いじめ防止対策推進法 見えてきた課題(2) 行政の視点

施行から丸5年のいじめ防止対策推進法。同法によって、いじめ防止の取り組みはどこまで進んだのか――。同法の評価と課題、今後のいじめ防止政策について、文科省の大濱健志・初中局児童生徒課長に聞いた。


■現場への浸透が不十分
――いじめ防止対策推進法は、いじめ対策にどのような影響を与えたか。

いじめの定義が法律にしっかり書かれたことが、一番大きな意義だ。それまではさまざまないじめの捉え方があり、いじめとして認知されていなかったものもあった。いじめの定義を明確にしたことで、学校の認知件数の増加にもつながった。われわれとしては、いじめの認知件数が多い学校については、いじめを初期段階のものも含めて積極的に認知し、その解消に向けた取り組みのスタートラインに立っていると捉え、ささいなことにもしっかり目を向けて組織的に対応していると、極めて肯定的に評価している。

いじめが起きた際、学校は組織的に対応するように法律で明確に示されている。同様に、学校設置者、地方自治体の責務も書かれているので、この法律の意義は大きい。

文科省では、同法に基づき、詳細な基本方針を定めている。2013年に大臣決定した後、17年3月に改定した。例えば、いじめ防止に向けて具体的にどういう組織が学校に必要なのか、いじめ早期発見のポイントなどを定めている。

大濱健志・文科省初中局児童生徒課長

――いじめの重大事態に関して、情報を隠蔽(いんぺい)してしまったり、第三者委で法律と異なるいじめの定義を用いたりするケースが相次いでいる。

残念ながら、いまだに一部の現場にはこの法律の理念が十分浸透していない。教員一人一人にまで、この法律の理念やいじめの定義、組織的な対応をしなければならない理由など、完全な理解に至っていない。われわれとしても全国各地の自治体に赴いて、丁寧に説明している。今年度はすでに34の都道府県と政令市を訪れた。しかし、残念な事例がまだあるということは、われわれのメッセージが十分に伝わっていないということでもある。今後も説明を続けていくしかない。

■第三者委の在り方を議論
――最近のいじめの傾向は。

スマートフォンの普及によって、SNSによるトラブルやいじめの対応に迫られている。数年前までは学校裏サイトをネットパトロールして対応していたが、SNSのグループの中でのやり取りになると、学校側も把握が難しくなる。教員もSNSが得意な人もいれば苦手な人もいる。中高生のコミュニケーション手段の大半がSNSになっているので、SNSによる相談窓口の事業にも取り組んでいるが、ネットリテラシー教育の充実も必要だ。時代の流れによっていじめも変化するので、対策として「これが正解」「これがまずい」と定型的にできるものではなくなってきている。

この他にも、「原発いじめ」をはじめ、性同一性障害、帰国子女、外国人に対するいじめなど、さまざまな問題の対応策を議論している。多様性やいろいろな立場、考え方を受け止め、尊重しながら、社会を作っていくことが求められている中で、いじめ問題もしっかり対処していかなければならない。

――いじめの被害者家族からの要望をどのように受け止めて、政策面に反映しているか。

報告書などでいじめの原因が、被害にあった子供にもあるかのような書き方をしているという声がある。直近のいじめ防止対策委員会でも、委員から第三者調査委員会の在り方を今後しっかり議論すべきだという意見が出た。重大事態が起きた際の第三者調査委員会の人選も含め、委員会の在り方や設置の目的などを議論していくことは、今後の課題の一つだ。

――教員に伝えたいことは。

いじめはどんな学校でも、どんな人間関係でも起こり得る。いじめが起こったからといって、教師が駄目だとなるわけではない。むしろ、しっかり子供たちの顔色や発言、クラスの雰囲気を見て、いじめに気付けたと前向きに捉えていただきたい。いじめが起きたら、教師は一人で抱え込み、悩まず、例えば隣のクラスの担任や同僚に相談してほしい。いじめが起こったときの対応に一律のマニュアルはない。教員の信念に基づいていじめた子、いじめられた子、周りの子とみんなで話し合って、教員も意見を述べて、じっくりコミュニケーションを取ってほしい。

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