プレテスト2018 各問題の構成と特徴

大学入学共通テスト

11月10、11日にわたって実施された大学入学共通テストの試行調査(プレテスト)では、全国の会場で約8万4千人の高校生が参加した。20年度からの共通テストの実施を想定した問題では「国語」「数学Ⅰ・A」における記述式をはじめ、前の問題の解答によって正答が変わる問題など、現在の大学入試センター試験にはない出題形式もある。問題は大学入試センターのホームページで公開されている。科目ごとに問題の特徴を挙げた。

条件を指定した記述式問題(第1問問3)

【国語】 複数の題材の組み合わせ

近代以降の論理的な文章、文学的な文章、実用的な文章と、古典の古文、漢文を対象に、言語活動の過程を重視した問題が出題された。前回調査に引き続き、分野を超えて題材を組み合わせたり、同一分野で論理的な文章と実用的な文章など複数の題材を組み合わせたりする問題もあった。

情報を多面的・多角的に解釈したり、目的や場面などに応じて文章を書いたりする力が求められた。文学的な文章や古典を題材とした問題も重視し、これまでのセンター試験では扱われてこなかった詩からの出題についても、同一の作者のエッセーを題材として提示することで、作者の考え方の背景を押さえながら表現の工夫を読み取る力を見る出題がされた。

大問五つで構成。第4問が古文を、第5問が漢文を主な題材として扱っている。前回調査で問題の分量と試験時間のバランスについて指摘が多かったため、最大五つだった1問当たりのテキストを三つとし、全体で文章量を2000字程度削減した。

第1問は全問記述式。探究リポートを題材にし、文章を読んで考えをまとめる場面を設定。複数の資料を用いて、テキストを的確に読み取る力や、目的などに応じた思考を表現する力を問うた。問3では前回調査の反省を踏まえ、ただし書きとして、第1文目に例示を、第2文目に理由を書かせることとし、要素を整理させて受験生と採点者がイメージを共有しやすいよう工夫された。

第4問は古文とそれに関連する短歌を題材に、複数のテキストの比較を通して、登場人物の心情や言動の意味、表現の工夫を捉え、古文を的確に理解する力を問うた。

記述式問題の採点結果は得点ではなく「総合段階」としてA~Eの5段階で示される。また、参考問題が示された。

前問連動問題の例(「世界史B」第4問A問2)

【地理歴史】 探究活動を重視

「世界史B」「日本史B」では、空間軸・時間軸を広く提示して出題。さまつな知識ではなく、歴史の大観的な理解が求められた。また、教科書などで扱われていない初見の資料でも、得られた情報と授業などで学んだ知識を活用し、思考力・判断力・表現力を発揮できるかを問う問題が含まれた。

「世界史B」

大問五つで構成。ポーランド分割に関する風刺画を活用した第4問A問2では、(1)で選択した解答によって(2)の解答に影響する連動問題が出題された。

第1問Cでは、海外旅行の候補地としてカナダに関心を持った想定で、第一言語の比率に関するグラフから歴史的経緯を問うなど、日常的な場面の中で気付いた課題について考察させる問題も出された。

「日本史B」

大問六つで構成。近現代史に関する第6問では「ポツダム宣言の受諾」「1945年の衆議院議員選挙法改正」のいずれを選んだかによって次の問題の解答に影響する連動問題が出題された。

第1問では「足尾銅山の近代化」について「開発」と「災害」という異なる側面から捉え、複数の資料をさまざまな観点から読み取らせる形式で出題。得られた情報に基づいて、歴史的事象を多面的・多角的に考察させた。

「地理B」

地理に関わる事象の空間的な相互作用を分析して地域性を捉える力や、地域の変容について考え、課題を把握して将来像を構想する探究的な力が求められた。系統地理と比較地誌の両分野からアプローチさせるよう意識して統合した問題も含まれた。

大問5つで構成。地形を題材にした第1問では3Dマップを題材として出題された。

第2問では、立地の変化をテーマとして、仮想の地域・条件を基に1つの地域にのみ見られる特色と、他の地域との共通性とを見出し、変遷が生まれる要因を考察。授業での探究の場面を設定し、現代的な諸課題を意識できるようにした。

課題探求の場面を想定した問題(「倫理」第4問A)

【公民】 現代的な諸課題に着目

公民は、現代社会の課題や人間としての在り方・生き方などについて、先哲の思想を踏まえ、多面的・多角的に考察する過程を重視。文章や多様な資料・データを適切に読み解きながら、身に付けた概念や理論などを活用して考察する。「倫理」と「政治・経済」は前回調査では出題がなく、今回が唯一の出題となる。

