重要課題にどう取り組むか 清水明総合教育政策局長に聞く

文科省の組織再編で10月16日に発足した総合教育政策局の初代局長として、同日付で就任した清水明氏。同局が所管する教育政策の使命と課題に、どう取り組むかを聞いた。


■社会の変化に対応した教育政策の実現
――総合教育政策局への組織再編の狙いは。

学校教育、社会教育を通じた、総合的な教育政策の立案を進めていきたい。総合教育政策局が誕生した趣旨として、「社会が変化していく中で、教育政策もそれに応じて変化しなければならない。教育政策を推進する行政組織もそれに合った形に不断に進化していかなければいけない」ということがある。

「人生100年時代」や「Society5.0」、グローバル化、人口減少など、さまざまな社会課題がある中で未来を切り開いていくには、新しい価値を創造する人材の育成が重要だ。前身の生涯学習政策局でももちろん取り組んできたが、やはり、社会教育関係の政策が多かったこともあり、学校教育と社会教育の縦割りから抜け出せていないという指摘もあった。

今回の再編は初等中等教育局、高等教育局の関係する組織も含めた大規模なもので、新しい名称の通り、総合的な教育政策を立案できる局を目指したい。

組織再編の狙いと課題を説明する清水局長
――総合教育政策局の重要課題は。

まず、教育関係の筆頭局として、今年6月に閣議決定した「第3期教育振興基本計画」を着実に進めていく。特に第3期基本計画の柱として、客観的な根拠を重視し、エビデンスに基づく教育政策を推進することが位置付けられている。

新しく調査企画課を設け、省内の体制を構築するとともに、さまざまな統計調査で得られたデータを分析し、政策に生かすための基盤を整備していくこととしている。同課では、学校基本調査をはじめとする統計調査を引き続き実施するとともに、これまで初中局が実施していた全国学力・学習状況調査を担当することになった。

全国学力・学習状況調査の結果を教育施策の改善・充実に生かすとともに、教育委員会や学校ごとにも教育施策や教育指導の改善・充実に生かしていけるよう、引き続き取り組んでいく。また、来年度の全国学力・学習状況調査は、中学校で英語の調査を予定し、「話すこと」も調査する。

学校のコンピューターなどから録音する初めての方法になるので、円滑に実施するための準備をするのが喫緊の課題だ。

■教育の課題に一体的に取り組む
――教育人材の育成に関しては。

教員をはじめとした教育人材の育成、資質能力の向上がある。これまで高等教育局で大学での教員養成を所管してきたが、教員免許状や採用、研修は初等中等教育局の教職員課が担っていた。これを総合教育政策局に移し、教育人材政策課として一体化した。

教員の養成・採用・研修を一体的にしたのは今回の再編の目玉であり、政策の大きな柱だ。すでに教員の養成・採用・研修の一体的な改革は今までの組織体制でも進めてきた。教育公務員特例法の改正で、大学と教育委員会で構成される協議会や、校長および教員としての資質向上に関する指標を策定する取り組みなどが各地域で始まっている。

また、教育職員免許法などの改正で、大学の教職課程の内容を充実するとともに、教職課程コアカリキュラムを作成した。各大学の教職課程の再課程認定に取り組んでいるが、組織再編で滞ることなく円滑に実施していきたい。

――学校と地域の連携については。

従来の生涯学習政策局からの継続的なテーマでもあるが、学校、家庭、地域の組織的な連携・協働の仕組みを作っていくことが大事だと考えている。

学校教育においても社会に開かれた教育課程が新学習指導要領でもうたわれている。今までの流れの中では、いわゆるコミュニティ・スクール(学校運営協議会)や地域学校協働活動などの形で、学校と地域を支援するさまざまな仕組みを作っている。これらを全国全ての学校区で活性化していきたい。

新しくできた地域学習推進課が、従来の社会教育課の取り組みと家庭教育支援室の取り組み、また、青少年教育、青少年の体験活動などの業務を一体的に所管することになった。地域学習推進課が中心となって、学校、家庭、地域の連携・協働の取り組みを一層推進していきたい。

学校に寄せられるさまざまな期待を、これまでのように学校や教職員だけが担うのではなく、学校、家庭、地域が連携して諸課題に対応する中で、教員の多忙化解消や働き方改革に資するように取り組んでいく必要がある。

■共に生きる社会の実現に向けて
――男女共同参画共生社会学習・安全課の役割は。

生涯学習の柱の一つとして、「共に生きるための学び」を位置付けている。それを担っているのが男女共同参画共生社会学習・安全課だ。例えば、一度仕事を辞めた女性が再就職のための学びがある。

学校の教職員や理工系の研究者では、特に指導的立場になるにつれて、女性の割合が減っている。男女共同参画社会の実現に向けて、女性の学び直しの機会は依然として重要だ。

また、男女に限らず、障害を持った人の生涯学習も課題だ。特別支援学校を卒業した後も、学びを継続していくことが必要になる。さらに近年急増している外国人児童生徒への指導も同課で担っていく。

最近はインターネットやSNSを介して、子供たちが被害にあう事件などが後を絶たない。今年5月に新潟市で7歳の児童が殺害された事件を受けて、学校や保護者、地域、警察などによる通学路の緊急合同点検を実施したが、こうした取り組みは非常に大事だ。

ただ、これも学校だけではなかなかできない。通学路は地域、家庭、警察といった学校を取り巻く関係者・機関と連携しながらやっていく必要がある。各地域では、この課題に地域ぐるみで関係機関を巻き込んで取り組むことをお願いしたい。子供たちが安全に過ごせることも含めて共に生きるための学びと捉え、一体的に取り組んでいきたい。

――読者に向けたメッセージを。

教育は人なりだ。開かれた教育課程においては、地域などとの連携・協働はもちろん大事だが、そうはいっても教員自身が生涯を通じた学びや教員としての仕事を果たしていくことが非常に大切だ。

総合教育政策局では教育人材政策や学校と地域の連携推進などを通じて、地域の中で教員自身の人生も輝き、教育に取り組んでいけるように、政策面から努力していきたい。


【プロフィール】

清水明(しみず・あきら)氏 東大卒。1984年、文部省(現文科省)に入省。横浜国大理事・事務局長、香川大理事・副学長などを経て、18年4月から大臣官房付(文部科学戦略官)。57歳。静岡県出身。趣味はジョギングと将棋。学生時代は陸上部に所属し、84年の東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)第60回大会では東京大学チームとして1区を駆けた。文科省将棋部の会長を務める。