いじめ防止対策推進法 見えてきた課題(1) 立法者の視点

施行から丸5年が経過した「いじめ防止対策推進法」。同法はどこまで役立っているのか、改正すべき点は何か――。立法、行政、遺族、第三者委それぞれの視点から、評価と課題を浮き彫りにするため、「クローズアップ取材班」では、立法者である馳浩元文科大臣、文科省の大濱健志・初中局児童生徒課長、ジェントルハートプロジェクトの小森新一郎代表と小森美登里理事、青森市いじめ防止対策審議会の和久田学委員にインタビューした。第1回は、馳元文科大臣。


■いじめの増減で評価すべきではない
――立法者として、「いじめ防止対策推進法」の施行後5年間の実績をどう評価するか。

立法のきっかけは7年前に起きた、滋賀県大津市立中2年の男子生徒(当時13)の自殺だ。反省から、法律が必要ということになった。その反省とは、第三者による調査だ。いじめの事実関係を把握し、教員が一人で抱えないよう、学校長を中心にチームで解決する。刑法、自殺に関わる重大事案の場合は、必ず第三者委が調査して事実関係を明らかにする。そして一番の課題は、関係者の処分だ。こうしたことをルール化すべきではないかという要請が、立法化につながった。

文科省、児童相談所を抱える厚労省、司法関係の法務省、警察などの合意の上で立法したが、スタート地点としてはできるかぎりという内容だった。

そして立法者の手を離れて運用段階に入ったとき、温度差があるのではと心配になった。その懸念は丸5年を経た現在もある。つまりせっかく法律があっても、すべての教職員、保護者は読んでいない。少なくとも各自治体の教育長、児童生徒課長、教職員課長、指導主事、管理主事、PTA会長、地域の警察署長、あるいは社会福祉協議会の会長など、子供のいじめ問題に関わる人には読んでほしい。

それを踏まえて考えると、いじめの増減で成果を議論するのは、あまり生産的ではないと正直なところ思う。不断の取り組みが必要だ。

■法改正と見直しポイント
――これからの課題は。法改正はあるか。

今年4月に総務省から「いじめ防止対策推進法」についての勧告が出た。この勧告を踏まえ、超党派で集まって6月から勉強会を行っている。私が座長となり、すべての会派に入ってもらっている。

見直しの論点整理をしてもらったり、教育長や専門家にヒアリングしたりしている。その見直し項目にしたがって改正したい。次期国会提出を目指している。

――具体的に、いま話し合っている見直しポイントは。

まず、「いじめやいじめ対策に向けた認識の問題」だ。いじめの発生責任でなく、防止などの対策責任が評価されることを理解し、いじめ対策は管理職、教委が最優先に取り組むべき問題だと認識してほしい。現状では多忙化などを理由にして、後回しにしたり、あえて見逃したりしていないだろうか。

いじめの定義も課題だ。いじめの定義をあまりにも狭く解釈しすぎて、見て見ぬふりや、隠蔽(いんぺい)をしていないか。

また、現行では「努力義務」となっている地方公共団体のいじめ防止基本方針も、絶対に「義務」にするべきだ。同方針を参考に、各学校もPDCAサイクルが回せるように、いじめ防止の基本方針を作ってもらいたい。作ることで、校長はじめ全教職員に認識してもらえると思う。

そして何よりも、学校地域、家庭の連携によるいじめ防止対策が徹底されていない、機能していないことだ。弱みは守秘義務にある。チーム学校や学校地域連絡協議会などで共有することを条文に入れ、機能させたい。

重大事態への対応も重要課題だ。第三者委を教委のもとにおくか、首長のもとにおくか、被害者側が選択できるようにしたほうがいい。あるいは第三者委のメンバー選定が中立公正になるよう、明記してはどうかと思う。

その他にも▽保護者からへの申し立ての対応、学校がいじめとは認識していないときの対応を明確化する▽SNS対応▽立法に基づいた対応をしなかった場合の学校側、教委側の人事▽学校長の監督責任▽文科省の指導権限▽教師による不適切な指導、教師によるいじめへの対応――などを議論している。

――教員へメッセージを。

いじめ防止対策を、本当にお願いしたい。児童生徒が加害者にも被害者にも傍観者にもならないよう、させないようにしてほしい。われわれは大人として、保護者として、教育関係者として、いじめ防止に熱意を持って取り組んでいく必要がある。