重要課題にどう取り組むか 永山・文科省初中局長に聞く

 文科省初等中等教育局長に10月16日付で、永山賀久氏が就任した。新学習指導要領への移行や、学校の働き方改革など、重要課題への取り組み方針を聞いた。


――新学習指導要領移行への取り組み方針は。

初等中等教育局としては、円滑な実施が最も大きな課題の一つだ。新学習指導要領は予測が困難な時代において、子供たちが自立的に生きる、社会の形成に参画するという、新しい未来社会を切り開くための資質・能力を一層確実に育成する目的がある。

子供たちに求められる資質・能力とは何かを社会と共有し、連携する「社会に開かれた教育課程」を重視していきたい。

思考力、判断力、表現力、それと知識および技能の育成のバランスを重視する現行学習指導要領の枠組みや教育内容をしっかり維持した上で、知識の理解の質をさらに高め、確かな学力の育成を目指すという方向性だ。

個別の課題で言うと、道徳の特別の教科化がもちろんあるし、それから外国語教育、理数教育、プログラミング教育。あるいは、伝統や文化に関する教育や、さらに言うと国語教育。言語能力を育成する中核的な教科である国語科を要として、各教科などで言語活動を充実することが重要だ。

これから円滑な実施に向けての取り組みを着実に実現していくにあたり、教材の改善・充実や、教育実践の収集・共有、あるいは研修に係る指導・助言などに力を入れていきたい。

――学校の働き方改革への取り組み方針は。

教育課程、学習指導要領に勝るとも劣らない重要課題が、学校の働き方改革だと位置付けている。9月末に、2016年度の教員勤務実態調査の確定値を公表した。教諭の1週間当たりの学内総勤務時間は小学校が57時間29分。中学校は63時間20分。これはもはや看過できない。質の高い学校教育、また教育課程の円滑実施に向け、教師の業務負担軽減は喫緊の課題であり、総合的な対策が必要だ。

「教師の業務負担軽減は喫緊の課題」と語る永山局長

単に「勤務を減らしなさい」と言うだけでは駄目。具体的にどんなことをすればいいのか、国としてどうするのか、あるいは自治体・教育委員会として、学校としてどうするのかについて中央教育審議会で審議いただいている。

とにかく活用できるものは全て活用するつもりだ。それぞれのプレーヤーがこの目標に向かって力を結集する形で、進めていきたい。

例えば業務の役割分担や適正化。それから勤務時間管理の徹底。これらは非常に重要なポイントだ。

それから学校の指導・事務体制の強化・充実。勤務時間制度など、中教審の議論も踏まえつつ、もろもろの制度や施策について検討して実行に移していきたい。

――幼児教育の無償化については。

これは政府全体の大きな課題だ。幼児教育は人格形成と、その後の義務教育につながる基礎を培う、非常に重要な教育段階。子供たちに質の高い幼児教育を受ける機会を実質的に保障するのは、極めて重要だ。少子化対策にも貢献すると思う。

閣議決定での方針として、3~5歳までの全ての子供たちの、幼稚園・保育所・認定こども園費用の無償化がうたわれている。この開始時期が来年10月なので、それに向けての準備を着実に進めていく。これも当然、現場の協力が必要なので、関係の方々のご意見を丁寧に伺いながら進めていきたい。

――いじめについては。

17年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の結果を先ごろ公表した。いじめの認知件数がかなり増えているが、そのこと自体は、これまで見過ごされていたかもしれないいじめの認知が進んだととらえ、積極的に評価している。「いじめは絶対許されない」ことを、改めて周知徹底したい。

いじめは、どの学校でも、どの子供にも起こり得る問題であり、子供を「加害者にも、被害者にも、傍観者にもしない」ことが大事だ。

いじめ防止対策推進法に沿って、いろいろな取り組みが着実に進んでいる。道徳の特別な教科化、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置、24時間子供SOSダイヤルをはじめとする相談体制の充実など、確実に進んできていると思っている。

ただ先の調査結果を見ると、やはり懸念事項は多い。重大事態も増えているし、自殺も減っていない。個別の事案が起こったときの対処について、不適切な事例なども出ている。

――高校改革については。

非常に不確実な、変化の激しい社会を生き抜く力が育成されるのが、高等学校段階だと思っている。将来の技術革新や価値創造の源となるような飛躍知を発見する、創造する。それらの成果と社会の課題をつなげて、新たなビジネスを創造したりもする。言葉を換えて言えば、新たな社会をけん引する人材として活躍するための力も、高等学校段階で培われるものだと思う。

また、今年の骨太の方針でも言われているが、地域振興の核としての、高等学校の機能強化も期待されている。

各地域への課題意識や貢献意識を持ちながら、新しい時代、地域を分厚く支えていく人材の育成が、高校に強く期待されている。

こういったことを意識しながら、現状の課題なり改善点を洗い出して、いろいろと議論していきたい。

――最後に、読者へメッセージを。

教育の不易と流行と昔から言われるが、いろいろと変化の多い時代、そういうことを念頭に置きつつ、変えるべきところは変える。前例踏襲でなく、最終的に子供たちのためには何がいいかで、実現に向けて、いろいろな努力を重ねていただきたい。おそらくそれは、全ての先生方が共有する思いでは。

そのためにも風通しのよい職場は必要で、働き方改革の中でも、そういう意識を持ってやっていただければと思う。


【プロフィール】

永山賀久(ながやま・よしひさ)氏 東大卒。1984年、文部省(現文科省)に入省。大臣官房審議官(スポーツ・青少年局担当)、大臣官房文部科学戦略官、放送大学学園理事などを歴任。57歳。宮崎県出身。趣味は月2回ほどの山歩き。時には夫婦そろって。