未来の部活動を考える(下) 部活動の在り方

全日本中学校長会(全日中)会長の山本聖志校長(東京都豊島区立千登世橋中学校)と、教育社会学の研究者である西島央准教授(首都大学東京)、次世代教員の養成に当たる阿部隆行専任講師(東京国際大学)が、未来の部活動をテーマに行った鼎談(ていだん)の最終回。部活動はどうあるべきか、各校で明日にでも取り組めることは何か――。


■日本の部活動が目指すべき方向
――中長期的に、国の施策はどうあるべきだと思いますか。

西島 今、部活動が担っている役割はものすごく大きく増えていて、「これをやめる」という考えがない。これからは、今まで部活動に期待していたものの中から、「学校の教育活動全体を見渡して、これはやめよう」というものをいくつか作っていかないと、もう立ち行かなくなっている。学校としてやめるのが無理だとしても、部活動で担ってもらうのはやめていく必要がある。

部活動ガイドラインとしては現在、資料のように考えています。

※西島准教授の作成した資料はこちら

ただ一方で、スポーツや芸術活動をどう保証するかという課題はあります。それは今後、社会教育やスポーツ競技団体、芸術団体と併せて考えていく必要がある。少子化が進んで日本の人口が減っているのに、逆にスポーツ競技の種類はどんどん増えている。水泳などで新種目が作られ、eスポーツも生み出された。日本社会でこれをどう支えていくか。

――部活動を個別に取り上げるのではなく、これからの日本社会という視野でなければならないのですね。

西島 スポーツ庁、文化庁、文科省、それから競技団体や芸術団体が議論をして、文化に関する新しい社会デザインを描き直していくことが必要になっていくでしょう。

例えば米国のように、シーズン制でいろいろな種目に複数参加できるようにするなど。すそ野を広げるという話と、トップを育てるという話をどうデザインしていくのか、その中で学校にはどこを期待するのか。新たな像を描いていかないといけない。

山本 海外事情を少しお話しすると、私が2校目に勤務したのはドイツのフランクフルトにある日本人学校で、3年間勤務しました。1校目の指導経験を生かして部活にも熱を入れるつもりで行ったのですが、そもそも部活動がなかった。その背景には、諸事情から子供たちがかなり広域の範囲から通っているという状況などがありました。

――でも、ドイツはサッカーなどいくつもの種目で強豪国ですよね。
山本全日中会長

山本 そうです。部活動をやりたい子はもちろんいます。ではどうしているか。代わりに現地の小・中学校を会場に、その種目をやりたい子供が集まり、州から委託された指導者の指導を受けるのです。

例えば、卓球をやりたい子は、卓球がやれる地元の小学校へ。バドミントンが得意な子は、バドミントンがやれる別の中学校へ行く。そこには現地校に通うドイツの子もいれば、日本人学校の子もいて、いろいろな人が集まって習っているわけです。

――指導者はどんな方々でしたか。

山本 びっくりしたのですが、ナショナルチームの元OB、OGでした。つまりオリンピック級の選手が引退後、指導に関わっている。子供はめきめき、うまくなっていきます。この制度はいいなと思いながら帰ってきましたが、日本ではなかなかそうはならない。地域総合型スポーツクラブができて期待しましたが、うまくいっているところと、そうではないところがあるようです。

■海外の事例をいかに取り入れていくか
――アジア諸国の状況はどうなっているのでしょうか。

山本 全日中で韓国と年1回、交流会を開いて隔年で訪問し合っています。昨年は韓国の教育関係者が訪日してくださった。その際、韓国の先生方が放課後どうしているのか、土日の出勤がどうなっているのかを尋ねました。教員の働き方についての質問です。

そうしたら「ありません」と言っていました。「放課後は、一部の教員が補習など外部指導の対応をしていますが、基本的に放課後は個人の時間です」と。土日はそもそも勤務がない。びっくりしてしまいました。

――お互いアジアで、隣国なのにずいぶん違うのですね。

山本 そう考えると、日本の部活動の在り方が非常に疑問になってしまいました。

部活動を捉え直すことは重要ですが、在り方は多様だと思います。だから、固定観念で「今やっていることをずっとやらないといけない」とは思えない。

持続可能で、子供たちにふさわしい部活動は、まだまだ見えてないのが正直なところです。これから外国の例も参考に、議論を重ねていかなければいけない。

阿部 部活の在り方が盛んに議論されていますが、「地域か学校か」といった「ゼロか百か」という議論が結構多い。ですがその中間、50くらいの部分を考えていく必要があると思います。

例えば学校の部活動は午後5時までで週3回程度。それ以上やりたい子は、地域でお金を払ってやる。学校では必要最低限の消耗品を買う程度の部費で運営して、地域では指導料を払い、教える人が報酬を得られる仕組みを作る。

西島 おっしゃるとおりで、在り方は一つではない。ところが一つにしないといけない背景に、大会があります。ある年齢で区切らなければならない。でも、日本の場合、中学校とか高校でやっている。でも、例えば野球の世界大会はアンダー19。