「現代社会」

新聞記事の作成を通じて考察する問題や、「持続可能な社会」の実現、「食」を巡る問題など現代的な諸課題の探究を題材とした問題が出された。

「現代社会」は大問六つで構成。昨年度の試行調査で設問数が23問と少なく正答数の分布に影響したと見られることから、31問に増やした。

第3問では、最高裁の判決文を資料として提示。基本的な概念についての理解を問うとともに、選挙に関わる制度や教育費など身近な問題について、さまざまな立場から考察させた。

「倫理」

今後「現代の諸課題と倫理」に関する学習が一層重視されることを踏まえ、思想を歴史的事象としてではなく概念として捉え、先哲の思想や原典資料を手掛かりに考察することを重視。対話的な学びを通じて課題探究的に思考を深めることを意識した問題が出題された。

「倫理」は大問四つで構成。第1問Cでは、宗教や思想の社会的背景について前問と連動して解答する問題や、該当する選択肢を全て選択させる問題が出された。

第4問では、生命倫理や環境倫理などについて探求的に思考し、人生における哲学的概念を踏まえて現代的な諸課題を考察する問題が独立して設定された。

「政治・経済」

政治、経済、国際関係に関する基本的な概念や、理論に関する理解、現代的な諸課題についてさまざまな立場から考察する力を問う問題を重視。多様な資料やデータを基に考察する問題や、「SDGs(持続可能な開発目標)」について考察する問題を出題した。

「政治・経済」は大問四つで構成。分野ごとに独立した問題設定で、授業などでの知識・理解を踏まえながら、探究的な学習を意識して出題された。

第2問では、排出権取引の考え方を理解しているかを問いながら、社会的コストを削減できる政策を判断する問題を出題。第4問では国際経済に関わる現代的な課題について、ある大学のオープンキャンパスで学んだことを既存知識と結び付ける想定で考察させた。

身近な事例を数学的に表現することを問うた記述式問題(「数学Ⅰ・A」第1問〔3〕)

【数学】 数理的に捉え、数学的に表現

日常事象を数理的に捉え、数学的な表現を問う問題や、問題解決に向けて構想を立てることに焦点を当てた問題を取り入れた。

「数学Ⅰ・A」

大問五つで構成。記述式問題では、基本的な概念を記号で表現することや、日常事象を数理的に捉えて数学的に表現すること、問題の解決過程を振り返って端的に記述することを問うた。前回のプレテストで無回答率が高かったことなどを踏まえ、数式のみを記述させたり、短い文章で端的に記述させたりする問題とした。

第1問〔2〕では、コンピューターのグラフ表示ソフトを用いるなど、ICTを活用した学習場面を設定した問題を出題した。同〔3〕では、日常事象を数理的に捉え、数学的な表現を用いて説明する力を問うため、階段の踏面を題材に、事象を三角比を用いて表現する問題を出題した。

第1問〔4〕、第5問では、問題解決に向けて構想を立てることに焦点を当てた問題も取り入れた。第2問〔2〕では、会話文を通じて基本的な概念の本質的な意味や理解が問えるように工夫したり、第3問では、事象に関する直観的な認識と得られた計算結果のずれの意味を考えたりする問題があった。

「数学Ⅰ・A」については、別に記述式を含む参考問題例がある。

「数学Ⅱ・B」

大問五つで構成。数学的な見方・考え方を基に、的確かつ能率的に処理したり、数学の事象の特徴を捉え、数学化し、解決過程を振り返る問題で構成されている。第4問、第5問では、問題解決に向けて構想を立てることに焦点を当てた問題があった。

第3問では、統計を扱った。読書時間に関する調査を基に、標本平均・標本比率の分布や、母平均に対する信頼区間について考える。目的に応じて式を活用し、一定の手順に従って数学的に処理する力や得られた結果を元の事象に戻してその意味を考える力を問うた。

第5問は、空間における図形について、ベクトルを用いてその形状の特徴や変化を考察する。事象の特徴を捉えて数学化する力や解決過程を振り返り、統合的・発展的に考える力を問うた。

力センサーの実験データを使った問題(右)(「物理」第2問B)

【理科】 科学的リテラシーの重視

科学に関する基本的な概念理解に基づく科学的リテラシーが発揮される過程を重視。日常生活や社会と関連した課題を科学的に探究する出題があった。

「物理基礎」

大問三つで構成。第1問問2では、気温変化が管楽器に及ぼす影響など、日常生活を題材にした出題があった。第2問B問3では、投げ上げられた物体に働く重力の理解を確認する問いがあった。

