の教育水準の向上に効果がある」と回答する傾向が見られた。

「教育課程の趣旨について、家庭や地域と共有を図る取り組みを行っている」(新規)に、肯定的に回答した学校の割合は小学校で9割、中学校で8割を超えた。授業や課外活動で地域のことを調べたり、地域の人と関わったりする機会を設けている小・中学校の方が「教育課程の趣旨について、家庭や地域との共有を図っている」と回答する傾向にあった。