阿部 「高校生」などのくくりは、世界大会ではないですね。

西島 各学校段階の年数が国によって違うからですね。でも、国内では学校のくくりに縛られている。

スポーツや芸術の機会は、どの年齢、どの世代にも保証される状況のもとで、それぞれの地域でできる方法、例えば総合型地域スポーツクラブが成り立つようなところであれば、学校と連携できる方法を考えるなど、うまくいく事例を見つけていく。そして社会全体で、スポーツや芸術の機会をきちんと保証することが重要です。

山本 学校では当然のことながら、限界がある。最大の悩みは専門の指導者が、なかなかいないことですね。そのために負担と感じる者がいる。

ドイツでサッカーなどが強いのは、指導者のよさがあります。いい指導者に育てられて、「君はここのレベルにはもう合わないから、次のところへ」という考え方が根付いているから、頭角を現してきた才能のある人材はきちんと見いだされる仕組みがある。

――ドイツでは、日本でいう文化部に入りたいような子はどうしているのですか。

山本 例えば音楽が好きな小・中学生が、地元の音楽大学に行って、大学院生などに指導を受ける仕組みがある。これは懐が深いと感じました。社会的な財産の活用が、日本の場合には弱いと思います。部活動指導員がそれに当たるのかは別問題ですが、多角的に見れば、活用できる人材はありそうです。

西島准教授

西島 一方、日本の学校は、百何十年やってきたやり方がある。その部分がなくなったときに、どうするのか。

ドイツにはシュポルトフェアラインと呼ばれる、いわゆる総合型地域スポーツクラブが各地域にあり、子供たちがそこでスポーツ活動をしている様子を私も見ました。韓国の場合は、日本以上に習い事が盛ん。習い事の教室が子供たちを送り迎えするバスを持っていて、習い事を三つぐらいはしごする子供もいるらしい。

――学校が担っている役割も、かなり違いますね。

西島 ですから、日本と諸外国とでどこが違うのかをきちんと整理して、ドイツや韓国のやり方で参考にできるところは、日本の学校が変えていく。「いや、ここは日本が百何十年かけてやってきた特徴だ」というところは、大事に。

7月下旬に出されたOECDの報告書では、日本の特徴は特別活動があって、全人教育をしてきたところだとしている。だから、教師の仕事が、工場で機械を作るようなものにはならないように、それを慌ててやめてしまうことがないようにと、そういう注文が付いていた。

――世界的に評価されている特徴ですね。

西島 だから、今の日本の教育について、なくしてもいい部分、残していくべき部分を併せて考える必要があると思っています。

■明日からできること

西島 私はガイドラインを、週何日、何時間という決まった値で出すのではなく、幅を持った数値を出した方がいいと思っています。この数字で強制力を持たせるかどうかの前に、幅が現実にはあるということを踏まえて、望ましい在り方を考える。

出された方針を一律に守ればよいという話ではないことを、しっかり各教育委員会や校長先生に分かっていただきたいと思います。

山本 全日中で校長先生方と話をしていると、「部活動熱心な先生というのは、授業における指導力も実はいい」という話になります。表裏の関係だと。必ずしも、自分の専門でなくても、その部活動を一生懸命支えている教員が力のある教員として育つし、力を発揮している。

だが、各学校にはさまざまな事情を抱えた教員がいるのも事実であり、「一部の先生たちの熱意だけに支えられていていいのか」という話をしないと、結論は出ない。

――熱心な先生のおかげで何とかなっているところを変えていくというお話ですが、国の施策を待たずとも、学校や現場の先生方がすぐに取り組めることとしては、どのようなことがあるでしょうか。

西島 実は先日、日大アメフト部の復帰を認めるかに関する検証委員を務めたのですが、そこで「大学スポーツの在り方」が話題になった。米国は進んでいるが、日本版NCAA(全米大学体育協会)を作ろうとしてもうまくいかない。日本の大学スポーツも見直さないといけない。

――日大アメフト部の問題では、大学スポーツの根本的な意味などが問われましたね。

西島 その視点で中学・高校を見た時に、学校ごとに部活動の在り方を整理する必要性を感じました。学校教育活動の一環としての部活動が、どんな意義や役割を持つのか。目的に即した活動の在り方はどうあるべきか、など。

校長先生が「うちの学校は、こういう位置付けで部活動をやっていく」ということを、もっとはっきり打ち出していく。その中で、強豪の部なのにたまたま技術指導できない先生が顧問をやらなければならなくなった時には、部活動指導員を活用して部の水準を維持するということになるでしょう。

――「この部はゆるくやる」と打ち出してもいいですね。

西島 学校の方針の中で「この部はゆるい部としてやっていく」と位置付けたら、そこにもし技術指導のできるすごい先生が来ても、「うちの学校では、この部はこういう位置付けだから、ゆるい部として指導してくれ」と強く言うことが求められると思います。大事なのは、教育活動全体の中で、それぞれの部や教員がどうバランスを保つか。