「化学基礎」

大問三つで構成。第1問問3や第3問では、ミネラルウオーターやトイレ用洗浄剤など、日常生活の身近なものを試料にした実験問題があった。第2問問2では、資料を読んだ上で別々の単元で学んだ内容を統合して考察する出題もあった。

「生物基礎」

大問三つで構成。第1問A問1では、葉の断面の模式図などから、事物・現象の基本的概念を踏まえた比較分析を問う出題があった。第1問A問3では、実験の目的を適切に把握し計画を立てる力を見る問いが出た。

「地学基礎」

大問三つで構成。第2問Bでは、土石流の堆積物の断面図スケッチとその観察結果から推論できる内容を問う出題があった。第2問C問5では、江戸時代の記録を基に推定された台風の経路を考察させる問いも出た。

「物理」

大問四つで構成。ICT機器の利活用を含む、観察・実験を重視した問いが出された。

第3問B問3や同問4では、生徒が初めて取り組む実験を題材に、そこで見いだした結果を既習事項と結び付けて総合的に考察する問題が出た。

第2問Bでは、力センサーで実際に計測した実験データを使うという初めての出題もあった。

物理の規則性を見いだすため、現象の単純化や概数で考える力を問う出題もあった。第2問B問3では、正規分布型の曲線で囲まれた図形を三角形とみなして考えられるかを問うた。第4問B問4では、短い区間の加速度を無視し、等速直線運動に単純化して結論を導けるかという出題もあった。

「化学」

大問五つで構成。第2問Bでは、生徒が図書館で調べまとめた資料を題材に、新たに得た知識を既習事項と結び付けて総合的に考察する力を問う出題があった。

第3問Bでは、風邪薬の合成をテーマにした「理科課題研究」の研究経過を取り上げる出題があった。

第1問Aでは、日常生活で使うカセットボンベを題材にした。燃料となる5種類の有機化合物の分子量などを示したデータ表から、それぞれの性質の把握と考察をさせた。

第1問Bでは、反応速度に関する実験データを基にグラフを書き、数値を求める問いが出た。

「生物」

大問五つで構成。第5問Aでは、遺伝子組み換え技術の実験結果から複数の可能性を考察させる問いが出た。

第4問は自然調査官役として、ある地域に生息するリスの個体群の動態や絶滅リスクを考える出題があった。

第2問Aでは、単元「生殖と発生」「生物の進化と系統」の内容を融合させた実験結果を題材にした。資料に現れている事象を分析的、総合的に考察する力を問うた。

「地学」

大問五つで構成。第3問では、ある地域の地質の成り立ちを観察する場面を取り上げた。地層の調べ方や研究記録から、地層の空間的な広がりを推定させる問いを出した。

第4問Bでは、地球の極向きの熱輸送を模式図から考察する出題があった。

岩石に関する学習内容のつながりを示した図から、地球の多様な現象や内部構造に関する理解を整理する問いも出た。

1回のみ流される問題(「リスニング」第4問A)

【外国語(英語)】 実際の言語活動を想定した問題

授業の言語活動や実際のコミュニケーションなど、具体的な目的や場面、状況を設定した問題で構成した。

「筆記(リーディング)」

「読むこと」の力の把握を目的とし、発音やアクセント、語句整序などの問題は出題していない。CEFRのA1~B1までの問題を組み合わせている。

大問六つで構成。第2問B、第5問、第6問Aでは、授業における主な言語活動を念頭に、明確な目的や場面、状況設定を重視。授業でディベートしたり、グループでプレゼンテーションしたりするための準備として記事を読む問題を出題した。

第2問Aでは、インターネット上に掲載された料理レシピやその写真から料理の特徴の読み取りや推測を通じて、易しい英語で書かれた短い説明文の概要や要点を捉える力や、情報を事実と意見に整理する力を問うた。

第6問Aでは、授業でグループプレゼンテーションをするための準備をする場面で、アジアの女性パイロットに関する記事を読み、記事の概要・要点、論理展開を把握する力や要約する力を問うた。

「リスニング」

前回の試行調査を踏まえ、読み上げ回数はそれぞれの問題でCEFRのA1~B1のどのレベルの力を求めるのかを整理した上で、おおむねB1レベルの問題(第4問以降)は1回のみとした。大問六つで構成。

実際のコミュニケーションや言語の使用場面をより一層反映することを重視し、第4問Bの複数の学生寮に関する説明を聞き、自分が考えている条件に最も合う寮を判断する問題や、第6問Bのゲームに関する意見を聞いて、話者の立場を判断する問題などを出題した。

第5問では、技術革新と未来の職業の関わりについての講義を聞きながらメモを取ることを通じて、概要や要点を捉える力や、聞き取った情報と図表から読み取れる情報を組み合わせて判断する力を問うた。