山本 バランスを保つ意味でも、かつて長らく、多くの学校でやっていたような「全員部活動に加入しなさい」「熱心にやりなさい」「教員は全員、部活動の顧問」といった体制ではもう行き詰まっている。

だから都心部では特に、多様性、ダイバーシティが進んでいると感じます。部活の加入率も以前は100%とうたっていて、それがいいことだった。下がると「何だこれは」と問題視。最近はそうではなく、例えば塾に行きたい子、サッカーでジュニアユースに参加している子、野球で地元のクラブチームに入っていて学校の野球部には入っていない子が、たくさん出てきている。学習指導要領にある「生徒の自主的、自発的な活動」に近づきつつある。

阿部専任講師

阿部 「部活ダイバーシティ」という言葉が使われるようになっています。部活にも多様性があっていい。ガイドラインにも「生徒のニーズを踏まえた運動部」とあります。2校目で私が立ち上げ、実践した「総合スポーツ同好会」はまさにそれでした。

――どんな活動をしていたのでしょうか。

阿部 まず、部活動に何を望むか生徒にヒアリングしました。すると、「一つの部活、一つの種目に縛られたくない」「毎日は活動したくない」「自分が出られるときに出たい」。そのニーズを踏まえ、大学のサークルのようなゆるい同好会を作った。生徒が種目を設定して、月曜日はフットサル、火曜日はスリーオンスリーというような形で、いろんな種目ができる同好会です。思いのほか好評で、部活に入らない子もすくい上げられた。

eスポーツ同好会のように、皆で集まってゲームする部、同好会があっていいと思いますし、例えば、甲子園やインターハイを目指す強豪の部でも、短時間で結果を残したり、人間教育をしたりという「ホワイト部活」をもっと発掘して、紹介していくことが必要だと思います。

山本 それに部活のために多くの時間を割く教員のためには、処遇の改善が必要です。部活動手当はありますが、決して大きな額じゃない。条件整備は欠かせないです。

阿部 教員のレベルでは処遇などのハード面を変えることは難しいですが、教員の意識改革をすることは明日からでもやる気になればできると思います。どういう意識改革かと言うと、例えば、「主体的・対話的で深い学び」が部活でできないかという視点。

一斉指導ではなく、ある程度生徒に任せる。生徒が練習メニューを組んでみるなどの工夫が重要です。私は放任し過ぎてしまい、何も生まれずに失敗したことがありました。必要なのは支援や見守りをしながら徐々に任せていって、生徒ができることを増やしていくこと。

それがうまくいった時には、ミーティングで話すべきことが生徒の間から全て出つくして、キャプテンが見事にまとめた。最後に「阿部先生お願いします」と言われましたが、それ以上何を語ればいいのか困ったという経験があります。生徒に任せることでチームのレベルが上がっていくのを実感できた。段階的に生徒に任せるために、今日、明日から意識して、積み重ねていくのが重要だと思います。それは顧問の意識改革でできる。

■一つ一つ手放す準備を

西島 近いうちに解決できる課題として、適正部活動数のことがあります。ただ、ガイドラインでも触れられておきながら、具体的な基準は示されていない。

例えば主顧問と副顧問、2人の顧問を置くのが望ましいという世間的なイメージがありますが、私が行った調査の範囲では、教諭数を部活動数で割ると約1.8という数字になる。つまり実際には2人置けないんです。

先生方のワークライフバランスを考えたら、適正部活動数は当然、今より相当減ります。そうするとスポーツ競技団体が不満を言うかもしれません。でもそれは本来、スポーツ競技団体が自ら考え取り組むべきことです。学校としては、あくまで学校教育活動の一環として部活動を捉えて、適正な部活動数に抑えながら、どの先生にどの部を持ってもらうかという基準作りをする。中にはさまざまな事情で持てない先生もいますから、その負担感が解消される一手になると思います。

山本 部活動はしばしば、働き方改革の足を引っ張っているというマイナス要因として扱われます。でも実は、中教審が分類した「学校教師が担ってきた代表的な業務」には、学校の業務だが必ずしも教師が担う必要のない業務が挙げられています。

一つは調査統計などへの回答。これは事務職員でもできる。それから、児童生徒の休み時間における対応。これは地域ボランティアが対応できる。

次に挙がっているのが、校内清掃。ドイツで言えばハウスマイスターだったり、主事さんの役目だったりする。ですが校内清掃については、非常にブーイングが出ていました。全国の中学校の校長たちから「うちの学校経営の柱にしている」「教員効果が上がっている」と。

――世界的には珍しいですよね。

山本 そして、もう一つ挙がっているのが部活動なんですよ。部活動は、中教審の分類では学校の業務。しかし、必ずしも教師が担う必要のない業務だと位置付けられている。このことについて、なかなか現場の得心が得られないということがある。

だから今後、これまで長い期間取り組んできたものに対する「発想の転換」が求められている。

今日、いろいろなご意見、お考えをいただいたので、私にとっては貴重な時間でした。これを持ち帰って中体連や全日中にも報告できる。海外の事例も取り入れながら、改革に取り組んでいきたいと思います。

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